定期点検のご案内

ようすけ

第1話

わたしは馬鹿だ。パチンコで何円も負けた。

ある日も、わたしは今日こそは負債を取り戻すだろうという予測でパチンコ店へと出かけた。

その途中で横断歩道を渡れない老年の女と談笑をする。

この女は自分が早く歩けないから横断歩道を渡れないのだとわたしに説明をしたのだったが、大当たりを間近に控えたわたしにそんな戯言が通じるはずが無かった。

「そうなんですね」とわたしは関心した。

「そうなんですよ」と老年の女が笑った。


パチンコ店では、出ない台にばかりお金を使った。

途中で店長らしき男にこの日の釘の設定を聞く。もちろんそんな事は教えてくれなかったが、ヒントのようなものを得られるかもしれないと考えたのだ。

「じゃんじゃんばりばりですよ」と店長のような男が答えた。

「じゃんじゃんばりばりですか」とわたしも応じる。

その後で、わたしはその男が言った「じゃんじゃんばりばり」という言葉の意味を考えるのだったが、どうもいい意味にしか捉えることができなかった。

そこで、わたしは喫煙所に立った。

玉のたくさん出る台に座っている限りはそういった小休止は期待値の損失でしかないのだが、誰かがたくさん負けている台にこそチャンスが眠っていると考えているわたしにとっては、そうやって小休止をしてわたし以外の誰かが金を使うのをただただ待つしか無かった。


喫煙所でも、わたしはとある人物を聞いてこの日の点数を聞いてみた。

「八点だね」とその男は答えた。

「そうですか」とわたしは納得したように笑った。

これは非常にまずかった。思いつきでそのような会話を見ず知らずの他人と交わしたのだったが、店に期待値があると思わせて大量のお金を使わそうとする香具師がいると誰かからの噂で聞いたことがあったのだ。


またわたしは別の人物に声をかけた。一度、誰かに声をかけたら歯止めが効かなく鳴るのがわたしの悪い癖だった。

タバコを吸いながら、わたしは最初に話をした男に対して遠巻きに顎をしゃくった。

「覚えておきなよ、あれが噂の香具師だぜ」

「へえ、あんた鼻毛がたくさん出ているぜ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

定期点検のご案内 ようすけ @taiyou0209

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る