第5話 かんぽっくり

「あっ、じいじ! どこにいってたんだよぅ。じいじんちにきても、じいじがいなかったから、ずっとさびしかったんだよ……」

「おう、そうか、そうか。それは、わるかったな。ながいこといなくて、ごめんよ……きゅうなようじが出きてしまったもんだから……ごめんよ。きょうは、そのおわびに……」

「えっ、なに、なに……」

 じいじは、うしろのふすまをあけて、おもちゃばこを出した。ふたをあけて、とり出したのは、かんづめのかんが二つとつよそうなひもがニ本だった。

「じいじ、それは、なぁに? 」

「まぁ、見ててごらん……」

 そういうとじいじは、かんのそこにあけているあなへひもをとおして、かんのうちがわでたまむすびをした。

「このままだと、かんにしっぽがついたみたいだろ? じつはな、このかんには、もう一つ、あながあいているんだよ……」

 そういうとじいじは、ひもをはんたいがわのあなにとおして、さっきとおなじように、うちがわでたまむすびをした。

「どうだ、そうちゃん。こうしてひものまんなかをもつと、かんをぶらぶらできるだろう」

「かんせいしたの? 」

「いやいや、まだはんぶんだよ……」

 じいじは、もう一つのかんにも、おなじようにひもをつけた。そのあと、それぞれをぶらさげてみて、ながさがおなじになるようにちょうせいした。


「そうちゃん、できたぞ! 」

「……じいじ、これ、なぁに? 」

「これはな、かんぽっくり、というんじゃ」

「ひもをな、このようにもって、かんのここに足をのせて、ひもをひっぱりながら、あるくんじゃ。カッポ、カッポ、ってたのしい音がするよ。じいじには、もうできないけど、そうちゃんはできるよ。やってごらん……」


……


「じいじ、これ、おもしろい!……」

「はっはっはっ……。それは、よかったな。じいじの子どものころにはな、あそびどうぐは、よくじぶんたちでつくったんじゃ。じぶんでつくったものは、くろうしたぶん、大せつにしたくなるものよ……」


「あっ、おかあさん……これ、みて! すごいでしょ! とってもたのしいんだよ。カッポ、カッポ、って音がするよ」

「そうちゃん、もう、じょうずにのれるようになったんだね……」

「うん! じいじ先生のおしえかたが、上手だからだよぅ」

「ほう、そうちゃんも、おせじが上手になったねぇ……」

 そういいながら、ばあばがわらうと、じいじもわらった。つられてぼくも、わらった。だけど、おかあさんだけは、わらっていなかった。どこか、さびしそうなかおをしていた……。

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