四宮物語

@redintel

俺は深瀬一郎。四宮（しのみや）高校2年。普段学校では物静かな人間である。多少のユーモアはあるが、踏み込んだことを他人と話したがらないため、会話は特に盛り上がらない。みんな俺のことはまじめでたまに面白いことをいう陰キャだとでも思っているであろう。よって友達が少ない。しかしこんな俺でも仲良くしてくれる友達が数人いる。その1人が拓也。中学からの友達で、高校も同じところに進学した。彼といる時間はとても楽しいし、他人に対して自分をさらけ出せる数少ない場である。

「そんで俺美亜と隣の席になってさ」

「がちかよ、せこ。」

美亜というのはおれらの学校のマドンナ。顔、体どちらも申し分なく、彼女の隣の席になって嬉しくない人間はいないだろう。

「こっからが本題なんだけど、俺彼女に告白しようと思ってる。」

「隣の席になっただけで調子乗りすぎだろ笑」

「いやまじでさ、ちょっと話したんだけど、めっちゃ笑顔で話してくれるし楽しそうに聞いてくれるんだよね。」

このように女好きで調子乗りな拓也である。いつかハニトラに引っかからないかと心配している。

「そんで今告白の計画立ててるとこ。あ、もうこんな時間か。バイト行かなきゃだわ。またアドバイスもらいに来る。バイバイ」

まったく、中学の時からの猪突猛進ぶりである。彼が去った後、そのままカフェでぼーっと彼と話したことを考えていた。万が一彼が美亜と付き合ったらどうだろう。拓也と美亜が抱きついてキスをしているところを想像する。羨ましすぎる。俺にもそんな彼女がいたらなあ。そのためにはやっぱり拓也ぐらいぐいぐいいかないといけないのかな。でもそんな勇気ないしなあ。外の雨があじさいに降り注ぐのを見ながらそんなことを考えていた。あーおれのこと好きになってくれる美女いないかなあ。

次の日。昨日に引き続きどんよりとした天気で少し憂鬱な気分の中、水たまりを避けながら登校していた。

「無料講座やってます。どうですかー。」