第18話飲み会
翌日、次に日は土曜日と言うことで仕事もやることが多く、ミスがないようにするだけでも午前中が潰れた。
翌日は土曜日。週明けの準備で午前中はあっという間に過ぎた。
昼休憩に入ると、佐久間に呼び出された。
共有ペースでコンビニで買って来た、パスタとおにぎりを出して椅子に座った。
「で、何の用?」
「今日行く店について聞きたくて」
「適当な居酒屋で良いだろ」
「そんな訳にはいかないだろ」
「なんで?」
「だって、相手はネクサスリンクで働いてるんでしょ?」
「なんで知ってんの?」
「前に聞いたじゃん」
「そうだっけ?」
「うん、佐伯さんと一緒に此処で」
「えー、覚えて無いな」
「まあいいや、そんな大手の人なら適当に店決めるわけにはいかないだろ」
「そんなこと気にする人じゃないよ」
「本人と橘はそう思うだろうけどさ、幹事任されてる俺からしたらそう言うわけにはいかないよ」
佐伯から幹事は佐久間に任せると言っていたし、普段からこう言う会は佐久間が幹事をするのが多いので、もう店は決めてるものだと思った。
「でも早く決めないと、予約も大変じゃないのか?」
「だからこうし呼んだんじゃん」
「居酒屋なら新宿とかでも良いんじゃない?」
「家から遠くないかな?」
「自由が丘だしそんなことないと思うよ」
「橘のことじゃなくて、彼女さんのことだよ」
「彼女も自由が丘だよ」
「あ、そうなの、じゃあいっか」
「うん」
「なに二人で話してるの?」
佐伯が他の女性社員とランチ終わりで話に入って来た。
「今日のお店の話」
「そう、場所は?」
「新宿って感じです」
佐久間は佐伯には敬語なんだなと思いながら話を続ける。
「それならいい店知ってるよ」
「何処?」
「此処」
そう言って、スマホを見せてきたのは…
「雰囲気は普通の居酒屋だけど」
「うん、料理は美味いしそれでいって何と言っても安い!!」
「なら、早めに予約取らないとじゃない?」
「確かに、電話してくる」
「はーい」
そう言って電話をしに佐久間が出て行った。
「そう言えば、佐伯」
「なに?」
「佐久間とはどうやって付き合ったの?」
「クリスマスの時に一緒に飲みに行ったの、それでバレンタインの前に告白された」
なんか説明が淡泊だなと思いつつなんで、佐伯を振り向かせることができたのかが気になった。
「なんで付き合ったの?」
「そう言う話は夜に色々しよう」
「確かに」
「おーい、店取れたよ」
「まじか、じゃあ決まりだな」
「うん、重荷もとれたし午後に頑張れそうだよ」
「そうだな、じゃあ飯食って仕事戻るか」
そうして、仕事に戻って夕方になって仕事も終わりが見えてきた時に。
「橘」
「はい」
先輩から声をかけられた、仕事の追加かと思い終わるかなと思っていたら…
「今日はこの辺で帰っていいよ」
「え?」
「飲みに行くんだろ」
「それはそうですけど、でもまだ仕事残ってますし」
「まあ良いから、いつも助けられてるし今日くらいはさ」
「じゃあお言葉に甘えて」
「うん、行ってこい」
「はい」
そうして部署から出ると、共同スペースに佐久間と佐伯が座っていた。
「二人ともなにしてんの?」
「橘を待ってたんだよ」
「仕事終わったのか?」
「いやいや、終わってないけどお前と飲みに行くって話したら今日くらいはって」
「俺を都合良く使ってないか?」
「そんなことないよ」
「じゃあ佐伯は?」
「私は残業がなければいつもこの時間には家に帰れる」
「そっか」
「うん、橘を都合よく使ったのは佐久間君だけよ」
「やっぱり」
「ごめんって、ほら早く行こうぜ」
「はいはい」
そうして、柚葉さんに連絡を入れて新宿に向かった。
電車で十分くらいで、柚葉さんはもう少しで会社を出ると連絡があったしお店の予約の時間もあるので、先にお店に入ることにした。
「いらっしゃいませ」
「予約してた佐久間です。後で一人来ます」
「かしこまりました、ではお席にご案内します」
「はい」
そうして、個室の席に通された。
「個室なんだね」
「良いでしょ、こういうお店も」
「うん、居酒屋なら良いんじゃない」
「そうだね」
「じゃあ適当につまみでも頼んどく?」
「そうだね」
ビールは柚葉さんが来るまで待とうと言うことになり、つまみを頼んで会社のたわいもない話をしてた。
そして数十分後。
「お待たせしました」
「おお、貴方が柚葉さん?」
「はい、すいませんお待たせして」
「いえいえ、さあビール頼みましょう」
そうして、ビールも頼んでから時間も経たずに直ぐに来た。
「じゃあ、乾杯」
グラスを合わせて乾杯をした。
「じゃあ先ずは橘と彼女さんの馴れ初めから聞こうか」
そうして、質問攻めが始まった。
俺達の話をして、それだけでも十五分も話して質問されてもうそれだけで疲れた。
「それってもう運命じゃん」
「まあ、そこまでじゃないかな」
「そこまでだよ、背景聞くと運命感が半端ない」
「そうかな?」
「そうだよ」
「だって高校の時のこと考えると分かれても出会うべくして出会ったって感じじゃん」
「まあそう考えればね」
「うん、最初橘から聞いた時は何か裏があるんじゃないかとか思ってたけど素直に応援したくなるカップルね」
振り返れば佐伯は、最初は美人局ではないにしろ結構酷いことを言っていたから心配されてたんだなと思った。
「出会ったのは偶然なんだよな」
「そうですね、私も驚きました」
佐伯が箸を置きながら言った。
「そっかそっか、そう言えば喜多川さんってネクサスリンクに努めてるんですよね?」
「はい」
「やっぱり大手に入るのって難しいんですか?」
「そうですね、試験とか色々ありましたし」
「そうなんですね、でも大学とかも苦労されたんでしょう?」
「まあ勉強は出来た方ですし、あまり問題はなかったですよ」
「佐久間君みたいに苦労してないのよ」
「それはあんまりにも酷いんじゃ」
「まあまあ、でも父がそこに努めていましてそれでネクサスしか就職は認めないと言われてたので、大学受験よりも就職の方が苦労しました」
「親子揃って大手ですか」
「はい」
「でもそうなれば会社でも立場が苦しいとかそう言うのは?」
「話してなかったです、最初に話したのも仲が良い同期だったし皆さんに伝わるようになったのは一年くらい経ってからでした」
「そうなんですね、まあ本人にしか分からない苦労もあるのでしょう」
「それでお二人は?」
柚葉さんも無理してないか心配だったが、馴染めていると感じたので安心したいた。
「はい?」
「お付き合いしていると聞いたので」
「私達?」
「はい」
「まあ佐久間君からアタックがあってね」
「なんか恥ずかしいな」
「お前は色々質問したんだから、今度はこっちの番だぞ」
「え~」
そうして談笑しながら飲み会は続いた。
どうやら佐伯と佐久間は、俺が佐久間にクリスマスは佐伯は空いてるぞと言ったことで思い切って誘ってそれから飲みに行くことが増えてそれで、バレンタインのちょっと前に告白したらOKと言われたらしい、まあ佐伯によれば同い年なのに子供っぽくなんでも楽しめる所に惹かれたらしい。
そうして一時間くらい飲み明かして、店を出た。
そして店を出た時に佐伯が一言言った。
「そう言えば柚葉さん」
「はい?」
「バレンタインは気お付けた方が良いですよ」
「それは分かってます」
二人の会話で俺と佐久間の背筋が凍ったのは間違いないだろう。
そして電車に揺られて三十分あたりで自由が丘に着き、家まで歩いた。
「ほれ」
「ん?」
「私の右手空いてますよ~」
「何ですかその、芸人みたいな台詞」
「良いじゃん」
「まあ良いですけど」
手を繋いだ。
夜風が少し冷たくて、それがむしろ心地よかった。
この先も、こんな日常が続けばいい。
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