邯鄲 その2
次の日、劉秀、呉漢・耿弇を大将軍と為して幽州から兵を発すべしと命ず。両将軍に苗曾の代わりの幽州牧として
鄧禹は劉秀が蕭王を拝命したことを
宴が始まると途端、劉秀の酒杯に注ぎに参って、蕭王の拝命を喜び、
この馬武の動きが牽制となって、劉秀が図った謝躬の謀殺の機会は失われた。何時の間にやら謝躬は宴を切り上げて帰り、諸将の中には
宴を終わらせた劉秀は馬武を誘って二人だけで高台に登って曰く「我は、漁陽と上谷の突騎兵を得ている。将軍にこれを率いて貰いたいと思う。
馬武、はっとして、
劉秀、くすくす笑いて曰く「謙遜するな。将軍は長く戦に慣れ、兵に
馬武、既に昆陽で一緒に戦った勇将として劉秀を見ていたが、今に至ってその人物に惹かれ、劉秀、馬武の意外な謙虚さに惹かれる。
次の日、鄧禹・
鄧禹、じっと劉秀を
次に、朱祐に応じれば、朱祐切り出して曰く「尚書令謝躬を
劉秀、
朱祐答えて曰く「左様、鄧禹と話せしも一致しましたが、彼の副将、兵士は掠奪に余念無く、命令に服せず。あれは軍に非ず、寇賊なり。それを束ねるは将軍ならず盗賊の頭目
劉秀、ふむと頷き問いて曰く「如何にすべし」
朱祐曰く「先ずは同じ所に営を持つべからず。これを捕えて兵を分けるべし。最悪、斬るも可なり」
劉秀、朱祐がここまで思うとなれば、鄧禹は何を吹き込んだと思うが、吹き込むも何も、悪事千里を走り、劉秀も悪名を聞いたが故、謝躬を殺すのを一旦は認めたのである。
よって劉秀、城を遷すと同時に謝躬の所に
蕭王来ると言えば、謝躬はすぐさま迎える。劉秀、謝躬の兵の規律無く乱れたる様を
劉秀曰く「卿にだけ伝えることがある。河北未だ
謝躬曰く「それは聞き申した」
劉秀、頷くと続けて曰く「河北を定める為には兵がいる。故に、幽州に兵を発させた。如何に思う」
謝躬答えて曰く「それは当然でありましょう」
劉秀、続けて曰く「若し、幽州牧、上谷太守、漁陽太守、それを妨げんとすれば、それを捕え斬らせよと命じた」
謝躬答えに詰まったが、漸くして曰く「それも可なり」
劉秀、にこりと笑うと曰く「卿も、そう思われるか」
そして長安の便りがあるかを尋ねて、閑話して帰る。
帰り道、馬上で劉秀、祭遵に問いて曰く「謝尚書を如何にすべし」
祭遵答えて曰く「大王のお決めになることです」
劉秀更に問いて曰く「もし、
祭遵振り返り答えて曰く「唯斬るのみ」
劉秀同じ事を陳俊に聞けば、陳俊答えて曰く「斬らんと欲すれば、即ち我に命ずべし」
この後も、劉秀、度々、謝躬に会い慰安する。謝躬、職務に勤めたれば、劉秀称して曰く「謝尚書は真の吏なり」。表面上は謝躬に親しむが、劉秀、依然としてその乱兵を憎み、時に応じて連れる将も、謝躬の兵を忌む。時々、劉秀は兵の乱れていることを問えば、謝躬、欲強ければ、兵また強く、牛角を
都度都度現れる劉秀に、龐萌は謝躬に謂いて曰く「劉公信ずべからざるなり」
よって謝躬はそれを劉秀に告げると、劉秀は謝躬を
兵を
耿弇声を上げて問いて曰く「帝に命じられた上谷の韋太守殿に、漁陽の蔡太守殿とお見受けするが如何に」
韋順応えて曰く「左様なり、将軍は蕭王の配下なりや」
耿弇答えて曰く「如何にも、蕭王の大将軍なり。なれば門を開けよ」
蔡充笑みて答えて曰く「蕭王に、我らの
耿弇、声を上げて曰く「上谷漁陽の太守は蕭王に応じる者のみ、汝らは蕭王に応じんや」
韋順・蔡充、声を上げて笑い、曰く「ただ今上帝に応じるのみ」
耿弇曰く「蕭王の大将軍耿
呉漢、僅か二十騎で無終まで至れば、苗曾はこれを備えなきと思い手勢のみでこれを迎える。
呉漢、苗曾と認めたれば、単騎近づいて声を上げて問いて曰く「幽州牧苗曾なるや」
苗曾答えて「左様、将は蕭王の手の者なるか」
呉漢、更に問いて曰く「蕭王を妨げる気か」
苗曾答えて曰く「我は今上帝の臣下であれば、従うのは帝のみ」
呉漢何も言わず、膝を叩く。苗曾、何を考えていると呉漢を窺えど、即座に判らず。呉漢の後方から騎馬が猛進して、初めて知る。苗曾の手勢が散じ、苗曾の目が呆然とするのを見るや、呉漢、馬を走らせ、右手で苗曾の手を叩いて手綱を落とさせ、その手でそのまま胴を抱えて馬から
返して呉漢曰く「帝に請うべし」と苗曾を、手元に剣を残して放り投げ、馬を取って返して降りると苗曾の剣でこれを斬る。よって呉漢、苗曾の軍を
呉漢・耿弇の働きに幽州震え驚き、県・郷は風聞を伝えて帰順しないところは無い。遂に呉漢・耿弇、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます