あやかし祓いの契約婚

中小路かほ

序章

…ああ、なんでこんなことになってしまったのだろう。



重いため息をつきしながら心の中でつぶやくのは、まだ容姿にあどけなさが残る17歳の少女――西門椛にしかどもみじ



彼女は、最強のあやかし祓いとして名を馳せるほどの力の持ち主だったが、それはもう過去の話。


今は死んだ魚のような目をして、28歳も年上の結婚相手である中年男性をぼうっと見つめていた。



こうなるに至った原因は、椛が何気なくついた嘘。


だがそれが、想像の斜め上をいく展開にはなるとは思ってもみなかった。



以前のように、家族に笑顔になってほしい。


以前のように、双子の姉と仲いい姉妹に戻って、姉の幸せを願いたい。



そうなってほしくて、椛は嘘をついたというのに――。



そんな後悔する椛の前に現れたのは、紫黒色の短髪に黒い丸レンズの眼鏡が特徴的な蒼紫そうしと名乗る男。


よくも悪くも、蒼紫に本当の秘密を知られてしまったのをきっかけに、椛の人生が大きく変わろうとする。



「俺がこの家から連れ出してやる。その代わりお前の力、俺のために使ってもらう」



椛は秘密を守るため――。


蒼紫は椛の力を欲するため――。



利害が一致したふたりは、契約結婚を交わす。

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