バッティングセンターに通う男

一筆書き推敲無し太郎

第1話

オレはサラリーマン。しがないサラリーマン。

仕事はそれなりで、家庭は持ってない。

実家に帰る度に結婚の話をされるような、しがないサラリーマン。

そんなオレにも生きる上で楽しみがある。

ここだ。バッティングセンター。

なに?子供の趣味じゃないかって?

うるさいな。オレはこれが好きなんだよ。

まぁこれからもっとうるさい音を聞くんだけど。

同僚はもう付き合ってくれない。コスパのいい趣味なのにな。

今や値上がりで1000円札じゃ5回しかできなくなっちゃったけどさ。しがないバッティングセンター。

昔はもっと安かったのさ。子供の頃は友達と来るのが楽しかった時間。

オレ?野球部じゃないよ。野球はやったことない。

なんでバッティングセンターにお金払うほど好きなのって?オレの好きにさせろよ。まったくもう。

両替機で専用コインに変換する。この時間、好き。なんでか反応が悪い両替機。センチメンタル。

球速は110kmがちょうどいいことに気づいたのさ。デッドボールになったときに1番痣にならない速さ。

目は追いつくからもっと球速上げたいけどさ。身体大事にしなきゃ。

はは、子供の頃は120kmをホームランにしてたのに。どうでもいいか。

じゃあコイン入れよう。多分実在の野球選手がモチーフのモニター横から飛んでくる球。初球は外すさ。肩慣らしってやつ。もっと球の高さ上げよう。ボタン押して。

さあ2球目。当たんないか。次次。

3球目。おっファウルかな。当たりだしたら止まらない、それがオレ。

4球目。振るのが早かった。かすってはいるから。なんだろう言い訳しちゃうな。ミスしたって怒られるわけじゃないのに。上司が隣にいるような、そんな感覚。

5球目。やっとヒット性の当たりだ。ちょっと控えめなガッツポーズ。見たか。打てるだろ。


閑話休題


ああ、打てたな。うん。なんか今日は当たんなかったかもしれないけど。記録に残ったり、誰かの記憶に残ったりするわけじゃないから。また言い訳しちゃう。しがないサラリーマン根性がここでも発揮されてるのか。ちょっと悲しい。子供の頃のオレが今のオレを見たら。ださい、って言うのかな。はは。はぁ。

オレはサラリーマン。バッティングセンターが好きなサラリーマン。言い訳三昧サラリーマン。

明日は球速落としてみよっかな。はは。明日は当たるといいけど。

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