私は、アルマンデス星人に恋をしている。

　彼はーーーいや彼女？かもしんないけど、彼って事にしておきます！私が彼と交信したのは、『ポクトン』という国内産のSNSアプリだ。

　

　現代は大SNS時代！

　

　そんな中、私たちのポクトンは大手に敗れ、リリースから年月が経ち、現在の利用ユーザーは1000人ほどの知名度の低いSNSである。

　私は恋も仕事も上手くいかず全ての人間関係をリセットした。誰にも告げず人知れずに、知らない街に引越し、全てのSNSをアンインストール。

　でも寂しくなって、ついついSNSやりたくなってきちゃった。SNS依存症の自分がにくい。

　とはいえ、絶対に今までのものとはスッパリ縁を切ると誓った私は使ったことないSNSアプリを探した。

　そうして私はむかし流行ったがいまでは知名度の低いこのポクトンに出会ったわけだ。

　ユーザー名は　ヒナ　っと。

　私がポクトンでポクポク過ごすこと1週間。突然知らない人からダイレクトメッセージが届いた。

　

＜　ぼくはアルマンデス星出身のマップィリェン　)

＜　今さ、旅行帰りの道中で銀河系を航行中なんだけど、とっても暇なんだ　)

＜　ヒナ、話し相手になってよ　）

メッセージの主のアカウント名は、クラゲの絵文字1つ。

フォロワーは………え…多くね！？

古参？？！？！

桁数は

いち、にい、さん、しい、ごう、ろく……

なな……、はち………?

いやいや、私的ポクトン史、史上見たことないよ！？約3.1億のフォロワーってどういうこと！？

　今のユーザー数なんて、千人いるかどうかレベルのこのアプリで！？

　超流行っていた時代の大物ってこと？？？

　そんなすごい人が私にDM？

　何、これ？？宇宙人になりきってる設定ぽいし、急にDMからだし、古参がやるポクトン流の新人いびり？

　…………

　いいじゃん？相手になってやんよ！

と酒の入った深夜テンションでそれはノリッノリで返信して楽しくポクトークした。

　会話が面白く気づけば、深夜2時までポクポクしてしまった。すると彼、マップィリェンからこんなメッセージが届いた。

＜　ね、ヒナ、もし良かったら、)

＜　ぼくのポク友になってくれない？　)

　私の返事はこうだ。

(　もちろん、てかもうマブダチっしょ！　＞

　それから毎日ポクトンでポクポクして、3日後には私は、彼、マッピー(文字で打ちづらいのであだ名をつけた)にもう恋に落ちていた。

　なんてちょろいんだ私！

　

と自分に思いつつ、それから1ヶ月たった今日も彼とポクトーク♡

(　マッピー、スタバの新作飲んだ？　＞

と送る。

秒速で彼から返信が来る。

＜　うん。トッピングのチョコとカフェオレの相性が最高だったよ　）

私も即レスポンス。

(　宇宙船でどうやって飲むの？VberEatが宅配してくれるの　>

(　マッピー、ずっと宇宙船の中なのにそんなことできるん？🤣🤣🤣🤣　＞

＜　宇宙船でレシピを再現して飲んでるんだ　)

＜　会社をハッキングしてレシピをとってくるだけださ、簡単だよ　)

　マッピーはあれからも一貫して宇宙人であると言って振舞っている。一週間前の私はまだ、ロールプレイという、なりきりごっこかと思っていた。

　しかし、ボロの出なさ、何より彼の独特な話調子に、私の勘はコイツは宇宙人に違いない！とはっきりと結論を出した。好き！！！！

　宇宙人との恋なんて、とってもロマンチックでしょう！と弟に語ってきかせてやりたいのをぐっとこらえて、私は宇宙人を狙うアメリカ軍にバレてはいけない、秘密の恋を楽しんでいた。

　でもそんな順調な私達の関係を知り目に、ポクトークは不穏な動きを見せていた。

　課金アイテムの購入停止だ……｡これに多くのポクトークユーザーは戦慄し、薄々みんな察し始める。

　そして、信じたくない知らせがついにポクトーク運営から出された。

【サービス終了のお知らせ】

（　マッピー、ほかのSNSやってない？私マッピーと繋がってたい！マッピーがやってるSNSインストールするよ　＞

　いつもと違ってマッピーからすぐ返信が来ない。不安が募る。

　

＜　ごめんよ、ヒナ　　ぼく このアプリしかできないんだ　）

（　いつものハッキングとかで何とかできないの？？？　＞

＜　大手のSNSって実は、奴らの監視がキツイんだ……　）

　そんな……マッピーと私はここでお別れなの？私の恋もう終了なの？！嫌だ嫌だ！

　絶対に嫌！こうなったら、覚悟を決めてアレをいうしかない。

＜　ねえ、まっぴー……アプリがサ終する前にさ　）

＜　リアルで会わない？　）

　どうしよう！言っちゃった！嫌がられるかもしれない。

…………

　全然返信返ってこない。もう返信返ってこなかったらどうしよう。

　お願い返ってきて。

　その日は一睡もできなかった、そして返信もなかった。