第24話 明未と蘭、遂に脱獄!2(桂の視点)
2028/11/3(金、祝)PM5:15
「先ずBerryenの皆にやって欲しい事は、車の免許を取る事。それから正社員としてキチンと会社勤めする事、そして自動車学校代と中古車代をご両親に返す事。お母さんの家事を手伝う事。そしてそれらに支障をきたさない範囲で楽器練習と作詞、作曲、編曲もやっとく事」
と、妙に普通の事を言い出すあびるに驚き、蒼絵が。
「待て姉貴!、普通は『もっと練習しろ』とか『もっと良い曲作れ』とかだろ?」
「蒼絵お姉様の言う通りですわ!、折角フォビさんと繋がれるのに…。」
「ましてSNS全盛のこのご時世なら『あのSNSをこう駆使してバズらせる』とか『人気インフルエンサーに好かれる』とかあるではないか?」
ざくろがそうと言うとあびるが。
「Berryenを売り出す際に『音楽に全ての時間を費やして努力したバンドです』よりも『正社員として働きながら音楽活動も頑張って来たバンドです』と紹介された方が世間の心象も良くね?。それに実際に売れる迄は全国行脚の際、自分達で車運転しなきゃいけなくなるから免許と車は必須だよ~」
とあびるが説明し出した。俺もそう思う中、あびるが更に続ける。
「後さっき蒼っちとざくっちが言った方法を一通り試して全部失敗した、ある意味最高のお手本がここに居るじゃん。ね、ずらっち?」
「…ああ。それにどんなに才能があって努力しても、運を掴めず終わってしまう人は星の数程居るし、俺も今迄はそうだった。」
「それはラッズだからであって、アタシらもそうなるとは限らねえだろ?」
「蒼絵お姉様の言う通りですわ!」
と初が同調するとあびるが。
「そうやって皆も、ずらっちと同じ轍を踏むの?。瑠実っち」
「嫌やん!、こいつと同じ轍を踏む程、ウチらアホやないわ!」
「瑠実お姉様の言う通りですわ!」
と初が同調して来た。まあ、いきなり婚約を破棄した俺だから『こいつ』呼ばわりされても仕方あるまい…。数秒間の沈黙の後、瑠実がこう切り出す。
「解った、今はあびるの言う通りにするわ。但し、高校卒業から1年間だけやぞ。オトンがもうすぐ無職になる以上、あまり家族に心配掛けられへん」と言うとあびるが。
「丁度良いんじゃね?、仕事と両立出来るか確かめる期間としては。東京に行ったら基本、何でも1人でやんなきゃいけなくなるし。いくら正社員とはいえ、親にお世話になってる状態で、働きながら両立出来ないのに上京するなんてじ●つ行為っしょ?。そういう訳だからお父さん、お母さん。あーし、ずらっちと結婚するから!」
とあびるがアビーさんに聞くと。
「桂君、嫌なら断っても良いんだぞ?」
「あびるお姉様、早まらないで下さい!」
「確かに桂さんって頼りなさそうだけど、それでもウチの両親なんかより遥かに良いっす!」
「わたしの両親よりもだよ!。それにわたし、あびるお姉ちゃんの手料理なら毎日食べたい、晃子の不味い料理なんかもう食べたくないよ!、桃缶の汁入りカレーとか…。」
「俺も高校の頃、バスケ部の合宿で晃子の桃缶の汁入りカレー食わされたなあ…。あれを美味しそうに食べてたのは国太と安藤だけだったな~…。解ったよ」
と俺は意を決して、こう切り出す。
「アビーさん、蒼乃さん。あびるさんと結婚させて下さい、お願いします!」と言うとアビーさんが諦めたような表情で「…解った。その代わりあびるの事を幸せにしてやってくれ」と言うと初が「嫌~!」とム●クの叫びのような構図になってる横で、瑠実が俯きながら不服そうな顔をしていた。
「何かごめんね桂君、あびるの思い付きに巻き込んでしまって。それとあびる、事情はどうあれ、瑠実ちゃんの婚約者を奪ったんだから先ず、瑠実ちゃんに謝りなさい、桂君も」と蒼乃さんが厳しくそう告げた。一呼吸置いて、俺とあびるは同時に。
「ごめんなさい!」
と言いながら頭を深々と下げて謝った、それを見た瑠実が。
「ホンマに反省しとるか?、なら今から家に来て貰うで。そこでウチの家族にぎょうさん怒られて貰うで!」
「ああ、どんな制裁も受けるつもりだ」
「あーしもだよ、抑も言い出しっぺだし。そういう訳だから、ちょっと桑島家に行って来るから…。」
「行って来なさい。明未ちゃんと蘭ちゃんの被害届は私とお父さんが出しといてあげるから…。」
と蒼乃さんが言ってくれたので、安心して俺とあびる、瑠実の3人で桑島家に向かった…。
重苦しい雰囲気の中、あびるがフォビさんに今回の事案と、それに便乗する作戦をお伝えし、電話を切って「『今回の件を社長にお伝え致しますので、それ迄お待ち下さい』だって」と伝えてくれた。そこから沈黙の中、桑島家に到着した。
先ず瑠実が家族に事情を説明し、俺とあびるがすぐさま謝罪すると、お父さんが『よくもうちの娘を傷物にしてくれたな!、娘より夢を選ぶんかお前は?』と先ず俺に怒鳴りながら殴って来た、父親として当然の反応だろう…。
それを見てた瑠菜さんは『32歳の良い大人が、18歳の女の子をたぶらかすなんて最低やん』と俺に冷ややかな視線を送っていた…。
続いてお母さんも、あびるの事を『この魔性の女!、瑠実はあんたの事いつも褒めてたのに!』と罵りながら引っぱたこうとしたその時。
「待ってオカン!、ウチがやるわ」と言って瑠実があびるを思いっきり引っぱたいた。「パチン!」と言う音が茶の間に響き渡って沈黙が流れる中、瑠実がこう切り出す。
「ホンマに…、絶対成功させるんやぞ!。そして、Berryenもデビューさせろや!」と泣きながら想いを吐露すると、あびるが一呼吸置いて。
「任せてよ!、その為でもあるんだから、ずらっちと結婚するのは!」
「俺も、必ず成功させてみせる!」
そう宣言すると瑠実は。
「それを聞いて安心したわ。さあ、もう帰りーや。ウチの気はもう済んださかい…。」と言うと、最後に俺は「本当に、申し訳ありませんでした!」と深々と頭を下げ、あびるも続いて「申し訳ありませんでした!」と同じく深々と頭を下げて、ご家族の冷たい視線の中、俺達は桑島家を後にした…。
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