第二神話 運命

「……………がっ」


「…あっ…え…」


くっそ…失敗した…正面に集中しすぎて背後からの攻撃が完全に頭から抜けていた…あー…心臓から血出てる…こりゃ早くしないと死ぬな…


「ひゃははははは!!見ろよ!創造の神が血を出してるぜ!!情けねぇなぁ!」


ちっ……小童共が…


「ミュウ…よく聞きなさい…ハッ…今から君を強制的に転移させる…ハァ…場所は出来る限り…天神か北欧の近くに…するから…そこで…匿って…貰いなさい…こっちに…戻ってくるんじゃ…ないよ…」


「やっ…やぁ……やだ…」


「っはは…文句言わないの…こうするしか…ないんだから…ぐっ……」


神は傷を受けても、どんなに致命傷を受けても本来は痛みがない、でも

人間に憧れて、人間が好きだから、人間に寄せた構造に改造した、だから痛覚もあるし、食欲とかもある


…………ちょっと失敗したなぁ…


「………強制転移…」


「ファ…ファラく…」


その時、ミュウは姿を消した


「…………良かった…成功した…」


「ちっ…てめぇ…逃がしたな?」


「追え!あの女を逃すな!」


「はっ…」


その場を離れようとした神は全員、体を横に真っ二つにされ、地に落ちた


「行かすか…阿呆ども…こいよ…俺を殺しきってから…行けよ…」


「ちっ…てめぇぇぇ!」


「…………ごめんな…ミュウ…」


〜天神の領域〜

「忙しい忙しい!」


「ん?」


目の前に青い陣が現れそこから神が落ちてくる


「はぁ?!なになに?!って…ミュウ!?」


「あ…ヘスティオ…」


「なに?また夫を自慢しに…」


「ヘッ…ヘスティオ!助けて!ファラくんが…!」


「………?!」


「それはどういうことだ…?創造の嫁よ」


「はっ?オーディン?何故ここに…?」


「大天神に用があったのだが…些か創造がまずいこもになっていると知ってな、ついでに助力を求めようとしていただけだ」


「………それで?ミュウよ何があった」


「その…あの…」


ミュウは深呼吸をして何故こうなったのかを話す


「…………ふむ…では行くとしよう」


「えぇそうですね、彼には返せない程の恩があります」


「でっ…でも…」


「なんですか?ミュウ、貴方はたすけたくないんですか?」


「たっ…助けたい…けど…」


「じゃあ行きましょう、早く行かないと取り返しのつかないことになりますよ」


「わっ…わかった…」


〜天界道〜


「ハァッ…ハァッ…」


「ぐっ…まさか百以上もいた神がこいつひとりに…くっ…くそぉぉ!」


「ははっ…これで終わりだな…」


ファラは最後の一柱を殺し、片膝を着いて胸を抑える


「ハッ…ハァ…俺は…治療が…苦手だ…ってのに…」


「ファラくん!」


「?!なんで戻って来たんだ…」


「おい、創造よ………その身体…」


「っはは…やっぱり君達も来たのか…」


「ファラ!今ならまだ間に合う!早くラファエルの…」


「いや…行っても途中で力尽きるよ…」


「でっ…では…」


「……………」


ミュウ…我が子達よ…いまから俺がすることを…どうか許してくれ…


ファラはミュウの目の前に指を置き、こう唱えた


「命令:今から君は…この俺…ファラとなって…この神界を統べる王になる…」


ミュウとヘスティオの目は虚ろになり、頭は脱力して下を向く


「命令:君は…僕を忘れる…世界も僕を忘れて…ファラという存在は一人になる…」


「命令:その命令はいつか解ける…俺とミュウが創った世界…エンドクロスに関係した事を行おうとした時…記憶の蓋は外れ…命令は消滅する」


「そして最後に……命令:僕が君の前から姿を消して…神界からも姿を消した時…君は目が覚め…世界は君をファラとして認知することになる…」


「……………これでいいか…」


「なんとも無謀なことをしたな、創造」


「あっ…そっか…君はこういう魔法は効かないんだったね」


「………本当にそれで良かったのか?」


「まぁ…俺は頭が悪いし…不器用だからさ…これしか…考えられなかったんだよね…」


「あぁ…あと…あの鎌」


ファラは地面に刺さった鎌を指差す


「あの鎌…ミュウにあげる…出来れば…都合を合わせて…欲しい…」


「………まぁ出来る限り合わせてやろう」


「っはは…ありがとう…それじゃ…行くよ…」


「………」


黒い空間がファラを飲み込み、その場には静寂だけが残った


「ん…んん…」


「ん…あぁ…」


「ふむ…起きたようだな…」


「あっ…オーディン…」


「あら…なんでここで寝て…」


「……………」


「して……よ…今日は領域の仕事ではなかったのか?」


「え…?あっ!忘れてた!」


「相変わらずは…鈍臭いというか…あら?泣いてるの?」


「……………え?」


何故か私の目には涙が流れていた


「……なんでだろ……とりあえず行ってくるよ!」


「………あぁ行ってこい」


「ついでにその鎌も持って行っておけ、お前のではないか」


「あっ!うん!」


そういいミ⬛︎ウは鎌を持って走っていった


「全く…あの子は…あら…オーディン、どうしたのそんな顔して」


「いや…何も…それより、貴様も天神の仕事があったのでは無いか?」


「えぇ、帰ったら急いで終わらせなければ…それでは」


そういい炎の中に消え、ヘスティオもその場を後にした


「……………阿呆め、そんなことをすれば…時が来た時…アイツは悲しむだろうよ…」


〜エンド・クロス〜

大魔森林


「………ハァ…ハァ…」


よし…無事に…着いた…ここなら…ゆっくり…


その場に寝転がり、そこらにある魔力を集め自身の身体に纏う


神界だとざらに魔力とかが混ざりあって扱いが難しいんだよねぇ…


「よし…治った」


さて…どうしたものか…この世界創った時にいざって時の保険を用意してたんだけど…ここに来てそれが仇になった…


まぁ…もう神界の認知は変えちゃったし…

戻ることもないか…気長に…この世界を…


その時、奥の方から爆音が聞こえた


「………襲われてる?」


とりあえず行ってみよっか


そういい傷が治って重くなった体を起こし音が聞こえる方へ走る


「…………あれって…」


奥には二メートル程ある獣に襲われている少女が居た


「………助けよっか…でもこの姿だと創造神ってバレちゃうからなぁ…変えるか」


そういい、身体は背が大きくなり胸が膨らみ、髪は腰まで伸び桃色に変色、目は青と赤のオッドアイとなり、声は女のように高くなった


さて…あっ…鎌は…そっか…あっちに…


ファラは刀を空間から取り出し、獣に向かって走っていった


「助けて!お父様!お母様!お姉様!」


少女の目の前に爪が迫る


「ちょっとゴメンね」


間一髪の所で獣を吹き飛ばし、少女の前に立つ


「ねぇあなた、十秒だけ目を閉じてくれない?」


「ひっ…はっ…はい…」


少女は目を閉じうずくまった体勢を取る


「よしよしいい子だね」


その少女の頭を撫で、安堵を与える


「さて…それじゃ…」


その場を離れ、木に打ち付けられた獣の前に立ち斬り伏せる


「……カッタ」


斬ったけど…あっさいなぁ…


獣を上空に吹き飛ばし、空高く打ち上げる、そしてその後、獣の上から地に向かって蹴り付ける


そして地に打ち付けられ、少し浮遊した刹那、刀を獣に向かって薙ぎ、吹き飛ばす


「……あと二秒…」


少女の方に蹴ってしまい、急いで首を切り、また目に見えない場所に蹴りつけ、少女を背に立つ


「………十秒…危なかったぁ…」


「あっ……あの…」


「ん?どうしたの?」


「あっ…貴方は…」


「あー…私?私は…」


どうしよう…名前決めてなかった…まぁこっちじゃ創造神の名前は言ってないから…いいかな?


「私はファラ、超絶美女よ!」


「………」


あれ?ちょっと滑った?おかしいな…ミュウに近づけて姿作ったからほんとに美女なハズなんだけど…


「あっ、そういえば君の名前は?」


「わっ…私…」


「私は…リズ…アイリズ…セルヴァ…」


「そう!いい名前ね!」


俺はこの時、何も知らなかった、今から十年後、自身の国を作る事も、この世界が、異様な事態になることも

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る