アーメン〜孤児院出身メイドの最期の祈り〜

宵裂 ツバメ(旧:琥珀)

第1話

「おはようございます、ご主人様。朝食は何にいたしましょう。」

「おはよう、メリア。そうだね、いつものパンとスープをお願い。」

「承知いたしました。」


 今日もご主人様は、質素な朝食をお取りになられるようです。メリアが孤児だった頃よりはいいものだけど、仮にも第二王子として生まれ、暮らしているこの方が食べられるようなものではないのです。


メリアが雇われる前はもっと王子様らしいお食事だったそうだけど、メリアの記憶の中ではずっとこんな感じです。


「ルキアレム殿下、少々お時間よろしいでしょうか。」

「ああ、クレイグどうした?」

「先日のスラム街の件ですが、えっと…」


あ、これはメリアが邪魔になっているのでしょうか。ご主人様のお仕事の邪魔はしたくないので、朝食の準備に参りましょう。


「私はこれで失礼いたします。」

「ああ、また後で。」

「それでは、スラム街についての…」


御主人様はいつも難しい話をしています。でも執事のクレイグがスラム街がどうのこうのと言っていましたね。また平民の暮らしを良くしてくれようとしているのでしょう。


メリアは、そんなご主人様が大好きです。


「メリアねーちゃんみっけ!」

「わっ!びっくりしたあ。」


エルグラムが突然抱きついてきました。相変わらず人懐っこくて可愛いですが、廊下を走ったのは見過ごせません。


「エル?廊下は走っちゃだめだよ?メイド長怒ったらすごーく怖いのは、エルも知ってるでしょ?」

「むぅ、メリアねーちゃんはつれないなあ。そんなんで楽しいの?」

「そりゃあもう!ご主人様にお仕え出来るだけで十二分に楽しいよ!」


エルは何を言っているんでしょう?こんな当たり前の事を聞いても何にもならないと思いますが。


「はぁ〜。そうだ。メリアねーちゃんに聞いたところでだった。聞いた私が馬鹿だったね。」

「バカにしてる?」

「いーえ全く?」


こうは言ってるけど絶対馬鹿にしてるだろうから、少々お仕置きをしておきました。まあ、仕事もまだ残ってたからすぐに離しましたがね。


仕方なく離してやると、「殺す気か!?」と言われてしまいました。だからさっきのお返しと言わんばかりに、「いーえ全く?」といってやると、悔しそうに唇を噛んでいました。


「ちょっと!廊下は走っちゃだめだって!」


走り出したエルにそう言うと、べーっと舌を出しながら走り去っていきました。はあ、本当に嵐のような人ですね、エルは。そのうち何かやらかしそうで、見ているこっちがヒヤヒヤします。

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