想々の汀に、君影草は佇む。

幻霞空 氷澄(げんかく りす)

愁杪 side花哉

第1話 不変の朝

 カーテンを引けば、薄い雲が空全体を覆い、微かな風が流れている。不変すぎて、日常すぎて、退屈な朝。


 窓から見える故郷の景色に、僕は静かな怒りを感じた。思わず掛け布団をぎゅっと握りしめた。


 あの空がもっと暗くて、吸い込まれるように真っ暗なら良かったのに。そうしたら、僕は迷わずそこに飛びこみ、地獄なり何なりどこにだって行くのに。


 しかし、それが実現しない限り、終止符のない曲をずっと演奏するように、果てしない毎日をひたすら受け入れ、消化しなくてはならない。


 生きてたってなんにもならないのに、なぜ僕は生きているんだろう。


 布団から出て、窓から庭を見下ろせば、母さんが花にじょうろで水をやっているところだった。


 商店街の中にある、店舗兼自宅の庭の広さなんて二、三平方メートル程度なのに、そこにいるときだけは彼女の背中に疲労は感じられなかった。


 確かに小さくて白くて愛らしい花なのかもしれないが、何の役にも立たない飾り物だ。そんな様子を眺めているだけで、こっちが虚しくなってくる。

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