帰り道
あにゃ
帰り道
16時、学校から帰る時間。
だんだんオレンジに染まっていく空と、夏特有のもくもくした大きな雲。
夏を感じさせる蝉の声に、生暖かくも少しは涼しい風。
長袖ジャージと合わさって、暑いような涼しいようなよくわからない状態が続く。
「ふんふふ~ん♪」
毎日、一人で楽しく帰っている。
この時間が、1日の中で一番好きだった。
ずっと続いてほしいと思っていた。
けれど、そんなこともなく……
あっという間に、卒業式の日。
最後の制服に身を包み、朝の空気を吸いながら歩く。
3年間毎日見た景色が一層輝いて見える。
最後の日くらい、少し遠回りをしてみようかと考えていたうちに、学校に着く。
そこからは一分一秒があっという間に感じた。
卒業式はもう終盤。最後の合唱に差し掛かっている。
指揮者が前に出て、ピアノの伴奏が始まる。
泣きすぎてきちんと歌えない人が数名いる中、後輩達にきちんと届けれるように、今までで一番丁寧に歌った。
式も終わり、お母さんと一緒に帰ることとなった。
お母さんは、何も言わない。毎日、一人で歩いていた時と同じようにしてくれていた。
心の中で感謝しつつ、最後の通学路を踏みしめながら歩く。
4月から始まる、新しい生活。
楽しいことが沢山待っている。
でも、今くらいは。
最後を、楽しんでもいいかな。
帰り道 あにゃ @anya_ma0703
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