天空の姫ガンリと目が合う

京極道真  

第1話 頭の上

出会いは急で。偶然だ。

毎日通る交差点。

赤信号。スクランブルのど真ん中。

立ち止まる。点滅はまだだ。

頭上を見た。雲が流れている。

「?」

白い雲の先端に2つの目玉。

目玉があることで雲が擬人化した。

「ガンリ。」

「?」

「わたしは天空の姫ガンリだ。人間。

わたしと目が合うとは。一億万年に1人か。

よし人間、地上に降りて来てやる。」

僕は即答。

「いいえ。ぜんぜん頼んでいませんから。

降りてこないでいいですよ。」

頭上から思いっきり目をそらす。

交差点に目を落とす。

「ヤバ。」信号が点滅しだした。

僕は残り半分の距離をダッシュで渡り切る。

ただでさえ暑い夕方のスクランブル。

走ってしまったぜ。

渡り切った僕は何事もなかったように

いつもの道を歩き出す。家はもうすぐだ。

だがもう2つの横断歩道を渡る。

いつもは赤信号になれと念じる。

家まですぐだ。だがこの信号待ちの時間が

僕はたまらなく好きだ。

この強制的な赤信号。止まらなければならない。

誰かに、人からこうしなさいと指示されるのは嫌いだ。

僕に指図するなと強く思ってしまう。

ただ、こうした無機質の機械的な強制は

好きだ。

変なこだわりだ。

それに強制がなければまっすぐ歩くだけ。

立ち止まり休むことなくなく。

真面目な僕はきっと疲れていても永遠に歩き続けてしまうだろう。

まあ、急いでいる時中は、

もちろん赤信号にムカつくが。

1つ目は青信号。止まらず歩く。

2つ目の信号。赤信号。僕は止まる。

無意識にいつもの癖で上空を見た。

空から美少女が降って来た。

「逃げるな。少年。」

「ゲッ。」さっき、頭の上で目が合った奴だ。

「ドスン。」彼女は僕の上に覆いかぶさる。

「痛いぞ。」

「天空の姫ガンリに向かって失礼だぞ。

少年。」

かなりの美少女だ。

だが「痛いものは痛い。どいてくれ。」

まわりの歩行者は誰も気づいていない?

それとも見てみないふりか?

信号が青に変わる。

僕は彼女をどかし何もなかったように横断歩道を歩きだす。


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