第9話 帰還

「え〜半年めっちゃ短かったね!もっといたかった〜」


「うん、でもやっぱり現代の自分の家が一番落ち着くかな。」


「そういえばどうやって帰るの?」


「紙には金森さんの指示に従ってって書いてあったけど、まあ部屋で待ってればいいんじゃないかな?」


「そっか。てか、バンドメンバーの2人とは最後に合わなくてよかったの?」


「うん。私そんな友情に熱い人じゃないから。」


「え〜友情とかじゃなくって急にいなくなると可哀想じゃない?」


「でもバンドは文化祭で私がいられるのは最後ってちゃんと言ったし、大丈夫だよ」


そんなことを言ってると金森さんが部屋の扉を開けた。


「お2人とも帰りの準備はできましたか?」


「はい!大丈夫です!」


「それでは帰る方法を説明します。帰る方法はこの装置を頭に装着してもらいます。あとはこちらが設定をするのでご心配なく。」


真凛が手を挙げる


「一つ質問してもいいですか?」


「はい、どうかなさいましたか?」


「これってお土産ってどこまで許されるんですか?なんか過去改変がどうとかって話があるので、未来改変みたいなのもあるんじゃないかなって思って...」

「ちなみにこれなんですけど...」


そう言って真凛はバッグからプリクラ写真のようなものを取り出した。

そこには真凛と青山さん、堀江さんの3人が写っている


「これ、写真に録音できるってやつなんですけど、これって未来の技術ですよね?これってどうですか?」


「...それって文化祭でもらったチェキの写真?」


「そう。写真だけでも持って帰りたいなって思って...」


すると金森さんは明るい口調で答える


「ああ、それならご安心ください。未来のものを過去に持って帰ってもあまり歴史改変などの影響は少ないのでそれくらいだったら大丈夫です。流石にチェキ本体はダメですけどね」


「え!ほんとですか?ありがとうございます!」


質問を終えたあと、金森さんは金属でできた帽子のような機械を取り出した。


「それでは早速装置を起動して元の時代に帰ってもよろしいですか?」


その言葉を聞いた時、私は胸の奥がざわつくのを感じた


「...あの!私やり残したことあるんでちょっと行ってきます!」


そう思った時には私の体は動いていた

今の時間は12時くらい。学校では昼休みくらいの時間だ。あの2人ならいつものあの場所にいるかもしれない。私は学校まで全力疾走する。すぐに息が切れちゃったけど体を奮い立たせて走った。

学校について校舎に入って私は軽音部のスタジオに行く。すると中から莉里先輩と灯ちゃんの話し声が聞こえてきた。


「...あの!ちょっといいですか!」


「...遥?文化祭が終わったら行くんじゃなかったの?」


灯ちゃんが少し驚いて私の方を見る


「...今日出発です。でも、最後に挨拶しなきゃと思って...」


「ちょうど良かった、これあげるよ。」


そう言うと莉里先輩はさっき真凛が持ってたみたいな写真を渡してきた。

その写真にはあの日、文化祭でライブをやってる時の私たちが写ってた。


「これって音が入る写真ですか?」


「そう、よく知ってるね。いいでしょ、録音時間は短いんだけどさ、サビくらいだったらまるまる入ってるよ。」


「ありがとうございます!私、莉里先輩と灯ちゃんとバンドできて楽しかったです!」


「...私も遥とバンドできて楽しかったよ。まあまた会えるとかは言わないけど、またね。」


「それじゃあ、行ってきます!さようなら!」


そう言って私は寮に向かってまた走り出した。


「おかえり!何してきたの?」


「...ちょっと、バンドメンバーの人たちに挨拶しなきゃと思って...」


「そうなの?やっぱ挨拶しといた方がいいよね〜」

「そうそう!金森さんについでに色々聞いたんだけどさ、こっちから現代に送る時は荷物の大きさとか気にしなくていいんだって!って言ってもそんな大きい荷物ないんだけどね〜」


「それでは装置を起動してよろしいですか?」


「...はい。大丈夫です。」


「では、この装置を頭につけて座ってください。」


そう言って金森さんは金属製の帽子のようなものを渡してきた。その帽子を私と真凛は被ってベッドに座った。


「それでは装置を起動させていきます。星野さん、高橋さん、さようなら。また会えるといいですね。」


そう言って金森さんはリモコンをいじって装置を起動させた。次第に私は眠くなっていってそのうちベッドに寝てしまった。


「...遥、起きて」


「...ん?」


「帰ってきたよ!ここ現代だよ!」


辺りを見るとそこは看護室のような場所で私はそこのベッドで寝ていた


「お2人ともお帰りなさい。半年間の未来の旅行はいかがでしたか?」


突然話しかけられてびっくりしたけど、未来に行く時に私たちを案内してくれたあの人がいた


「はい!もうめっちゃ楽しくて、もっと未来にいたかったです!」


「それは良かったですね。これから先、もっと未来への旅行がメジャーになるといいですね。」


「はい、私もすごい楽しかったです。あの、もしまた未来に行けることになったら、同じ世界線の同じ時期に行けるんですか?」


「それは現在研究段階でして、今はまだ正確な世界線や時期は指定しにくいのですが、将来的には行ける可能性が高いそうです。」


「そうなんですか?めっちゃ楽しみです!ねえ遥、おんなじ世界に行けるようになったらまた行こうよ!」


「うん。私もいきたい。」


時間は6時くらいで日が落ちかけていた。久しぶりの現代を歩いていると、懐かしい感じもするけど、未来の雰囲気に慣れちゃって少し違和感もある。

家の前に来るとちゃんと帰ってきたって実感が出てきて、なんか感動する。玄関の扉を開けると電気がついていて、家の奥から人の気配がした。リビングの方へ行くとお母さんがご飯の準備をしていた。


「...お母さん、ただいま」


「ハルちゃん?帰ってきたの?」


私の声を聞いた途端、お母さんはこちらに振り返り、私の方へ駆け寄ってきた。


「...おかえり」

「...そっちはどうだった?楽しかった?」


「うん、すごい楽しかったよ。話すこともいっぱいあるよ」


「...じゃあ、今日はご飯を食べながらゆっくり話そうか」


そう言うお母さんの目元には涙が浮かんでいた


「そういえばお母さん、こんな時間に帰れるんだね。今日は早いの?」


「ハルちゃんが言ってからすぐね、仕事に余裕ができて早く帰れるようになったの!だからこれからハルちゃんとご飯食べられるようになったの!」


「そうなんだ、嬉しいね。」


「さ、ご飯の準備急いでして、早く食べようか」


「私も手伝うよ。作りながらゆっくり話そうよ」


「そうしよっか!」


「今日のご飯って何?」


「偶然だけど、ハルちゃんの好きなカレーだよ!そういえば行く前もカレー食べて行ったよね」


「お母さんのカレー、久しぶりに食べるな。楽しみだよ」


それから私とお母さんは一緒にカレーを作りながら私が未来でどんなことがあったかを話しました。半年分の思い出は話しきれないくらいあるけど、全部話したいと思いました。

その日に食べたお母さんのカレーの味は、とても懐かしくて、これからの生活を応援してくれるような味がしました。


「お父さん...帰ってきたよ。お父さんのギターで文化祭でライブしたり、すごい楽しかったよ。」




そして私はお父さんの仏壇のお供物の横に莉里先輩からもらったライブの写真を置きました。

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