12〈鈴花〉聖剣ゴムボーイ
毎年ウンザリしている庭のハイノキの剪定に色々なノコギリを試したのだが、ある年出会った「ゴムボーイ」と云うノコギリの切れ味に感動し、以来ずっと愛用してきた。ゲームブックでキャラクターを作るときに名前を「聖剣ゴムボーイ」としたのもゴムボーイを愛する鈴花にしてみれば極自然な事だった。
21歳で子供を産んだ専業主婦の鈴花にはあまりダーク・シーを遊ぶ時間は無かったが、子供が寝てからの僅かな時間 コツコツと章を進めてきた。帰りの遅い夫が帰宅するまでの毎日 1、2時間ほどが鈴花の自由な時間だった。
子供は二人、上の子は精神的に少し大人びてきたが二歳下の子はまだまだ甘えたい盛り。
「早く寝ないと怖い悪魔がくるぞー」
と寝かしつけるのが鈴花の定番だ。
夫の
「もっと休める仕事に転職しようか」
と言ってくれているが、英俊が好きな仕事に就けている事を知っている鈴花は、彼にそんな犠牲を払って欲しくなかった。
「今が一番ふんばりどきだ!」
自分にそう言い聞かせ鈴花は毎日を過ごしていた。
そんな鈴花の唯一の息抜きがダーク・シーだった。
聖剣ゴムボーイとしての
剣の名前は『グランダアルボ』と『クラーゴン』。ダーク・シーでは自分でクラフトした武器には自分で命名できるため、これは鈴花が付けた名前だ。
現在のレベルは36、ほとんどソロで遊んできた鈴花にはマイペースで進められるダーク・シーが合っていた。
子供二人を寝かしつけ、二人が明日着る服を用意して 英俊の食事にラップを掛けてから不安なニュースばかりのテレビを横目にゲームブックを広げて『DARK SEA』と起動する。
〈orbis terrarum commutationem〉
金色に光り輝くホログラフィの光。
そしてその日、鈴花は異形の魔剣士の姿に変異した。
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