第25話

「今日はどうして呼んだんですか?」


僕はずっと思っていたことを聞く。


「うーん、なんとなく。特に理由はないかな」


先輩はそう言って、いつも通り僕の前に座った。かと思えば、先輩は急に立ち上がり、机と椅子を僕と横並びにして、何事もなかったかのように僕の隣に座った。


「え、先輩何してるんですか!?」


僕は戸惑って先輩に聞く。


「うーん、理由はない。なんとなくだよ」


でも、そう言う先輩の顔にはいつもと違った陰りがあった。絶対先輩は嘘ついてる。何かがある。僕は確信した。


「本当ですか? 絶対何かあるようにしか思えないんですけど」


「本当に何もないよ」


先輩は「何もない」の一点張り。その理由を話そうという気はないみたいだった。

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先輩への嘘 くるてら @Daigakusei-Sannbyakumozi

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