先輩への嘘

くるてら

第1話

「好き?」


唐突に聞かれた二文字の質問。僕は困惑して、思わず言葉に詰まった。


「好きじゃないの!?」


先輩は僕に聞く。


「いや、好きですけど。それは先輩としてなのか、恋愛としてなのかどうなのかなって」


「なんでも」


返事に困る僕をよそに、先輩はいつものように微笑みを浮かべていた。この先輩は本当によくわからない人だ。出会って3か月。友達の友達みたいな立ち位置から、急に僕の前に現れた。どうして僕たちに話すような関わりが出来たのか全くわからない。でも、何かが僕たちを繋ぎ止めてた。僕は少し考えて、自分の思いを口にした。


「僕は『先輩』として好きですよ」


このとき、僕たちを繋ぎ止めていた何かは壊れてしまったんだと思う。

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