10月2日 日曜日
朝。ポストを見てみると、例の新聞が入っていた。
ざっと見てみたところでは、よく知る新聞となんら変わりない。一面記事には、でかでかと政界の写真が配置され、それから経済や地域のニュース、書評、コラムなどが並ぶ。テレビ欄や四コマなんかも、他の新聞と同じように掲載されている。
そういえば、例のセールスマンは「どんなメディアよりも早く情報をお届けいたします」なんて言っていた。けど、記事はみんなテレビとかネットとかで見たことのある話題ばかりだった。そもそも、新聞は一日一回しか発行されないんだから、ネットよりも早く情報を届けるなんて、無理な話だろう。
――と、紙面を流し読みしているところで、ある写真が目に留まった。カワウソの赤ちゃん。動物園で生まれたのだろうか。これは、ネットでも見たことないような。
あれ? なにか、おかしいような。
記事には「10月2日の正午」と書かれている。でも、10月2日って今日のことだ。きっと、タイピングのときに間違えたんだ。こんなに簡単なミスが校閲者の目をすり抜けるとは思えないけど、そういうこともあるんだろう。
*
「今日、下池動物園に新たな仲間が誕生しました」
昼の情報番組で紹介されたのは、例の記事とまったく同じ話題だった。新聞で読んだのと同じ事実が読み上げられ、新聞で見たのと同じカワウソが映し出された。
あの記事は、実際のところ、正しかったのだ。
ということは、この新聞には、未来の出来事も書かれているということになるのだろうか。まさか。そんな新聞が存在するわけがない。きっと、なにかの偶然だ。
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