第31話 正式依頼と仲間たち

 翌朝。ギルドの受付に顔を出すと、職員の女性が笑顔で僕を呼び止めた。

「佐藤遼さん。銅級昇格、おめでとうございます。そして、さっそくですが銅級以上の冒険者にしか任せられない正式依頼がひとつあるのです」


 彼女が差し出した依頼票にはこう書かれていた。


【正式依頼/推奨ランク:銅級~鉄級】

 東の都近郊の森に出る、群れをなす牙イノシシの調査と討伐。


「なお、この依頼は二人以上のパーティで挑むことが条件です。佐藤さん、同行者はいますか?」

 僕は首を振った。ミオは肩の上で「ムキュ?」と首を傾げている。


 その時、後ろから声がかかった。

「もし良ければ、私と一緒に行きませんか?」


 振り向くと、艶やかな黒髪を一つに結った女性が立っていた。

 落ち着いた瞳に、不思議な影を宿している――アヤメだ。以前、昇格試験を見ていたらしい。

「あなたとそのスライム……ミオ、だったかしら。とてもいい動きをしていたわ。私も銅級だから、条件は満たせるはず」


 助かった、と思った矢先。カウンターの柱にもたれていた長身の青年が口を挟んだ。

「なら、俺も加わろう。群れをなす牙イノシシなら、斥候役がいた方がいいだろう」


 透き通るような緑の瞳。長い耳。男のエルフだ。

「俺はリュシアン。見ての通り森歩きには慣れている。……それに、そのスライムがどれほどのものか、少し興味があってな」

 ミオはリュシアンをじっと見つめると、ぷるんと体を震わせ――

「ムキュッ!」と威勢よく鳴いた。


 僕は苦笑して答える。

「……じゃあ、三人と一匹で、正式依頼に挑んでみようか」


 こうして僕たちは、新しい仲間とともに本格的な冒険へと踏み出すことになった。

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