手紙
自分の思いの丈をしたためる。ありったけの愛と感謝を詰め込んだ5枚の便箋に純粋無垢の封筒に閉じ込めた。
次に書いたのはありったけの哀しみと辛さを詰めた2枚の便箋に茶封筒に閉じ込めた。
一つはある人へ、一つは自分へだ。
勇気をだして書いて渡したその封筒は埃を被った。自分への手紙は封を切るのが怖くなってそのまま引き出しの奥へと隠した。
何をしたかったかはもう分からなかった。感謝も愛も、哀しみも辛さも、誰にもどこにも届かなかった。ただ空虚な心だけが時間を遂げていく。
本当はもしかしたら反対で伝えたかったかもしれない。愛を自分に哀しみをあの人に。
でももうそれは遠い記憶にこびり付いたままなだけで何にも成らなかった。結局私の心は誰にも自分にも届かなかった。
重くのしかかるその答えだけが答えなのだと気づいていないフリを続けて今を息をする。
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