4話「【標識】と標識(1)」
灰の色に染まりきった空を
「大変な事になっちゃったね。」
「…………ドウしますカ?」
「ん〜……。」
「どうしようねぇ……。」
「…………
そう言われた模索は数秒で考え、すぐに答えた。
「ま、それでいっか。」
適当だな、とその場にいた皆で思ったが「あぁコイツそういえばアレだったな」と思い出してすぐに納得してしまった。
「さ〜て、行こうか。誕生日。」
「ん、行こっか。」
そこら辺に座り、適当な物をカチャカチャと音を鳴らしながら弄っていたらしかった誕生日が跳ねた動きで立ち上がる。
「横来て、横。」
「は〜い。」
「…………ワープしよっか。」
そう言いながらワープホールを目の前に設置する。
「ん、そうだね。」
「…………あ、そうだ。」
「?」
誕生日が棒が曲がった標識をその場に出したのを見たとき。私はもう、くすりと笑うしかなかった。
「折角だし、ワープせずにね_______________________」
「…………誰だ。」
呼びかけてみるが、返答は無い。
なぜかと思いよく見れば、その人物には頭部が無かった。
「………………!」
(会話は無理そうだ…………。)
手元に標識を出し、それを構える。そしてその人物の方へと突っ走った。
まるで水に浮かぶ波紋のような造形の円がその人物の頭部があった筈のところに現れ次第に広がっていく。
それを見て、属性の相性が悪く勝ち目が無い事だけを即座に理解した。けれども跳び上がりどうにかして攻撃しようとハンマーを持つかのように標識を持ち直し_________________
「Happy birthday to you,」
頭上から聴き憶えのあるフレーズが聴こえてきた。
それは少しずつ大きくなっていき、こちらへと近付いてくる。…………自分が負ける人物の相手をするよりかはいいかと思い、その歌声が聴こえてくる方へと攻撃する為に標識を構え直しそのまま頭上へと飛ばした。
「う〜〜ん!弱いね!」
「僕の名前を名乗ってるならそれっぽく攻撃してみてよね!全く。」
「…………。」
君の名前を喜んで名乗った訳では無い。
少しずつ、少しずつ思い出そうとしている間にも右から一発、左から不規則に。誕生日が手拍子をする度に攻撃が飛んでくる。
「Happy birthday to you,」
「…………標識はそんな攻撃はしないよ。」
そう
分かっている。本当はこうなる筈ではなかった。君はずっと標識という名のままだった………………筈だった。
『五情人』が出来てすぐの頃、その自己紹介をしたときの話。君は緊張で一言も零せずにいた。そんなものを見せられたら場の雰囲気が悪くなっていくのを少しずつ感じ取れた。
それを見た自分は君の名を聴き、それを代わりに伝えた。…………けれども、この時は、自分の自己紹介は最後で…………その2つ前が、君だったから………………
だから………………だから…………………………だから…………
「そこ、そこ、通ります。」
そう言われて思い出していたものと互いの手が止まる。
顔を伏せ気味ではだけた梅の黒い着物を来た少し細身の人物が去るのを見守ってから、互いにまた攻撃をし始めた。
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