燃ゆる君たちへ花束を

@Ammy53337300

プロローグ

 熱い、熱い、熱い。轟々と校舎が燃えている。警報が鳴り響いて、耳が痛い。燃えた天井が落ちて逃げ場を失う。煙で目が痛い。咳が止まらなくて、息をするのも苦しい。パリンと窓が割れる音がした。ここから外に出られるかもしれない。そう思った何人かが、ガラスに触るけれども、熱すぎて逃げられない。破片が手に刺さって、血も止まらない。

 大丈夫、大丈夫だよ。みんなで助かろう。

 私が先頭に立ってみんなを勇気づけていたのに。炎が広がるごとに、そんな言葉を飲み込んでしまう。こわい、こわいよ。なんでこんなことになってしまったの。なんで逃げられないの。なんで誰も助けに来ないの。

 私たち、ここで死んじゃうの?


 寒い冬の日。卒業式ももうすぐだねって話をしていた。原因もなにもわからないまま、私たち五十八人は燃やされた。燃やされて死んじゃった。卒業したら、大学に行くんだ。お仕事が始まるんだって。みんな、楽しみにしていた日常が命共々燃やされてしまった。

 校舎に残った骨を見て、両親はどう思ったのだろう。ごめんね、親不孝な娘で。ごめんね、私が恨みを買っちゃったばかりに。

「その正義感はいずれ、仇になるよ」

 何度もそう教えられてきたのに、ちゃんとわかっていなかった。言う通りだったね。私のいらない正義感のせいで、五十八人も死んじゃった。

 許せないことばっかりで、つい頭に血が上っちゃったんだ。

 でも、私は、間違っていないよね。だって、法律とか、道徳とか、マナーとかを守らない人が悪いんだもん。

 私は、悪くない。

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