怖さも切なさも、そして温かさも全部ある。だからこそ忘れられない物語です

呪いに囚われた姫と、仮初の契りで命を差し出すために現れた男。
――それだけならよくある話のはずなのに、この作品は違います。

恐怖に覆われた屋敷で交わす、朝餉のやりとり。
井戸端でふと素顔がのぞく瞬間。
花畑で編まれる花冠と、ぎこちない微笑み。

小さな場面ごとに積み重なる二人の時間が、気付けば「運命」に変わっていく。
硬派で不器用な如月が、姫にだけ見せる優しさと誠実さ。
凛とした姫が、彼にだけ許す揺らぎと淡い恋情。

戦いの迫力も確かに見どころですが――
本当の見せ場は、この「静かな恋の鼓動」を掬い取れるかどうかだと思います。
そこに気付いた瞬間、この物語はもう忘れられなくなります。