第15話 瑠実、音楽を辞める?2(桂の視点)
2028/10/28(土)AM11:00
あびるが俺に励ましの言葉を求めて来た事により、俺の中に眠る父性にスイッチが入った。数秒間、俺は間を置いてこう切り出す。
「…なあ瑠実。お前がもしプロを目指すのを完全に諦めるって言うんなら、俺と結婚しないか?」
瑠実が「け、結婚!?」と正に、青天の霹靂を受けたかのような表情だった。俺は更に続ける。
「正直、俺も音楽でプロ目指すのが、段々しんどくなって来たんだ。それに幸か不幸か?、丁度今月から正社員になった。そうなると、今よりもっと音楽活動との両立が厳しくなる。けど一緒に歩んでくれるパートナーが居てくれたら、このどっちつかずの状態にもピリオドを打てて、今の会社に骨を埋める決意も固められる気がするんだ…。」
瑠実が顔を赤らめながら俯き、他の皆も言葉を失う中、俺は一呼吸置いて、こう切り出す。
「俺にお前と、お前の家族を守らせてくれ!」と俺が渾身の想いを瑠実に伝えると、泣きそうになりながらこう聞き返す。
「ホンマにウチでええんか?」
「お前が良いんだ。あのブラック企業でこき使われる俺の傍に、ずっと寄り添って欲しいんだ!」
「有り難うな桂兄。ウチ、ホンマに嬉しいわ…。」
と言いながら瑠実は涙を流し出した、そして俺はこう切り出す。
「そう言う訳だから、Berryenと明未、そして智枝ちゃんに協力出来るのは、今度の学芸会迄だ。勿論それに伴い、めいみんバンドも解散する。本当に済まない!」と言いながら頭を下げつつ、更に続ける。
「早速だけどこれから、瑠実のご家族に挨拶しに行っても良いか?。これは俺達だけの問題じゃないから、もしかしたらご両親から反対されるかも知れないし…。」俺が気まずそうに言うと。
「大丈夫やて、皆家きっと賛成してくれるわ!」と瑠実が涙を拭きながらそう返すとすぐさま、残念そうな顔をしている皆(特に明未)に申し訳ないと想いつつ、俺と瑠実はあびるの部屋を後にした。
桑島家に到着後、俺は出迎えて下さったご両親と姉の瑠菜さんに手土産の菓子折りを渡しつつ、瑠実との馴れ初めと、結婚に至る迄の経緯を説明しつつ、今回の件をご報告をした。
「という訳です。瑠実さんを必ず幸せにしますので、結婚させて下さい、お願いします!」と言うとすぐさま瑠実も。
「ウチからもお願いや!、桂兄はホンマにええ人やねん。ちょっと歳離れとるけど、桂兄となら幸せな家庭を築いて行けそうな気がするねん!。それに今日、ある大男に殴られそうになった女の子を、体を張って庇う所を見て『この人なら、ウチを本気で守ってくれる』と確信したわ。せやからウチを、桂兄と結婚させて下さい、お願いします!」と言った後、数秒間の沈黙の中、お母さんがこう切り出す。
「事情は解ったわ。瑠実、あんたホンマにバンドでの成功を諦めてでも、桂君と結婚するんやな?」との問いに瑠実は「勿論や、女に二言はあれへん!」と返すと瑠菜さんもすかさず「ホンマに大丈夫か?、瑠実は可愛くてスタイルええから、これから色んな男から誘惑されるで。ましてまだ18歳と若いから尚更心配や…。」と言うとお父さんがこう切り出す。
「桂君。ウチらはこれでも、瑠実に精一杯愛情を注いで育てて来たつもりやねん。もし瑠実を悲しませる事があったらタダじゃ済まさんからな!」と厳しくそう言った、まあ当然だよな…。俺は桑島家で昼食をご馳走になり、こう切り出す。
「今から僕の両親にも報告しに行きますので、もう少しだけ娘さんをお借りしても良ろしいでしょうか?」と言ってご家族から了承を得て、桑島家を後にした…。
「良かった、瑠実のご両親が理解ある方で…。」
「ちゃんと話せば理解してくれる親やから安心せえ。それより今度は桂兄のご両親に報告するんやろ?」
「ああ。きっと大喜びするぞ、特に母さんが。こんな若い美少女と結婚出来る事を、そして正社員になる決意を固めた事を…。」と話してる内に俺ん家に到着した。
午後1時頃。家に到着した俺は、鍵を開けて「ただいまー」と言うも、両親の気配が無い。台所に行くと、書き置きがあり、母さんの文字でこう書かれていた。
「桂へ。今日あたし達は、午後から町内会の催しで帰って来るのは午後4時頃になります。いつまでも音楽やってないでいい加減、今の会社の正社員として生きて行く決意を固める事!。それと早く孫の顔を見せなさいよ、良いわね!。母より」
「その報告をする為に急いで帰って来たって言うのに…。」
「何か拍子抜けしたわ…。桂兄のお母さん、気難しい人だって聞いてたから…。これからどないする?」
と言う瑠実に、一呼吸置いてこう切り出す。
「取り敢えず、俺の部屋に来てみるか?」との問いに、「是非入ってみたいわ!」と返した。俺は飲み物とお菓子を運びながら、俺の部屋に瑠実を案内し、招き入れた。
「ここで桂兄は普段、曲作ってるんやな~」
「と言っても、もうすぐ曲作らなくなるんだけどな。ハハハ、痛てて!」と背中が痛み出した。
「大丈夫か桂兄!」と瑠実が言うと、俯きながら続ける。
「ホンマに酷い事するな~、あの2人。痛かったやろ?」と優しく背中をさすりながらそう言う瑠実に、俺は「そりゃまあ、あの国太君のパンチだからなあ。一緒に殴って来た智枝ちゃんのパンチが全然痛く感じなかったよ、ハハハ」と言うと、瑠実が抱きしめながら。
「あまり無理せんといて!、もう桂兄だけの身体やないんやで…。それに明未姉を必死に守っとる姿、ホンマにカッコ良かったで…。」と涙目で言いながらキスをして来た、そして…。
俺の部屋に入って約30分後。
「ごめんな瑠実、痛かったろ?」と俺が申し訳なさそうにこう切り出すと「うん…。でもまあ、桂兄が受けたパンチの嵐よりは痛くないわ…。」と瑠実に言われ、そのまま頭を優しく撫でて抱き合った…。
それから約1時間後、俺の両親が帰って来て、今回の経緯を話すと父さんは安心し、母さんは大喜びした。俺は瑠実を自宅に送り届けた。音楽家としての夢は叶いそうに無いが、こういう生き方だって充分幸せだろう、他の皆、特に明未には本当に気の毒だけど…。
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