写真の中には君がいる

kno

第1話 僕の景色



カシャッ

カシャッ_____



「...うん。いい感じ」



大学を卒業して、福祉関係を勉強していた僕が就職した先は


___写真だ。




綺麗な景色、暖かな街並み、風情ある商店街、

大あくびしてる野良猫



撮るもの全てがありきたりな風景。


評価なんてない。


稼げているわけでもない。





それでもこの景色を収めずにはいられない。




だって___幼なじみの彼女が喜ぶから。







「壱岐!今日はどんな写真を撮ったの?」

「堤防の夕焼けが綺麗でさ。見てみて、奥にほんのり星の夜がある」

「ほんとだぁ!綺麗......」

「そっちは?」

「これ!窓辺にね綺麗な蝶が2匹が来たの!」

「いいね。綺麗に撮れてる。」

「でしょでしょ?」



ふふんと誇らしげな顔をする。



「明日は君がリクエストのやつ撮ろうよ。何がいい?」

「いいの!?うーん...じゃあ、動物!」

「わかった。じゃあまた明日ね」




動物園に行こうか、

それともいつものように公園を散歩して、出会ったものを撮ろうか。





カシャッ______

カシャッ




「うまく撮れた?」

「うん!ばっちり。」

「あ、犬?」

「そうそう!盲導犬だって」

「いいね。可愛いなぁ」

「でしょぉ!...そっちはどうだった?」

「自然公園にいた野良猫の親子」

「かぁわいいぃ...」





とろんとした目で写真を眺める彼女。





「次はどうする?」

「うーん...街」

「街?」

「うん。街を撮ってきて欲しい」

「地元の方?」

「......いや、昔2人で遠出した時の街がいい。」

「...わかった」






カシャッ______





「ほら、撮ってきたよ。

......ここ覚えてるか?2人がお世話になった商店。あそこのおばちゃんももうだいぶ年取ってたよ。」


「......ほんとだぁ」


「ばあちゃんさ、最初は全然気づいてなかったけど、途中で俺に気づいてくれたんだ。

覚えていてくれたんだ。」


「...うれしぃ」





「次はどこにする?」


「......いっぱい」


「.........。」






「私たちが見たとこも......


私が行きたいって言った...とこ



行こうっていったとこ......全部___たくさん」





「...うん


全部集めてくるよ



ちゃんと待ってろよな」






「___うん


待ってる......ね」





君の好きな景色も、街も、動物も





全部集めてくるから



何年かかっても






これから僕が撮っていく景色の中に映るはずだった君の背景は最後にずっと白の壁ばかり






急に早足をするから



ゆっくりな僕は追いつけなくなったけど







気長に待っててくれるなら



撮った写真を手土産に______


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写真の中には君がいる kno @hon23

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