第16話 ネクストア○○○○○

「お願い! ニアも助けてあげて!」


 アンネミラが頭を下げてきた。アカネとアンネミラに呼び出された俺は、再びアンネミラの部屋を訪れていた。


「助けるっつったって、お前たちふたりで裸に剥いて、尻の魔道具とやらをなんとかすればいいだけだろう?」


 助言してなんだが、酷い光景だと我ながら思った。


「そんなことできません! ニアを何だと思ってるのです!」

「あたしのときみたく、紳士的に抜いてあげてよ」


 アンネミラがそう言うと、隣に居たアカネが顔を赤くする。あまり人前で言うような話じゃないんだが、女同士の親友ってそういう話も平気なもんなのか?


「仲間を寝取らせる方がよっぽどどうかしてると思うんだがな……」

「あんた、そういう趣味なんでしょ? アカネだって悦ぶって!」

「なっ、なにを言うのです、アンネミラ! だいたい私とユキさんはそういう関係ではありません!」


 あーあー、バラしちまった。


「へっ? じゃあ嘘だったの!?」

「嘘というか……」


 親友に嘘を吐いたことを申し訳なさそうに唇を噛むアカネ。ただ――


「せっかく堅物のアカネに男ができたって喜んでたのに! ちょっとユキ! アカネもほだしてやってよ!」

「気にしてるのはそっちかよ!…………すまんが俺は、リントワールひと筋なんだ」


「リントワール? ユキって聖女様の知り合いだったの?」

「知り合いというかな……いや、聖女様って誰だよ!?」

「リントワールは地母神様の聖女の祝福を授かったの」


「聖女って偉いのか?」

「もちろんです。国王陛下と同じくらい」


「それで? どういう知り合いなの?」

「なんというかな……俺が探していた運命の相手だ」


「運命!? いいわね、そういうの。あたしも運命の相手がユキだったらよかったのに」

「アンネミラ、この男はやめておいた方がいいです」

「その……なんだ。すまんな」


「ときどき相手してくれるだけで見逃してあげる」

「まあ、責任は取る……」

「ですが、リントワールは婚約したんですよね」


 アカネがそう言うと、アンネミラの表情が硬くなる。


「…………リントワールはね、私たちを解放する条件で婚約したの。けど実際は、私たちがって彼女の前で嘘をいただけで、なにも終わってなかったのよ」

「アンネミラ……」


 俯いたアンネミラは弱々しく真実を告げた。



 ◇◇◇◇◇



 結局、俺はニアの寝取りも依頼された。とにかく、ニアは暴力が苦手で、もしかするとふたりで強引に尻の…………まあ、そういうことになったら、ニアの心を傷つけてしまうかもしれないから、優しく寝取って欲しいと言われた。


 ――言われたんだが、色々無茶苦茶じゃないか!?


 俺は三人が飲み食いしている所へ顔を出した。


「遅いではないですか、私が招いたと言うのに」

「これは失礼いたしました、アカネ様。こうなればこのユキ、アカネ様の足でもなんでも御舐めいたしますゆえ……」


「ギャッ! ちょ、ちょっと! ブーツを脱がさないでください! 足は舐めなくていいです! 席に着きなさい!」


 慌ててブーツを抑えるアカネ。何故かそれだけでアンネミラとニアも顔を赤くしていた。こういうプレイに耐性がないのだろうか?


「――ど、どうかしら、よくしつけてありますでしょう?」

「さすが、お嬢様の本領発揮ってとこかしらね?」


 慣れない役柄に噛み噛みのアカネを、アンネミラがサポートしていた。


「躾…………ですか?」

「ええ、この男、西のリガノでは手が付けられない男でしたの。それを私が躾けて、このように大人しくさせたのです。今ではもう、何をしても反抗いたしません」


「何をしても……ですか?」

「ええ、ニアも試してごらんなさい」


「…………じゃあ……靴を舐めて」


 そう告げたニアに、アカネが動揺した目を寄越す。いや、お前が動揺してどうする。


「承知いたしました、お嬢様」


 俺はニアの前に膝を突くと、ニアのブーツに両手を添えて、その先端に口づけし、舌で舐め上げた。瞬間、ぶるりとニアが震えたのを感じる。


「い、いかがかしら?」


 だから何でお前が動揺してるんだ、アカネ。


「あなた、強いの?」

「どうでしょう? タラスクの首を担いで、甲冑の篭手を握り潰すくらいなら簡単ですが」


 ニアへそう答えると、ニアの眼が俺に釘付けになる。


「ニア、そんなに気に入ったのでしたら、明日の朝までお貸ししましょうか?」

「えっ…………貸すって…………」

「アカネはそういう趣味もあるのよ、実はね。ほら、サンザだってそういう趣味があるでしょう?」


 アンネミラから聞いた話では、ロイエントやサンザたち男共はクラウトに協力してもらった見返りとして、ヤツに女を抱かせていたのだ。しかもタチの悪いことにクラウトは後ろ専門。後継者問題もあったらしいが、嗜好がかなり歪んでいる。れいのアレはもしかすると、クラウトのための貞操帯の意味もあるのかもしれない。


「…………うん。いいの?」

「もちろんです!」


 そこだけは言い切ったな、アカネ。






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