第11話説得
『もしもし?』
『あ、お兄?』
『うん』
あれから、柚葉さんとも仲を取り持ち相変わらずお互いの部屋を行き来しながら、晩酌をしたりしていた。
でも今日は美咲から電話をしたいと連絡が来たので、自分の部屋でシャワーを浴びた後に夜電話をすることになった。
美咲とは帰省以来少し、何となく気まずかったので俺から会話を始めた。
『美咲は明日は休みか?』
『うん、明日は日曜日だしね。お兄は?』
『明日は予定がある』
『もしかしてデート?』
『まあ』
『まだあの人と付き合ってるんだ』
『美咲が言う程悪い人じゃないぞ』
『お兄は騙されてるんだよ』
『そっか』
まあ、柚葉さんに騙されるならまあ良いかと思ったがそれをまた口にすると喧嘩になりそうだったので言わないようにした。
『なんでそんなに敵対するんだよ』
『だって、あの人お兄が記憶無くしたって分かったら直ぐに何処かほっといたんだよ』
『でも、それは過去の話だろ?』
『そうだけどさ』
『まあ、過去のことだしそれに正直にその時のことも聞いたから吹っ切れてるよ』
『それならいいけど、もし何かあれば捨てなよ』
『物騒なこと言うな』
『はいはい』
『それはそうと、美咲も明日はデートじゃないのか?』
『なんで分かったの?』
『まあ、なんとなく』
『なんか嫌だな』
『良いじゃん、俺は実家で色々聞かれたんだから今度は美咲の番だろ?』
『私が話すの?』
『うん』
『えー』
『良いから早く』
『彼とは文化祭を一緒に周ってそれで仲良くなったの』
『ほえー』
『電話越しでニヤニヤしてるの分かってるから』
『ばれたか』
『当たり前でしょ、もう』
『それで、クリスマスとかも一緒に?』
『うん、でもまだ彼の家に泊まりに行くのを許可してくれないの』
『それは父さんか?』
『うん、母さんは良いって言ってくれたんだけど』
『それなら、母さんには泊まりに行くって言って父さんには友達の家に泊まりに行くって言えば良いんじゃない?』
『それ良いね』
『だろ?』
『うん、じゃあ明日泊まろうかな?』
『それまた急だな』
『行動あるのみだし、お兄みたいに高校時代を灰色でいたくないから』
『そんなこと言うなよ』
『いいじゃん』
『そう言うこと言うなら父さんの説得に協力しないぞ~』
『それとこれとは話が違うじゃん』
『違くないな』
『ごめんって』
『まあ良いけどさ、父さんにはちゃんと言うから今度会わせろよ』
『はいはい』
『じゃあもう良いか?』
『あ、最後に良い?』
『なに?』
『クリスマスとかさ、青の洞窟とかにしてないよね?』
『そうだけど』
『あれって社会人が行くとこ?』
『悪い?』
『まあ楽しめたのなら良いけど、デートに金を使わないでいれるのは学生のうちだけだよ』
『じゃあ何処に行けば良いんだ?』
『池袋の水族館のチケットがあるから一緒に行って来れば?』
『そんなのあるのか?』
『うん、前に行った時に割引券貰ったから送っとくね』
ラインに割引券が送られてきた。
『おー、今はそんなことが出来るのか』
『うん、じゃあ今度お父さんに説得頼んだよ』
『分かった』
そうして電話を切った。
「はー、全くあの父さんを説得するとなると骨が折れるな」
そう言うと柚葉さんからラインが入った。
《電話終わった?》
《はい》
《じゃあそっちに行くね》
《分かりました》
それから程なくして柚葉さんが来た。
「お邪魔するよ~」
「は~い、どうぞこれ」
「おお、気が利くね」
俺は缶ビールを二缶出した。
「それで、なにかあったんですか?」
「なかったら来たら駄目なの?」
「良いですけど」
「まあ明日どこ行くって話」
「それなら妹から池袋の水族館の割引券貰ったので、行きますか?」
「うん、良いよ」
「水族館なんて久しぶりだな」
「僕も子供頃行ったきりです」
「私も親に連れて行ってもらったな」
「そうなんですね」
「うん、あ」
「なんですか?」
「高校の時に付き合ってた時に行ったことあるよ」
「そうなんですか?」
「うん、写真あるから見る?」
「見たいです」
「ちょっと待ってね」
「はい」
それから写真を出す為にスマホを付けた時にふと見てしまった。
「待ち受け、俺との写真にしてくれたんですね」
「うん、ずっと高校の時のツーショットだったんだけど輝にあった時に過去を伝えるまで変えてたんだ」
「そうなんだ、気付かなかったです」
「って言うか、輝は違うの?」
「えっと、その」
言い訳を考える暇もなく、追撃された。
「酷いなー、彼女なのに」
「それなら、柚葉さんの今の待ち受け写真ください」
「え?」
「僕もそれにします」
「分かった」
それから柚葉さんに写真を送ってもらい、直ぐに待ち受けにしてしれから柚葉さんが持ってる高校の時に写真を見せてもらった。
それは甘酸っぱく楽しそうな写真でなんだか懐かしくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます