家族であそぼ!短編集

@daniel_k

将棋と僕

僕と将棋との出会いは小学4年生の夏でした。


その日は、おじいちゃんの危篤の知らせを受けて、家族で実家のある大阪に行きました。


おじいちゃんは正月に会うと、いつも笑顔で、周りにいる子どもだけでなく、大人までも照らしてくれる、太陽みたいな存在でした。


そんなおじいちゃんも年齢には勝てず、僕がお見舞いに行った時には、元気な頃の面影はなく、やせ細ったおじいちゃんがいろんな機械に囲まれていました。


おじいちゃんがいなくなる実感もわかないままに、結局、数日後にはお別れすることになってしまいました。


その後、おじいちゃんのお家で荷物を整理している時に、押し入れの奥から将棋盤がでてきました。お父さんが言うには、お父さんが子供の時は将棋くらいしか家族で遊べるものがなく、いつもおじいちゃんに負かされていた、とのことでした。


お父さんの、ちょっと打ってみるか、の一声でルールもわからないけど将棋を遊びました。


こんなに面白いゲームなのに、ふと盤面から顔を上げるとお父さんは泣いていました。「楽しくない?」と僕が聞くと、お父さんは泣きながら「楽しいから泣いてるんだよ」と言いました。


変なの、と思うと、なんだかおかしくて、笑いがこみあげてきました。気づくと、お父さんも一緒になって笑っていました。



その日からは、将棋が我が家を照らす太陽になりました。

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