第27話佐藤千恵里その4

 21時までしっかりと勉強をした後のことだ。 

 俺は夕飯を買いにコンビニへとやって来ていた。


「輝明くんって一人暮らしですけど、ご飯はいつもコンビニなんですか?」


 俺がコンビニに行くと言ったら、一緒についてきた佐藤さん。

 そんな彼女はお菓子コーナーで俺に聞いてくる。


「いや、意外とスーパーにも行くよ。距離的にそこまで遠いわけでもないしさ」

「自炊はどのくらいの頻度でしてるんですか?」

「週に1回か2回くらいするかな」

「それなりに生活費を貰ってそうですし、自炊してるのは意外ですね」

「やっぱり、自炊した方が美味しいモノは美味しいからな。あと、体に良くなさそうなコンビニ飯ばっかり食べてるとさ、親にも心配されちゃうだろ?」

「なるほど」


 佐藤さんと仲良くなってきた気がした俺はふと気になった事を聞く。


「佐藤さんって指定校推薦枠を狙ってるって言うけど、勉強できるんだから一般受験でさらに最難関のところとか狙ったりしないの?」

「それも考えてはいたんですけど、有名どころの予備校なんてびっくりするくらい高いじゃないですか」

「あー、俺も予備校を調べ始めたけど結構な金額だよな……」

「なので、色々と考えた末に指定校推薦を狙おうってなったわけです。一応、うちも国立大学じゃないと絶対に学費払えない! ってほどの家庭ではないですし」


 真面目な佐藤さん。

 そんな彼女はというと、ひそひそと小さな声で俺に聞いてくる。


「咲夜は指定校推薦とか狙ってるんですか?」

「いや、お昼を一緒に食べるような友達なんだし聞けばいいだろ」

「ギスギスしたくないので聞けませんって」

「あー、あれだ。たぶん狙ってないよ」

「それはなによりです。ライバルは少ないに越したことはないので」

「てか、あれだ。咲夜には俺の家で勉強してるっての言ってるの?」


 咲夜と佐藤さんは同じグループだ。

 昼休みやらイベントごとの際は一緒に行動しているところをよく見る。

 

「まだ言ってませんよ。それにまぁ、学校では親戚なのをかくしてるじゃないですか。咲夜に『輝明くんの家にお邪魔したんですよ~』なんて他の子の前では言えません」

「ま、驚くだろうな。自分の友達が俺と仲良くなってたなんて知ったら」

「……いえ、案外ケロッとした顔で「ああ、そうだったの」で済ませそうな気も」

「あー、そっちのパターンもあるか」


 コンビニで買い物をしながら俺と佐藤さんは雑談を繰り広げる。

 とはいえ、そろそろ店内を見て回るのも十分だ。


「んじゃ、レジ行ってくる」


 と言って、俺は佐藤さんが手に持っていたグミを奪った。


「自分で買いますよ?」

「さっきは俺にお菓子を食べさせてくれただろ? だから、そのお礼だよ」

「……別に気にしなくても良かったのに」

「英語のノートも俺に貸してくれたからな。アレのおかげで本当に勉強が捗ったし」

「では、そういうことなら奢られましょうかね」


 佐藤さんは微笑みながら俺にそういった。


   ※


 コンビニで夕飯を買ったあとのことだ。

 ついでだし、佐藤さんを家まで送って行くよと言ったら、じゃあお願いしますねと言われた。

 なので、佐藤さんを家まで送り届けているのだが……


「仲良くなったのに、いつまで佐藤さん呼びなんでしょうか?」


 ちょっと困ったことを言われてしまった。

 咲夜以外の女の子を下の名前で呼んだことのない俺は苦笑いで答える。


「もうちょっと仲良くなったらかな」

「私は輝明くんと呼んでるんですから良いじゃないですか」


 推し強いなぁとか思いつつ、俺は恐る恐るショートカットにおしゃれなスクエア型のメガネが似合っている清楚な佐藤さんの下の名前を口にした。


「ち、千恵里ちえりさん……」


 やばい。めっちゃ恥ずかしいんだけど……。

 慣れないことをしてもどかしい気持ちになっていると、佐藤さんはクスっと笑う。


「緊張しすぎですよ。もしかして、私のこと変に意識しちゃってます?」


 変に意識しちゃってますか? 

 と、変に意識させるようなことを言うのずるくない?


「……そりゃもう男の子だし」

「ですね。ちなみに、私も女の子なので、輝明くんに千恵里と呼ばれて普通にドキッとしましたね」

「もうさ、そういうこと言ってくるあたりさ、俺のこと狙ってない?」


 佐藤さんがわざわざ俺の気を引くようなことを言ってくる。

 そのことを軽く指摘したら、佐藤さんは何食わぬ顔で俺に告げた。


「まだ狙ってませんよ。まだですけど」


 もしかしたら、これから狙うかもしれないと言わんばかりだ。

 そんな彼女に俺は聞いてしまう。


「文化祭実行委員にされかけた時に俺に助けられたのって、そんなに好感度上がるような出来事だったの?」

「別に輝明くんのこと意外と好きになった理由はそれだけじゃないですよ。体育祭の時に足首を挫いた私のことをさりげなく気遣ってくれたところにもトキメキましたし、文化祭ではクラスメイトと楽しそうにお化け屋敷の迷路を作ってるところとか、子供っぽくてなんか可愛かったですし」

「……俺のことめっちゃ見てるじゃん」


 しっかりと佐藤さんに見られていたようで、ちょっと恥ずかしい。

 そんな俺に佐藤さんはとどめを刺すかのようなことを言って来た。


「輝明くんのこと好きなのかもな~って思えるくらいには、輝明くんのことをわりと見ちゃってるのは確かですね」


 これさ、あれだ。

 佐藤さんって、俺のこと好きなんじゃないだろうか?

 

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