機械仕掛けの鼓動

天廻月媛

第1話 起動、そして初陣

 その瞬間、[彼女]は「産まれた」。


[彼女]は目を開ける。すると無数のロボットアームが彼女を取り囲み、辺りには流動する結晶可変合金の膜が優しく[彼女]を包み込んでいるのが見えた。

Annihilator Gynoid 7アナイアレーター ガイノイド セブン、起動」[彼女]が呟く。 AG7Annihilator Gynoid 7、つまり、これが彼女の名である。「自己点検開始...不良箇所なし。」AG7はそう呟くと金属のゆりかごから降り、自分の足で立ち上がった。AG7が出口に向かう通路を歩くなか、回りのアームが製造直後産まれたままの姿で何も身に付けていないAG7の形状可変生体模倣樹脂の肌に衣装と追加外部装甲を纏わせていく。最後に外付けの武装である雷電刀プラズマソードを装備してAG7は扉を開ける。外の荒廃した工場の残骸と汚染され濁った空が広がっている。AG7にはすでに初任務の情報が入力されている。AG7は初陣を飾るべく外に足を踏み出した。


 「これは初陣から少しめんどくさそうね。」AG7が物影から覗くとそこには大型二足歩行鉱石採掘重機が暴れまわっていた。それは戦闘用ではないものの、全長20Mの巨体に巨大な落石にも耐えうる頑丈なボディ、腕が強靭な鋏とドリルとなっておりそこらの軍用機と一対一タイマンすれば普通に勝てるほど強い。AG7は物影から隙を狙いながら、左腕の遊離電子チェーンソーを展開する。採掘重機が背を向けた瞬間に彼女は飛び出すと同時に跳躍し、採掘重機の背面を切りつける。高速で振動する遊離電子の刃が採掘重機の装甲をいとも簡単に切り裂く。採掘重機もSG7に気づいて左手の鋏を振り上げ、右手のドリルが唸りをあげる。しかしながらそれらはSG7を捕らえうるほどの速度はない。AG7はそれらをかわしつつ右手から雷電刀を展開し、採掘重機の足首を切り落とす。それにより大きくバランスを崩した採掘重機が倒れ込む。「とどめよ。」AG7はそのまま倒れ込んだ採掘重機のコックピットのハッチに連続で斬撃を叩き込み、そのままコックピット内部へ侵入する。中には家事用アンドロイドがいた。アンドロイドが口を開いて何か叫ぼうとした瞬間にAG7は蹴りを叩き込む。一撃でアンドロイドの頭部が潰れた。「機能停止確認、任務完了。案外早く終わったわね。」

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