第2話 親愛

俺は困った、実に困ったさ


懐かれたり仲良くなることはいいことなのだが、ここまでとは想定外だ。


飯の時も人間校舎まで乗り込んでくる始末、流石に先生からは注意をされた、そりゃそうだ。本来は人間校舎にはシルバは入っては行けない。

そうそう、「Silver Variation」と呼ぶのは長いので略して「シルバ」と呼ぶことにした。

でもそれは俺がこう呼ぼうって思ったからそう呼んでるだけで普通に会話とかで出したら通じないので注意だ。

で、話に戻るがあいつはなぜ人間を怖がらない、普通のシルバは自分から人間と関わるなど本来はしない。

嫌っているような事ではなく苦手と言うべきか、だから三空が言っていたコミュ障はある意味正しかったのかもしれないな。


「流石に人間校舎まで来るのはやめてくれないか?同じシルバ達と仲良く昼飯でも食べてくれよ」

俺頼み込む、来て欲しくない訳じゃない、むしろ一緒いた方がいいとは思っているが学校は安全だし友達と仲良くしてもらいたいものだ。てか俺が怒られるから来て欲しくない。

「え〜僕はもっと龍希君と一緒にいたいなぁ」

「誤解を産む言い方はやめろ、変に茶化されるのは嫌なんだ」

ほっぺを丸ませて怒ってますよ!と出してるかのようなわかりやすい怒り方だ。


「龍希君」

「どした?」

「僕は君と同じところで授業を受けたい、何とかしてくれ」


何とかしてくれって言われても……どうするんだよ

このことを先生に説明したが、戦闘には必要ないと一点張りで交渉に持ち込むまでもない、やばい

なぜヤバいかって

「あいつキレると暴走するからなぁ」

ヤミと出会って、仲良くなってから同じシルバのやつも知らなかった情報がゴロゴロと出てきた。

俺が昼食に屋上に行くのを忘れていたら教室までカチ込んできて窓から放り投げだされたっけ。

怒って泣きだしたら鼓膜破れそうになったし、壁殴ると壊れるし。

見た目も性格も女の子でもやっぱ生物兵器なんだなってのがわかる、また複雑な感情に戻される。

「先生に伝えたが、無理だ。俺側からヤミに会いにいく分には許された。だから俺がそっちに行っていいかそっち側の先生に聞いてくれ」

「わかった!!!!」

これ程にないくらい眩しい笑顔が飛んできた、目が失明しそうだ。


あまりの笑顔の眩しさに目を奪われていたらいつの間にか俺の前から消えてシルバ校舎に走るヤミの姿が見えた。

早すぎんだろ……

俺はそう思った、なんせ校舎との間には校庭とプールと体育館と特別トレーニング施設の入ったビルがありその隙間を糸を縫うかのように廊下が通っている。

その距離約800m。あいつはもう着いてる。

「なにあいつ50キロくらい出てんのかよバケモンがってぉぉおおおおお!?!?!?!?」

俺は驚愕した、なんせあいつはもう戻ってきた、しかも嫌な予感がする笑顔だ。

俺がそっち側に行けるかとは全く思ってなく交渉してみようと思っただけで冗談的に言ったんだけど、もし通ってしまったら明らかに俺に入らないトレーニングの数々、勉強の内容は変わらないが体育がバカにキツくなる。

あとシンプルに女子しかいないから気まづい!!!!!

アイツら(他のシルバ)は許してくれんのか?先生が許したってアイツらが許さなかったら意味が無いだろ。

そんなことを思ってると全速力で走ってきたヤミが汗ひとつかかずに息も切れずに前に来た。

「いいって!!!」


あーそうかダメだったか…………ん?


「いいって!!!」

へーいいのか、へ?

俺がシルバ校舎に行くの?終わった地獄のトレーニング生活の始まりだ。

てか俺はトレーナーだぞ!?トレーニングなんて必要ないだろ!?

「いいえ、トレーナーとして、ヤミさんや他生徒のお手本になる行動をしてください。」

「了解であります」

俺は上司には弱かった、てか媚び売らないと終わると知っていたから。


「いい?上司の靴は舐めれば舐めると気に入られるのよ?」

親から間違った方向の英才教育を受けていたおかげか。


「ということで、今日から同じところで授業を受けることになった。みんなの見本として先生してくれる。」

えー?そんなこと言ってないですよ?

「龍希トレーナーだよね!!よろしくね!!」

元気にその場で立ち上がって話しかけてきたのは青い髪の綺麗な顔の女の子。

「あっ、三空のSilver Variationのアオイちゃんだよね、よろしく。」

「アオイですー!!!!よろしく!!」

まるで転校初日かのように机の周りにはシルバが群がっている。

「身長高いね!!何cm?」「189だよ」

「どこ住んでんの!?」「シナ区の東だよ」

「好きなゲームある?」「リンパスバンカニーかな」

「ヤミちゃん可愛い!?」「あーうん。」

きゃぁぁぁ♡♡///


なんなんだこいつらは女子高生か、、いや女子高生だな。

「ん!!」

おっと、体制を崩しそうになった、突然頭の上にヤミが乗ってきてビックリした。

「なんだヤミ、何拗ねなんだよ」

そうすると俺の体の前に来てハグをする

「ん!!!」

え、えぇ……どうしよう。

「誰か、助けてくれないか?」

するとみんなは後ずさりしていく、なんで?

「ふふっ可愛い!」

みんなこれは冷笑ではなくまるで親子を見るかのようなホッコリした笑みだ。

俺とヤミでなにを想像してるんだこいつらは。

「おーいお前ら、次は訓練場集合だぞ〜早く来い」


俺はシルバのように素早く動けないので先に行く必要がある、あと体育着に着替えるので俺だけは先に行く。

と思っていたのだが、速攻で着替えてきたシルバ達が俺の着替えを覗いてくる

「………………なんなんだお前ら」

気づかれていないと思ってたシルバ達はすぐに顔を引っ込めて速攻で走ってトレーニング施設に向かった。

全く、よく分からんな


「それじゃあ、あの的を撃ち抜いて下さい。」

「はーい」「はーい?」

銃を持たされてないのにどうやって?


バン!バン!


指の先が開き弾丸とは別なゴム弾のようなものが撃たれた、やはり生物兵器なんだなと毎回実感する。


「ねぇ」「おっヤミ。」

ヤミがいつの間にか肩まで昇って来ていて肩車する形になる。

「龍希君も撃ってよ」「いやいや、無理だよ」

いつもの会話をする、こんな冗談を言われ、それに付き合うのが俺の日課になりつつある。

「こうやって、」「こう?」

指を銃の形にして的に向かって向ける

「で、指先に力を入れて。」

こんなんで撃てるわけないだろただの人間が、そろそろ面倒くさくなってきたな、俺が人間だと改めて伝えるべき?いやいや、わかってて楽しん出るだろうし、バカ正直に注意したら笑われるだけだろ、ヤミの事だそんなこと考えてるんだろ。

「撃て!」「はぁい!!」


バンッ!!!!!!


俺の指先から弾丸が発射された。

「ふぇ?」

………………………………「出たね」

「うん、撃った」「弾丸、出たね」


ポンと肩に手を置かれた。金髪先生だ

「君、日本政府に行かないか?」


「気持ちはわかります、待ってください。」

俺の人生はちょっとおかしな方向に進みつつある。

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