第15話 はじめての依頼

 冒険者ギルドで最初に回された依頼は、町の近くの畑を荒らす小型魔獣の討伐だった。

 危険度は低い。新人が最初に受けるにはちょうどいい。


「……でも油断するなよ」

 森の入口で弓を握りしめながら、僕は胸元のミオに声をかけた。

「ムキュッ!」


 頼もしい返事に、肩の力が少し抜ける。



---


 しばらく進むと、茂みの向こうでがさりと音がした。

 茶色の毛むくじゃら――イノシシに似た小魔獣が三匹。

 牙を剥いてこちらに突っ込んでくる。


「来た!」

 僕が矢を番えた瞬間、ミオが「ぷにゅっ!」と飛び出した。


 ぷるん、と体を膨らませて魔獣の顔に張りつく。

「ブギャッ?!」

 視界を塞がれた魔獣が混乱して暴れる。


「今だ!」

 僕は矢を放ち、急所を射抜いた。


 残り二匹も同じように、ミオが「みーっ!」と鳴きながら足にまとわりつき、動きを鈍らせる。

 その隙に矢を撃ち込み、無事に仕留めることができた。



---


 息を整える僕の足元に、ミオが「ムキュッ」と戻ってくる。

 ぷるぷる震えて、短い手で僕の指をちょんちょん突いた。


「……ありがとう、助かったよ」

「ミ!」


 得意げに跳ねるミオを見て、思わず笑みがこぼれる。

「ふふっ、ほんとに頼りになるな」



---


 討伐証をギルドに持ち帰ると、受付嬢が驚いた顔で言った。

「初めてで三匹も……! すごいじゃないですか」


 周囲の冒険者たちもちらりとこちらを見る。

 笑われていた視線が、少し変わっているのを感じた。


 ――僕とミオは、ちゃんとやっていける。

 その確信が、心に芽生えた。

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