私は乙女ゲーのキャラクターじゃありません

一筆書き推敲無し太郎

第1話

あなたは勘違いしている。私は恋愛シミュレーションの攻略対象じゃありません。

恋愛シミュレーションの攻略対象なら好感度が100%になったらそのままある程度放置してても、問題ないけど。私は違うのよ。だってここは現実だもの。あなたが別の人と会話している所見たら嫉妬するし、別の人とご飯を食べてたら私はなぜって思うし。

あなたはあなたが思っている以上に私はあなたに大切にされているかどうかを気にしているの。

あなたは私の事をどう思っているのか、思っていないのか。

私は私の立場を気にしてあなたに人を差し向ける事にしたの。私が金で雇った偽りの知り合いをあなたに仕向ける。そこであなたの本心を聞き出す。まるでハニートラップ。殆ど身内のあなたにハニトラするとは思わなったわ。あなたがいけないのよ。私は恋愛シミュレーションの攻略対象じゃないので、好感度を鵜呑みにしたままにはしないわ。さあ、ハニトラの開始よ。あなたのいつもの友達に美人局して手駒にした彼の友達として紹介する手筈は整っている。そしてあなたは酒が入っている。私から見えないところに監視カメラを用意して、あなたの声は通話音声を介してハニトラの子が持つ携帯から筒抜け。

私の好感度は減点方式。これならあなたの本心が分かる上に結婚前に見切りをつけることだってできるわ。今のあなたは乙女ゲーの攻略対象になったってこと。少しでも選択肢を間違えると私と結婚できないわ。さて、あなたが席に着いたのを確認するまで待たせてもらう。


私はあなたの許嫁として、政略結婚でないのかを証明する必要があるのよ。私のことが好きな気持ちが打算でないのなら私を恋愛シミュレーションの攻略対象のようには扱わないはず。

あなたと美人局した友達とハニトラの子の異質な組み合わせのご登場ね。酒の席だから派手に頼むように伝えてあるし、あなたは酒が弱いから早速度数高めで酔わせるわ。

さあ、パーティの始まりね。whiskeyをストレートで注文するのはちょっと下品だけれどあなたの友達の好物と知ったからしょうがないわ。最高級のwhiskeyを持ってこさせたわ。美人局されて高い酒も飲んで、しょうもない友達を持ったわね、あなた。結婚したら間違いなく縁を切ってもらうわ、その前にこの件で用済みかしら。

そしてハニトラの子は日本で指折りの接待上手な女として界隈で有名な子よ。若いのに殊勝なことだわ。この子にはたくさんお礼しないとね。相場を超えた示談金で今後も活躍するかも。

あなたは頼りないけど私の側にいるときが一番楽しそうなの。でも今日ばかりは楽しそうね?

覚悟なさい。

あなた「いや~~~つよいなこの酒!もうのめなーい…」

ハニトラの子「あら~もう酔っちゃったのかしら?」

あなた「うーーんもうのめないよぉ」

弱いわね。whiskeyの味を楽しむ時間もなかったじゃない。折角用意させたんだから味わってほしかったわ。

美人局友達「そっそういえばあの子とはどうなの?最近さぁ…」

導入が下手!頭が悪くないと美人局には引っ掛からないとはいえ、なんてザマよ。

あなた「うん?変わらないよー」

変わらないって、変わっては無いけど、好感度を上げたまま放置してるじゃない。

あなた「最近はあんまり会えてないのがあるけどさ、頭の中ではいつでも会ってるから」

美人局友達「おっ、惚気か?今日は聞かせろよ。」

あなた「いつも聞かないくせしてさー。ま、いいか、聞いてよ最近メイク変えてたのを見た瞬間に気づけなかったんだけど、あとから気づいてさ、歩いてる姿見かけて後ろから声掛けたらもう違うメイクになっててさ。なんも言えなかったんだよね」

美人局友達「そりゃ一歩どころじゃなく遅かったなww」

あなた「あとさー彼女のお父さんとこないだ釣りに行ってさ、海の上で刺身にしたら娘にも食べさせてやりたかったって言っててさ、お父さん船酔いして自分の娘が刺身嫌いなの忘れてたwだからその日は焼き魚にして持って行ったんだけど留守だったんだよね。だから使用人さんに渡してもらおうとしたんだけどお腹すいたから食べちゃった。」

ハニトラの子「えー優しいじゃない。わたしも食べたかったな?」

あなた「ふふ。でも釣った魚あげるのは彼女の特権だよ、ごめんね?」

美人局友達「口が回るじゃねぇか!そのまま滑らせてみろよー今日はあの子いないんだし!」

あなた「えー、酔ってるけど、酔ってても悪口がでてこないなぁ。」

美人局友達「一個ぐらいあんじゃね?」

ハニトラの子「今日は無礼講よ、わたしも忘れてあげるから♡」

あなた「うーーん…ええっと…ううんと、あ!」

美人局友達「おっなんかあるんじゃね?」

あなた「俺があの子のこと好きすぎて仕事に身が入らない!」

美人局友達「なんだそりゃ、ほんとの惚気聞きたきゃねぇよ。甘すぎだろ」

あなた「どうしてもなにか一個言えって言ったろー?」

ハニトラの子「わたしもそんなに思われてみたいなぁ、彼女さん幸せだね?」

あなた「どうなんだろう、俺じゃ力不足でいつも彼女の横に立つにはまだまだだなって思ってさ、もっと自信つけたいなって思ってるから、彼女からしたら俺じゃ満足しないんじゃないかな。許嫁なんて肩書じゃなくて一個人として彼女からどう思われているのかが心配だよ。」

美人局友達「確かに、お前頼りないもんな?」

あなた「言ったなー!」


……こ、これは、恥ずかしいぞ!?ハニトラの子を雇うまでもなかった!美人局なんて危なっかしい手を使うまでもなかった!あなたは純粋に私を想ってくれていた!私と会ってから時間が経つ度に恋愛シミュレーションの攻略対象として扱われていたのではなく、私に相応しいようにって励んでいたとは……私の減点方式なんて数字がピクリともしない、むしろ天井が上がってるわ。


あなた「会いたーいなぁ、もう寝てる時間かなぁ、あっ寝顔可愛いんだよー」

美人局友達「あーあーあーもういいって!惚気話した途端にこれだ!俺はもうwhiskey飲んだし、ここの勘定は伝手があるからもうじゃあな!」

あなた「えーもう帰るの?一杯で帰るなんてお前らしくないぞーって帰っちゃった。 キミはどうするの?」

ハニトラの子「わたし?うーん、目的は達したけど…せっかくだからもっと聞かせて?彼女さんのいい所♡」

あなた「おっ、聞いてくれるのか~そうだな…」

もっもうやめて!これ以上は過剰摂取だわ!お父様と釣りに行ったことも魚を持ってきてくれたことも、メイクを気づいてくれてたことも、私のことを大事にしてくれたことも。

す、好きすぎて仕事に身が入らないとか…

こんなにあなたの事これ以上知るのは私の計算外よ!うれしくてはずかしくてしんじゃいそう…



私「…作戦中止。あなたには約束以上のチップを弾むわ。」ハニトラの子「あら。もう?ずいぶん簡単な仕事だったわね~またのご利用お待ちしてるわ♡愛されるって最高ね?」私「うるさいって…もう利用することは無いと思うわ…」ハニトラの子「あら残念。」


あなた「携帯をおもむろに取り出してどうしたの?」

ハニトラの子「あらそうね、代わるかしら?」あなた「俺が?知り合い?」ハニトラの子「代わればわかるわ♡」あなた「ふーん…代わりました」私「…」あなた「あの…?」

私「明日正午に家に来てください。」あなた「あれっ、もしかして」

ツーツーツー

ハニトラの子「さてわたしはお邪魔みたいね?アディオス♡」


正午


私「来てくれてありがとう」あなた「やっぱり昨日のって…」私「そう、私。今日はあなたに言う事があるの。」あなた「えっ急に?」私「私は恋愛シミュレーションの攻略対象じゃないから、これからもずっと、ずっと好感度を上げて欲しいの。」あなた「?うーんと?」私「…バカッ、婚姻を締結するのっ。」あなた「ええー!う、うれしいけど急だってやっぱり!」私「もう、盟約は済んでいるから当人に任せるって言われて早1年。もうここしかないわ」あなた「さ、最近会えてなかったから…避けられてるのかなって」私「ええい!相変わらず頼りないわね!女からこう言わせた責任を一生懸けて償ってもらうわ!」あなた「えっと、は、はい!」



私は恋愛シミュレーションの攻略対象ではありません。恋愛シミュレーションの攻略対象だったら結ばれて終いだものね。でも私たちは永久に好感度をあげていかないとならない関係になった。いつか打算で聞き耳立てて聞いてた話を言わなきゃね。それは好感度が最高に近いときに話して、それからまた好感度を上げることにするわ。私は恋愛シミュレーションの攻略対象じゃないのだけれど。

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私は乙女ゲーのキャラクターじゃありません 一筆書き推敲無し太郎 @botw_totk

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