第2話 新しい教室、はじまりの声
「それじゃあ、そろそろ始めようか」
教壇に立つ担任、
三十代半ばほど、きちんとしたスーツ姿。落ち着いた声は浮ついた調子もなく、それでいて堅苦しさもない。
その雰囲気に、ざわついていた教室が自然と静まっていく。
「名前と簡単な一言でいい。順番に、前の席から頼むぞ」
緊張が少し走る中、最初に立ち上がったのは椎名沙月だった。
「椎名沙月です! 特技は、誰とでも仲良くなれることかな? 二年も楽しく過ごしたいです! よろしくお願いします!」
ぱっと咲くような笑顔。
その明るさに教室が一気に和み、自然と拍手や笑いが広がった。
続いて、
姿勢が良く、凛とした笑みを浮かべるだけで場の空気が華やぐ。
「水瀬瑠奈です。雑誌のモデルをしています。……でも、学校では普通の生徒です。よろしくお願いします」
それだけの一言で、女子から「すごい!」と憧れ混じりの声が上がり、男子も小さくざわつく。
けれど瑠奈は気取らず、あっさりと席に戻った。その自然体が、逆に彼女を特別な存在にしていた。
三番目は神谷悠斗。
ひらりと手を挙げ、にこやかに笑って立つ。
「神谷悠斗です。部活はバスケ部。うるさいかもしれないけど、そのときは多めに見てください。よろしく」
軽快な一言に、笑いが起こり、教室の緊張はさらにやわらぐ。
「
「
森下は気さくに、美咲は少し恥ずかしそうに。
短い自己紹介ながらもしっかりと個性を残した。
そして──俺の番が来た。
足元が妙に重く、心臓の音が耳に響く。
「塩見怜です……えっと、特技は……特にはないんですけど……よろしくお願いします」
一生懸命つなげたつもりの言葉は、どこか頼りなく響く。
クラスの空気が一瞬止まり──次の瞬間、数人から小さな笑いが漏れた。
馬鹿にされたわけじゃない。ただ「ちょっと空回りしてるな」という柔らかい雰囲気。
それがかえって恥ずかしく、頬が熱くなるのを感じながら席へと戻った。
続いて立ち上がったのは
背の高さと整った顔立ちに、後方から女子たちの小さなざわめきが起こる。
「一条翔真です。バスケ部に所属しています。今年はもっとチームに貢献できるよう頑張ります。よろしくお願いします」
誠実で真面目な言葉。
その落ち着いた声が、場の空気を自然と引き締めた。
翔真は余計なことを言わず、静かに席へ戻る。その姿勢が、彼の人気の理由を示していた。
最後は、戒能理央。
「戒能理央です。……よろしく」
それだけ。
だが必要以上の言葉を拒むような簡潔さは、逆に強い印象を残した。
「うん、みんな個性があっていいな」
三浦先生が小さく頷き、まとめるように言葉を添える。
「それぞれの良さを生かして、一年を過ごしていこう」
こうして二年B組の自己紹介は、幕を閉じた。
波風のない日々を願った俺に、彼女たちは騒がしすぎる Soluto @Soluto_16
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