「あまがみのみこと」「並木道」第五章:時空の鍵と時を超えた奇跡

自分の家の寝室で「みこと」は目を覚ました周囲には


いつも見慣れた家具があり窓の外に広がる夜の帳と静寂の中で穏やかな時間を感じていた半分は目覚め半分は


まどろみを感じ夢に沈んでいる様な感覚だった


どこか現実味が薄い全ては、いつもと変わらない


はずなのに、しかし彼女の耳には遠くから聞こえる不思議な声が響いた


それは時折かすれ時折鮮明になる誰かの言葉の断片だった


そのとき耳に遠くから声が届いた


かすれては鮮明になり途切れながらも切実な響きを持つ声


「……力が……足りない……扉の向こうに……薬草が……」


「……これは夢?……」


「みこと」はウトウトしながら枕元のスマホに手をかけたスマホの明かりが「みこと」を照らし


それが夢ではない事を物語っていた湖の底にいる少女の姿が鮮明に浮かび上り


少女は悲しげな顔で「あなた達との出会いが私に新たな光を与えてくれました」と微笑んでいる


その声は彼女の知らない誰かのもの。だが不思議なほど胸に迫る切実な願いのように救いを求める叫びのように聞こえた


すると、その瞬間みことの頭の中に湖の底に佇む少女の姿が鮮やかに浮かんだ。水に揺れる銀の髪、悲しげな表情それでも微笑みを浮かべてこう告げる


「……あなた達との出会いが私に新たな光を与えてくれました……」


みことは息を呑むその次の瞬間に遠くで響いていた声が一つに重なり合い


まるでコンピューターの起動音のように響き低い音へと変わった


その音はまるで過去と現在を二つの世界から同時に発せられている


かの様だった「みこと」の意識は、その響きに導かれ遠い時空の狭間へと誘われ引きずり込まれていった


気がつくと彼女の意識は過去と現在の二つの世界を繋ぐ奇妙な夢の中にいた


目の前には宙に浮かぶ巨大なスクリーンがあり


まるで過去と現在を監視し操作するための遠隔コンピューターの様だった


そのスクリーンには湖の底にいる少女とクリスタルの扉の前に立つ過去のアッシュの二つの姿が映し出されている


「アッシュ?……」


思わず名を呼ぶ、するとスクリーンの端に淡い文字が浮かび上がった


【時空神】

『過去の「アッシュ」と現在の並木道の「みこと」とメライガの星の「みこと」「あまがみ」「リーネ」「アッシュ」の力を共鳴させるクリスタルの扉のロックを解除する』


「時空神?……共鳴?……」


「みこと」は思わず呟く、するとメッセージと共に彼女の身体から微かな光があふれ出し放たれる


それはスクリーンを通して過去の「アッシュへ」と流れ込み彼の剣を包む同時に湖の底の少女の言葉が再び「みこと」の意識の中で反響していた


「……あなた達との出会いが私に新たな光を与えてくれました……」


その言葉がトリガーとなり過去のクリスタルの扉が輝きを放つ


ゆっくりと長い時を超えて閉ざされていた扉が開き始めた


「みこと」は確信する


「……私が時空の鍵……」


奇跡の瞬間をただ見つめながら自分が時空を越えた奇跡の鍵を握っている事を自覚し戸惑い自分の役割を初めて理解したのである

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