羽化2
幽彁
8月が終わりますね
あたしを忘れないでと
呼ぶこえが
自分の輪郭が
いつしか溶けて
滲んで
あいまいになった
どろどろ
なにも捉えられないままだから
いつまでも盲目的に
昨日を捨てながら生きる今日は
同じ場所で転んでばかりで
滑稽に映ったでしょう
濁りきった
たしかに澄んでいた瞳
もうなにも
いきいきとは映せない
今
生まれ変わろう
無機質な五つの瞳のまえに
全ては均される
夏の五月蠅いほどにまぶしい
生命の鼓動になろう
ずいぶんと長い
冬でしたね
人知れず
醜い躰を脱ぎ捨て
せつな
空っぽゆえに虹色の輝きを
まとって
より醜悪に
鮮烈に
咲き誇って激しく燃やし
かつて届かなかったところまで
だれも
みむきも
しなくても
痛くはないから
生きてもいないのに死にたいだなんて
言えないから
夏のにおいと過剰にまばゆい光にあてられて
目が眩む眩む
ちぎれそうに脆い翅で
好き放題に
無意味に
飛び回って
入道雲の美しさとか見に寄ろう
最善策じゃ生きていけない
自分の歪な美しさを抱きしめて
今
一瞬のいのちの輝きを愛していたい
羽化2 幽彁 @37371010
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます