第10話 夢がある♡夢ガールランド2(明未の視点)

2028/10/9(月、祝)AM10:00


 わたし達は八重山ベリーランドの駐車場に到着し、約1分遅れて桂お兄ちゃん達も到着した。


「成る程、そう言う事やったんやな」

「農道に出た途端、急に飛ばすから何事かと思ったぞアルビレオ!」

「お陰で俺はもう既に疲れたけどな…。」

「ごめんごめん♪。さあ皆、館内へレッツゴー!」


 こうして館内に入る為のフリーパスを、皆それぞれ買う事にした。


「すみません、フリーパスを大人1枚、子供1枚お願いします」

「かしこまりました。小学生歳迄は4000円、中学生以降は5000円となります」


 と受け付けのお姉さんにお金を払った後、桂お兄ちゃんが。


「他の皆は自分の分は自分で買ってくれよ、全員の分を出す余裕なんか無いからな」

「本当に有り難う桂お兄ちゃん。わたしだけフリーパスはお年玉から天引きされてたから。『お姉ちゃんだから』って、勿論智枝は普通に買って貰ってた…。」

「マジかよ!、あの毒親共…。」

「まあまあ蒼っち。さあ今日はあーし達と思いっ切り楽しもう!」


 こうしてわたしは、本来親が楽しませてくれる事を、彼等にうんと甘えて、色んなアトラクションを思いっ切り楽しんだ…。


「あ~楽しかった!。本当に有り難う桂お兄ちゃん!」

「喜んで貰えて何よりだ。さて、国太君に命じられてるベリーパイを買いに行かないとな…。」

「ある意味、今回の最重要事項だからね~♪」

「本当にごめんね、あの人達が…。」


 こうしてわたし達は売店に行き、八重山ベリーパイを買う事になったのだが、桂お兄ちゃんが何を想ってか?。


「すみません、八重山ベリーパイ2つ下さい」

「かしこまりました。2つで8640円となります」


 と受け付けのお姉さんにお金を払う桂お兄ちゃんを見て、思わず。


「えっ!、あの人達に2つも買ってあげるの?」

「まさか、1つは鮫妻家に。もう1つはあびるん家で皆で食べる為だよ。明未だって食べたいだろ?」


「桂お兄ちゃん…。」と感極まりながらお礼を言うと、さっき迄向こうに居たあびるお姉ちゃんが。


「ねえめいみん、あっちにリボン売ってるから見に行こう!」


「うん!」と言ってリボンコーナーへ行った。そこには色んな柄や模様のリボンがあり、あびるお姉ちゃんに促されて色んなリボンを試着させて貰った。まるで着せ替え人形のように…、そんな中。


「わたし、オレンジとパープルが良い!」

「え~何で?、白とかピンクの方が似合うのに~…。」

「以前道徳の授業でカラーリボンの話をしてて、オレンジは『虐待やDVに反対』って意味で、パープルは『暴力やいじめに反対』っていう意味があるから好きなの」


 あびるお姉ちゃんが「めいみん、尊い…。」と言いながら泣きそうになってる中、ざくろお姉ちゃんが何処からか現れて。


「くくく。良い心掛けだ、流石我が眷属。我も同じリボンを付けてみたぞ、これぞ我が誇りだ!」


 と言いながら左にオレンジのリボンを、右にパープルのリボンをそれぞれ付けていた。それを見て感極まったわたしは思わず泣いてしまって、それを見たあびるお姉ちゃんが。


「あーざくっち、めいみんを泣かした~、いじめっ子~!」

「いじめてなどおらんわ!」

「違うの。わたし今迄『お前とお揃いなんて嫌だ!』とか、罰ゲームと称してわたしとお揃いをやらされてその人から、明らかに嫌そうな顔されて来たから、自分から進んでわたしとお揃いになってくれて、しかもそれを『誇り』と言い切ってくれた事が本当に嬉しくて…。」

「あ~俺も昔は、てか今も似たような目に遭わされてるな~。職場やあの一家から…。」


 こうしてわたしの夢のような時間は終わり、今から現実世界へと帰って行くのだった…。桂お兄ちゃんが先ずわたしの家に行って、八重山ベリーパイを家族に渡した。それを受け取ると早速お父さんが。


「遅えぞヅラ男、いつ迄遊び呆けてんだ!。さあ皆で3等分して食おうな、智加はお姉ちゃんだから我慢しろよ?」

「やったー!。流石おとーさん、ありがとー!」

「ふふふ、ご馳走様ヅラ男君。さあ、お父さんが機嫌良い内に帰った方が良いわよ?」

「そんな事よりおかーさん、早く切ってよー!」

「だな母さん、紅茶用意しろ」

「うふふ、はいはい」


 お母さんがそう言うと皆足早に茶の間に向かって行った。わたしと桂お兄ちゃんは取り敢えず玄関を出た。


「本当にごめんね桂お兄ちゃん。あの人達、自分から催促しといてお礼も言わないなんて…。」

「ははは。別に良いさ、もう慣れたよ…。さあ、俺達はあびるん家に行って食べような」


 わたしは「うん!」と言って鶴牧家に向かうと、鶴牧姉妹のお母さんこと、蒼乃あおのさんが出迎えてくれた。


「いらっしゃい。貴方が桂君ね、娘達から話は聞いてるわよ。今日は本当に色々有り難う」

「いえ、俺も好きでそうしてるだけですから。あのこれ、つまらない物ですが、もし良ろしければどうぞ」


 そう言いながら八重山ベリーパイを手渡すと、蒼乃さんが。


「あらまあすみません。お礼に夕飯食べていきませんか?、明未ちゃんも」

「すみません、ではお言葉に甘えてそうさせて頂きます、うっ…。」


 桂お兄ちゃんが感動して泣きながらそう答えた。うちの家族からあんな扱いされた後だから、余計そう想えて思わず感極まっちゃったんだろうな~…。


 皆で夕飯と八重山ベリーパイを準備して、それらを御相伴に預かった。9人だけどパイは8等分にした。鶴牧姉妹の父であるアビーさんと蒼乃さんが8等分を更に半分にして、それで良いと言ってくれたからだ。わたしはウチとは比べ物にならない程楽しく温かい団らんの中で、夕飯とベリーパイを美味しく、お腹いっぱいに頂いて、その日はお開きとなった…。

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