第16話:報告
──数十分後、生徒会室にて。
「そうかい。輝がそう言ったんだね」
「はい」
「報告ありがとう。もうこれで桜さんは寮に戻りなさい」
「はい。……あの、学園長」
「ん?」
私は何を言うべきか迷った。未来空先輩の怯えた顔が脳裏に焼き付いている。
あの先輩の顔の真相はなんなんですか。そんな事、聞けない。でも──
「未来空先輩のご両親は、今どこにいるんでしょうか……」
学園長は黙って私を見つめている。
「私、未来空先輩の事、もっと知りたいです。先程、未来空先輩は私を助けてくださいました。余計なお節介だとは分かっているんですけれど……。似たような境遇だから、放ってはおけなくて」
すると学園長が優しく微笑んだ。
「彼が私と暮しているのは聞いたかい?」
「はい。未来空先輩が、学園長は育ての親だって」
「そう。彼を引き取ったのは彼が中学三年生の時でね」
中学三年生。
そういえば、未来空先輩の能力が開花したのも中学三年生の時だってまい先輩が言っていたような──。
「彼は予期せぬタイミングで能力が開花してしまったんだ。ご両親は彼の能力を見て、彼を手放した」
「え……」
「この先は彼から直接聞くといい。きちんとその時期が来たら教えてくれるだろう」
「……学園長。最後に質問が」
「なんだい?」
「未来空先輩と仲良くなるコツとかありますか?」
未来空先輩のことならば、育ての親の学園長に相談するのが一番いいだろう。学園長はクスリと口角を上げると、こう言った。
「それなら問題ないよ。君が君のままでいるだけでいい。彼は君のような女性に弱いからね」
私は何故か顔が熱くなった。不意に未来空先輩に抱きしめられた事を思い出したのだ。
本当は、凄く優しい人なんだろうな。咄嗟に人を助けるなんて、そんな簡単に出来る事じゃないし。
そういえば、明日もパトロール活動はあるみたいだ。
未来空先輩、明日も一緒にパトロールしてくれるといいな。
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