2話「かちかち」

互いに、のんびりし続けながら生きている訳では無い。

それは分かっている。今、お互いの視界にお互いを捉えられているのは人生という道がちょっと交ざっているだけだ。




なんて事を、一緒に買い物をする為に向かっている道中で考えていた。

正面にどこからか吹き飛ばされてきた人が見え、その人を追いかけてこちらへとやって来た人を見て。

その人がこちらに視線を向けた。

その人がこちらに武器を構えた。

こちらは偶然見てしまっただけなのに、理不尽にも程がある。そう思いながら兎と一緒に武器を構えた。






相手の名前は知らないが、戦い方からして人狼か提灯だろうか。

人狼の場合は兎が不利になり、提灯の場合はわたしが不利になる。

どっちでも気にしないけれど、どっちであろうがこちらのどちらかが不利になってしまうのは分かっているので早期決着をしなければならない。

「そっち、名前は。」

わたしは兎のサポートをしながらそう聞く。

「あ〜……俺?」

「人狼って名前だけど。」

それを聞いた兎が軽く飛んで下がり、それを見れたわたしが前に出る。

「お前らは何?」

「わたしは蝙蝠。」

「だから逆さのままサポート入れてたのか。」

「逆さなのはサポートの時だけ。で、こっちのちっこくて可愛いのが兎。」

「あぁ、いいね。可愛くて襲いやすそう。」

「はッ、つまんない事言うね。襲うより可愛いがる方が肉体というものに美しさに磨きがかかるっていうのに。人狼だから、食べる事やら襲う事やらにしか興味を示せないとかそういうの?」

そう、人狼に向けて鼻で笑って返してやる。

残念ながら、わたしはおアタマがひん曲がって可笑しいのでそういう返しをするしかないのである。だからちょっと許してほしい。

「なんか……1言ったら二分の一で返された感じがあるな。もしかして、蝙蝠って性格捻くれてる人?」

「うん、申し訳無いけどその解釈が正解かな。てか二分の一って何。十分の五って事?…………逆だっけ?まぁいいや。考えてる前に興味消えたし。」

「そうか。…………そんなに性格が捻くれてるなら適当に襲い荒らしても問題なさそうだな!」

「……貴方にやれるものならやってみなさい。わたしはそれなりに戦わせてもらうから。」

「それはこちらからもお願い申すね。て事で頑張れ〜逆さ野郎。」






爪と鋼鉄の羽がぶつかり合っては反発して離れていく。それを何度も繰り返す。

こちらは少し羽の皮が捲れただけで特に痛み等は無いけれど、あちらは爪が削れ崩れていく痛み等がありそうだ。

「こちらはマトモやダメージは無しだけど……。」

「そちらは大変そうね。…………何があったらこの数分で死にかけるのよ。」

「し……知るかよお!!お前の羽硬すぎだろ!!」

「あと後ろにいる兎って奴のサポートが手厚すぎる。ダメージ与えてはいるんだよな?」

「まぁ……確かに与えられてはいるけど…………一瞬で無かった事になるものね……?」

「…………なんでだよ!!俺が与えたダメージはどこに消えた!?!?!?!?」

「さぁ?これでも受けて消滅すれば分かるんじゃないかしら?」

「【イニミニマニモ】」

わたしは能力を使い、あとついでに魔法を放って人狼を燃やしてそのまま滅した。




服にかかった煤をぱっぱと払い、兎を抱きしめて目的地であるデパートへと歩き始める。

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