VSアイアンゴーレム
男「ま、待て!そいつは倒せない!そいつにはあらゆる魔法が効かないんだ!」
シエル「魔法が効かない?」
ゴーレムへ近付く俺の代わりにシエルが返事をする。
女「剣の方には無い様ですが、胴体の方へは魔法を無効にする力がある様なんです。炎や水といった魔法は胴体に当たった瞬間に消去されました。」
何とか情報は聞こえているけど、俺には関係の無い話ばかりだ。
男「身体強化の類いも何かの呪文で強制的に解除される。」
男の話が終わると同時に何か結界の様な光が辺りを包む。ゴーレムは既に呪文を唱えていた様だ。
男「ま、まただ。これで我々は、己の肉体だけであのゴーレムと戦わなければならない。」
シエル「そう。でもシリウスには関係無いわ。あいつ、魔法使えないし。」
男「はぁ?な、何だと?それでどうやって戦う?」
シエル「見てれば分かるって。」
シエルが得意気に言う。確かに俺としてはいつも通りに戦うだけだ。けど、それを何故シエルが自信たっぷりに言うのか。まぁ、今は良いか。
改めて目の前の敵へ目を向ける。ゴーレムの両腕は手首の先に刀身が付いている。これはやっぱり人じゃないな。
ゴーレムは距離を詰めると右の剣で突きを放つ。俺はタイミングを見てその攻撃を刀で弾き、そのまま一歩踏み込むと刀を振り下ろす。ゴーレムは胴体を半身にして攻撃を回避すると、左の剣を横薙ぎに振り俺の首を狙う。
俺「おっと!」
伏せて躱すと一気に決着を付けるべく、ガラ空きの胴を狙い刀を振る。
ゴーレムの右腕を跳ね除け、左腕も躱して懐へ入った。どう考えても回避は不可能。
"殺った!"そう思った瞬間だ。俺の刃が空を斬る。
俺「はぁ?ちょ・・・!」
俺は確かに刀を振り抜いた。しかし、ゴーレムはその刃を飛び越え回避する。・・・・と言うか浮いてる?
シエル「な、何よ!浮いてるじゃない!」
良かった。見間違いじゃない。
ハッキリとは見えないが背中から火花を出してホバリングしている様に見える。
俺「いやいや、無い無い。この『世界』にそんなジェットエンジンみたいな物、無いだろ?」
ホバリングの状態から、空中で縦回転を始めるゴーレム。そのお陰で背中にエンジンらしき物を確認する。アレで浮いてたのか?そんな事を思ったが考えている暇は無かった。直ぐに我に返り後ろへ跳び退く。
俺「どわ!」
空中で一回転した後、両手の剣が揃って振り下ろされた。俺は少し地面を転がり距離を取る。
シエル「シリウス!大丈夫?」
俺「ああ!心配無い!」
とは言え、思っていたよりも強い。俺は立ち上がり、構え直すと呼吸を整える。
俺「仕方ない。少し本気を出すか。」
男「あの男、何者だ?」
シエル「え?あいつは私が雇った傭兵よ。」
またもシエルが得意気に言う。納得いかない部分もあるが、今はゴーレムに集中しよう。
俺とゴーレムは互いに距離を詰める。ゴーレムが右の剣を真っ直ぐ振り下ろし、俺は刃の上を走らせる様に右側へ受け流す。そしてすかさず上段から右腕の関節へと刀を振り下ろした。
俺「むっ!」
右腕の関節と俺の刀の間に今度は左の剣が挟まる。防がれた。ゴーレムはその体勢からショルダータックルで俺を突き飛ばす。
俺「くっ!」
隙間が空いたタイミングで次のモーションに入るゴーレム。ここで取るべきは防御が基本だろう。たが、このままだと相手を調子付かせるだけだ。俺はゴーレムの顎を狙い刀を振る。吹っ飛ばされながら放った俺の攻撃は、見事ゴーレムの顎を掠めた。
ゴーレム「!」
突然の攻撃に驚きゴーレムは一旦距離を取る。俺もその間に素早く体勢を整える。
様子を見ていたシエル達は歓声を上げる。何を呑気に見ているのか。怪我とか大丈夫なんだろうな。俺は改めて向き直り下段構えで立つ。
ゴーレムは走りながら右腕を引く。その姿から今回の攻撃も剣による突きだと確信した俺は、ゴーレムの右腕へ意識を集中する。ゴーレムが思い切り左脚で踏み込み、それに合わせる様に俺も踏み込む。
俺「ん?どわ!」
"突きが来る。"そう思った時だ。俺の右側から風切り音が鳴る。ゴーレムは右の突きじゃなく、左の剣で薙ぎ払って来た。辛うじてスウェーでの回避には成功したが、まさかフェイントを使うとは思ってなかった。
俺「野郎!」
ゴーレムは薙ぎ払いの勢いを殺さず一回転、再び右の剣で薙ぎ払いを繰り出す。そのまま独楽の様に回転し連撃へ移行する。しかし、俺もここで退けば押し切られる。独楽の軸を攻撃するべく下へ潜り刀を振る。ただ、ゴーレムの能力は俺が思っている以上に高いらしい。俺の動きを直ぐに察知し、独楽の状態で空中へと逃げた。だが、回転の類いは基本的に摩擦が無いと出来無い。空中へ逃げたゴーレムは回転を維持出来ず、その場で静止する。ここが狙い目だ。俺とゴーレムは互いに勝負を決める為に動く。
ゴーレムは落下を利用しながら左の剣を振り下ろす。俺は攻撃を躱し、逆に刀を振り下ろすと左の手首を切断する。
ゴーレムは気にする素振りも無く次の行動に移る。着地と同時に右の剣を振り下ろし俺の首を狙う。俺は咄嗟に落としたゴーレムの剣を掴み攻撃を受け止めた。
ゴーレム「!」
ゴーレムの右腕をそのまま抑え込むと右肘も切断し、一気に畳み掛ける様に攻撃を仕掛ける。ゴーレムの剣を人間で言う右の鎖骨部分へと叩き付け食い込ませた。流石のゴーレムも、ここまでダメージを喰らうと動きが鈍くなる。俺は脇構えから真一文字に斬撃を放ち、ゴーレムを腹から両断した。
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