第7話 おてがみ

 じいじのおもちゃばこが、いま、そうたの目のまえにある。じいじがおほしさまになるすこしまえに、じいじがばあばにおねがいをしたらしい。そうちゃんにこれをわたしてほしい……と。

 

 ぼくは、じいじのおもちゃばこのふたをあけた。

 なかには、たくさんのおもちゃがつまっていた。その上に、ひとつのお手がみがおかれていた。


 そうちゃんへ

 

 そうちゃん、いままでたくさんのおもい出をありがとう。

 じいじは、とってもうれしかったよ。

 そうちゃんがつくってくれたつるにのって、じいじはおほしさまのところまでとんでいきますね。

 じいじはおほしさまになって、そうちゃんのことを、ずぅっと見ているからね……

 おもい出の中で、またあそぼうね……

                      じいじより


 おもちゃばこのすみに、じいじがお手がみをかいたえんぴつが、入っていた。

 それは、みじかくて、しんがまるまったえんぴつ。はしっこには、けずられてかかれた『しげる』という名まえ。

 ぼくは、そのえんぴつとお手がみを、そっとおもちゃばこにしまった。

 

 そうか……。じいじのおもちゃばこは、わすれられないものがいっぱいつまったはこだったんだ。

 けっしてなくならないもの……それがおもい出なんだ。

 じいじ、ぼくは大きくなっても、かならずじいじをおもい出すからね。

 また……ぜったいにあそぼうね。やくそくだよ……。


 おかあさんもばあばも、そしてぼくも、なみだがとまらなかった。

 でもそのなみだは、どこかあたたかかった。

 


おわり

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◼️本作品はフィクションであり、実在の人物等とは一切関係ありません。  また、本作品の著作権は、作者にあります。

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じいじのおもちゃばこ 枯枝 葉 @kareeda-you

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