第5話 ヒロイン(?)は僕の手を離さない

 グロウベアーを倒したことを確認した後。


 このままでは荷物を持っては帰れないと言うフィオは、大急ぎで大人を呼んできてくれとリセルに頼んだ。

「リセルは身軽であれば、村で一番…ううん、町で一番足が速いもん。すぐ戻ってきてくれるよね?」

 おだてられたリセルは、ギルドマスターのグレッグ達を連れてきたが、説明不足だとすごく怒られた。


 でも、グレッグは大剣も、ユーベルの草も含めて荷物を持ってくれたし、倒したグロウベアーの素材の取り方も教えてくれたのだ。

 リセルはとても勉強になったし、「怖い顔だけど親切な人だね」とフィオも嬉しそうだった。


 そして、フィオはその場でグレッグに腕を嵌めてもらえた。

 嵌めてもらうときも、その後もリセルの手を握りながら「いたくて死んじゃうぅぅぅ」と言ってずっと泣いていたが……。

 グレッグは「驚くほど根性がねぇ」と呆れていた。



 ※※※


「「こんにちはー!!」」

「おお、二人とも、また来たのかい?坊主には大剣は重かっただろう?」

 武器屋の店主はニヤニヤと笑って言った。

「はい……。返品って出来ますか?」

「どれどれ。お? 使ったのかい? まぁ、研ぎ代さえ貰えればいいよ」


「やったぁ!おじさんありがとう!」

 フィオは、右手を三角巾で吊りながらもぴょんぴょんと跳ねて、イテテと顔を歪めた。

 そのままトコトコと棚に歩み寄り、カニフォーク剣を手に取った。

「やっぱこれかなぁ?」

「絶対やだって!」

 フィオの手の中からリセルは剣を取り上げる。


「ハハハ!まぁそれもいいけど、坊主にはこれくらいがいいんじゃないか?」

 店主は、奥から片手剣を持ってきた。柄が長めで両手で持つことも出来そうだ。

「それに、これは……」

 カシャカシャと柄を操作すると、すぽリセル細く小さな剣が出てきた。

「あ!カニフォーク!!」

「そうそう、変わった造りだが嬢ちゃんも気に入るんじゃないかと思ってな」

 リセルは店主からキラキラした目で剣を受け取る。

 フィオは嬉しそうに「お得感ある~」とリセルの持つ片手剣をニコニコとした目で見つめた。

 リセルの空いた左手をフィオがそっと握る。

 二人は、これならいいね、と満足そうに笑いあった。

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冒険者になるのにヒロイン(?)が同行をやめてくれない フェムト@ピッコマノベルズ連載中 @femtoatto

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