じいじのおもちゃばこ

枯枝 葉

第1話 ぼくとじいじ

 ぼくの名まえは、なるみそうた。小学一年生だ。ぼくは、学校のかえりに、よくじいじのいえによる。ぼくのじいじは、八十さいだ。ぼくは、じいじのことが大すきだ。

 じいじのおうちへいくと、じいじはいつもぼくをだっこしてくれる。ひげをほっぺにじょりじょりするんだ。ぼくが、

「くすぐったいよう」

というと、はっはっはっとわらって、

「まいったか? 」

ときくから、

「うん。まいったよ」

というと、

「よし。じゃあ、ゆるしてやろう」

と、いばっていう。

 そのようすをみているおかあさんは、いつもじいじとあそんでくれてありがとうね、というけれど、ぼくにはよくいみがわからない。


 じょりじょりがおわると、ぼくはじいじにおねだりをする。

「じいじのおもちゃばこを、見せて……」

 するとじいじは、とってもにこにこしながら、じいじがすわっているうしろのふすまをあける。そこからじいじは、ふるい木のはこをとり出すのだ。このはこは、じいじが子どものころに、じいじのおとうさんがつくってくれたものらしい。

 そのじいじのおもちゃばこの中には、じいじの大せつなおもい出が、い――っぱい、つまっているらしい。でも、ぼくにはおもい出のいみが、まだよくわからない。そういうと、じいじはいつもぼくにいう。

 だいじょうぶだよ。そうちゃんにも、たくさんのおもい出ができるよ。しんぱいしなくていいからね……、と。


 おもい出って、なんなんだろう……

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る