悪夢日記。-あくゆめにっき

らいむるしろっぷ

おとしもの

 ある細い道路の真ん中に、小さな黒いノートが落ちていた。

 名前は書かれておらず、ところどころが茶色く汚れていた。しかし、中のページは真っ白で、どこをめくっても、白紙のままだった。


「ん? なんだろう」


 一人の少女が、道路にぽつんと置かれていた真っ黒なノートを拾い上げた。

 その少女は、ノートの表紙についていた土のような汚れをハンカチで拭き取った。


「落とし物かな?」


 汚れが目立たなくなったノートを開く。何も書かれていない、真っ白なページが彼女の瞳に映る。


「まだ使われてないんだ」


 少女は、ペラペラと次のページにめくっていく。しかし、すべてのページを見ても、ほんの小さい文字でも見当たらず、ただただ白い紙が出現するばかりだった。


「……交番に届けるっていっても、近くにないし」

「もう、取っておこうかな」


 彼女が持っているそのノートの、使用者は、少女──西村にしむらさくらになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る