Life is (not) beautiful?

これ

第1話


 銀色の刃が、天井照明を浴びて輝いている。俺はその刃を自分の左手首に当てた。すっと右手を自分のもとに引き寄せる。すると、一瞬鋭い痛みが走り、俺の左手首からは生暖かい血が流れ出た。想像していたよりも黒ずんだ血が床に一滴、二滴と垂れる。


 俺はそのまま左手首を動かして、浴槽にぶら下げた。浴槽にはいっぱいに水が溜められていて、冷たい感触にぶるりと身震いがする。それでも、それはほんの一瞬のことで手首を水に浸し続けていると、だんだんと気持ち良くなってくる。手首から流れ出した血で、浴槽が赤く染まっていく。


 俺は、左腕を上げることはしなかった。俺はもう生きていても仕方ないのだ。何もできないダメ人間は、とっとと死ぬべきだろう。


 俺はしばし正面を向き続ける。目はどこを見るでもなく、壁の辺りに向く。そうしていると、徐々に眠気にも似た感覚が押し寄せてきて、俺は目を瞑った。遅れて頭から全身に鈍い痛みが走る。


 俺はその痛みを何もできないダメ人間のまま、三〇年も生き続けてしまった罰だと受け入れる。ダメ人間は苦しんで死ぬのがふさわしいのだ。


 そのまま俺がじっと手首を水に浸し続けていると、少しずつ痛みは引いていき、頭はモヤがかかったようにぼんやりとしてくる。


 俺は浅く息をする。自分の身体から、意識が少しずつ引いていくのが分かった。





 目を覚ましたとき、俺がまず感じたのは、うだるような暑い日差しだった。六月にしては暑すぎる。


 俺は屋外にいた。しかも立った状態で。俺は自宅の浴室で、腰を下ろしていたというのに。


 さらに、今目にしている光景にも見覚えがある。右側を向いてみると、そこには俺がかつて通っていた中学校があった。今も同じ市内にいるとはいえ、俺はもうほとんどこっちの方面には来ないのに。


 加えて、俺が通っていた中学校の制服を着て、生徒が続々と歩いてきている。校門から昇降口に向かっている姿を見るに、今は朝なのだろうと何となく察しはついたが、それでも俺はさっきまで夜にいたはずだ。


 俺の身にいったい何が起こっているのか。登校している生徒に訊きたくもなったけれど、不審者と思われてはいけないという思いが、俺の心にブレーキをかける。


 だけれど、生徒たちが俺に目を向けている様子はなかった。誰もが素通りをし続けている。事態がまったく把握できない俺は、しばし戸惑うしかない。


 そんなときだった。交差点を曲がって、一人の生徒が他の生徒に紛れるように登校してきたのは。その生徒はかすかに俯いていて、一人で校門に向かってきていたが、その姿を俺は見間違えるはずがない。


 それは俺自身だった。今の俺よりも身長が低く、かすかにあどけなさを残している。何よりそいつは他の生徒と同じように、俺が通っていた中学の制服を着ていて、俺はますます混乱してしまう。


 もしかしたら、こいつは中学生のときの俺なのではないか。だとしたら、これは良くない状況なのではないか。パラドックスか何かが起きてしまう。


 でも、そいつはふと顔を上げると、立ち尽くしている俺に気づいたようだ。信じられないという風に目は見開かれ、口は半開きになっている。


 俺は、気がつけばそいつに近づいていた。そいつは呆然と立ち止まっている。パラドックスか何かが起きるという考えが頭を過ったものの、それでも今この状況が何なのかを知りたいという思いが勝った。


「な、なあ。お前、俺だよな……? 中学のときの」


 いきなり自分と同じ顔をした大人に話しかけられて、そいつは戸惑うというよりも、恐怖を抱いている様子だった。そりゃそうだ。俺がそいつの立場だったら、間違いなく同じ反応をしている。でも、そのことがやはり、こいつは俺なのではという思いを強くする。


 そいつは目を下げると、「す、すいません」と言って、俺のもとから離れていった。「お、おい、待てよ」と呼び止めても、そいつは振り向かずに早足で昇降口へと消えていった。理由もないのにとりあえず謝るところも、まさしく俺だ。


 現状として唯一の手掛かりが逃げてしまった以上、俺にできることは何もなくなってしまう。不審者と思われることも覚悟で、何人かの生徒に声をかけたけれど、俺の呼びかけに反応してくれる生徒は、やはり一人もいなかった。





「やっと俺と話してくれるようになったみたいだな」


 俺は、俺とまったく同じ顔をしたそいつに呼びかける。そいつは、まだ俺に疑り深い目を向けている。学校が昼休みを迎えた頃、俺たちは屋上へと向かう階段にやってきていた。この学校は屋上が封鎖されていて、ここに来るような生徒は誰一人としていない。


「あ、あの、すいません……。あなたはいったい誰なんですか……? ていうか、どうやってここに入って来たんですか……?」


 そいつはおずおずと問う。俺は落ち着いた調子で答える。


「そうだな。その前に、まずは俺からの質問に答えてくれるか? お前の名前と年齢は? それを答えたら、俺もお前の質問に答えてやるよ」


「……え、えっと、春日井真生かすがいまさきです。年齢は一四歳です……」


 俺は確信する。こいつは過去の俺だと。


「やっぱりか。俺の名前も春日井真生なんだ。年は三〇なんだけどな」


 いくらか先に事態が呑みこめていた俺がそう口にすると、一四歳の俺は朝と同じように、分かりやすく目を見開いていた。思っていることが表情に出やすいのは、昔も今も変わらない。


「えっ、本当ですか……? 冗談ですよね……?」


「いや、本当だよ。まったく同じ顔の人間が二人いるわけないだろ。そうだな……。俺もなんだけど、お前の誕生日は六月四日で血液型はB型。好きな料理はすき焼きで、趣味はゲーム。特にポケモンだろ。違うか?」


「い、いや、そうですけど……」


「まだ信じられないか。まあそりゃそうだよな。こんなこと現実に起こるはずがないもんな。でも、これは間違いなく俺の身に起こったことなんだ。俺はなぜか一六年前にタイムリープした。そして、一四歳のときの俺と会ってる。それが今の状況なんだ」


「い、いや、そんなこと急に言われましても……」


「そうだな……。お前、小学生のときに同じクラスの松山まつやまさんのこと好きだっただろ。結局思いを伝えないまま、別々の中学に行っちまったけど」


「ど、どうしてそれを……。誰にも言ってないはずなのに……」


「だから、俺はお前なんだよ。俺はお前のことなら何でも知ってる。だって俺自身なんだから」


 一四歳の俺はまだ唖然としていたけれど、それでもわずかに頷いていた。俺としても、こいつに事態を分かってもらわないとどうにもならない。


「で、でも、もしそうだとしても、なんでこの時にやってきたんですか……? ていうか、タイムリープってどうやって……?」


「それが俺にも分かんねぇから困ってんだよ。気づいたら一六年前に飛んでたんだし。どうやったら元の時に戻れるのかも、何一つ分かんねぇしな」


「そうなんですか……。それは大変ですね……」


「ああ、大変だよ。それとさ、お前敬語やめてくれるか? ただでさえ過去の自分と話してるだけで不思議な感じがするのに、その上敬語まで使われてるとむず痒くて。お前だって心の中で自分に声をかけるときは、敬語使わないだろ?」


「い、いや、でも……」


「いいからタメ口で話してくれよ。じゃないと、俺が気持ち悪いんだよ」


「は、はい……。いや、うん……」


 一四歳の俺は歯切れは悪かったものの、それでも敬語をやめようとしてくれていた。その姿に、俺は少しだけ胸のつかえが取れる。


「じゃ、じゃあ、僕そろそろ教室に戻っていい……?」


「冷たいこと言うなよ。まだ昼休みが終わるまでには時間あるだろ」


「いや、でも……」


「ていうか、頼む。もうちょっと俺と話しててくれ。どうも俺の姿は、お前以外の誰にも見えていないらしいんだ。もちろん声も聞こえてない。だから、俺が話せるとしたらお前しかいないんだよ。だから、な? 俺を助けると思って」


 俺がそう言うと、一四歳の俺はおずおずと頷いていた。


「じゃあさ、当たり障りのないことを訊くけどさ、どうだよ? 学校は楽しいか?」


 一四歳の俺はかすかに俯いていた。そんなの昔を考えれば、俺だって訊かれたくないことだ。でも、俺はそれ以外に訊きたいことが思いつかなかった。


 一四歳の俺が顔を上げる。でも、その目は俺の顔を見られてはいなかった。


「う、うん。楽しいよ。勉強にも何とかついていけてるし、何よりサッカー部の人たちがみんないい人たちでさ。クラスメイトにも友達は何人かいるから、充実した学校生活を送れてるよ」


「……お前さ、嘘つくなよ。お前のことは、俺なんだから何でも知ってるって言ったろ?」


 一四歳の俺が言った内容が、あまりに俺の過去とかけ離れていたから、俺は思わずたしなめていた。そいつは俺から視線をそらしている。


「少なくとも俺は、中学はまったく楽しくなかったけどな。確かに勉強は人並みにできたかもしれねぇけど、それでも体力も運動神経もなくて、部活には全然ついていけてなかった。それに友達も一人もいなかったし、俺は毎日行きたくないなと思いながら、それでもどうにか学校に通ってたんだけど、お前は違うのかよ?」


「……そんなの僕だってそうだよ」一四歳の俺がこぼす。その姿を、俺はただ見ていることしかできなかった。


「勉強なんてできたって何の意味もない。それよりも僕はもっとサッカー部で活躍できるような運動神経や、普通に友達と話せるコミュニケーション能力がほしかったよ。でも、僕にはそれがない。サッカーは練習しても全然上手くならないし、クラスメイトとも何を話せばいいのかなんて全然分からない。学校に来る意味なんてあるのかなって思うよ」


「そうだな。俺もまったく同じように思ってたわ。学校って本当に嫌なところだよな」


「ううん、そんなことない。学校はいいところだよ。だって、みんな笑顔で楽しく通えてるんだから。むしろ、そんな学校に馴染めない僕がダメ人間ってことでしょ。何もできないゴミカスはいる価値なんてないんだよ」


 さすが俺と言うべきか、一四歳の俺は今の俺とまったく同じことを感じていた。


 俺も三〇になっても未だに友達はいない。会社もただ行って仕事をしているだけで、気兼ねなく話せる人間は一人もいない。こんなダメ人間は生きている価値がないと、毎日声に出して自分に言っているくらいだ。


 でも、たとえ一四歳の俺からとはいえ、それを人から聞くとやはり傷つく思いはした。


「お前さ、そういうことは思ってたとしても、あまり言わない方がいいぞ。他の人が聞いたらどう思うか、ちょっとは考えろよ」


「なんで? 別に本当のことだからいいでしょ。人とも話せない、サッカーもできない。何もできない僕はさっさと死んだ方がいいんだよ。どうせこの先生きてても良いことなんて一つもないんだから。僕が死んでも誰も困らないし、悲しまない。僕は誰からも必要とされてないんだ。もう生きてても仕方ないんだから、さっさと自殺しろって思うよ」


 一四歳の俺にまくし立てられて、俺は返事に詰まってしまう。それは今の俺が思っていることと、まったく同じだった。


 思えば、俺は子供の頃から友達が少なかった。他の子と同じように話せない自分を「バカだ」「死んだ方がいい」と責めることも、それこそ小学生の頃からしていた。そして、それは今もまったく変わっていない。だから、俺は自殺を試みたのだ。


 でも、俺は首を横に振っていた。一四歳の俺が自分を否定している姿は、あまりにも悲しかった。


「いや、そんなことねぇよ。だって、お前勉強はできたじゃんか。それってできない奴からすれば、羨ましく見えると思うぜ」


「だから何なの? 勉強ができることよりも、人と楽しく話せることの方がよっぽど大事じゃないの? それは大人になったらよりそうでしょ?」


「そっか。だったら、人と話してみるか」


「えっ?」


 一四歳の俺は驚いていたけれど、俺はそれもあまり気にしなかった。今はこいつに自分だってやればできるんだと思ってもらうことが、何よりも重要だろう。


「だから、人と話してみようぜって言ってるんだよ。お前の隣の席の、名前何てったっけ?」


豊橋とよはしくん……?」


「そう、その豊橋とお前喋ってみろよ。昼休みもまだ残ってるしさ」


「いや、そんな急に言われても……。ていうか、何を話せばいいの……?」


「そんなの適当でいいんだよ。『今日も暑いね』とか『今何してるの?』とか、そんな感じで。とにかく話しかけねぇと何も始まらねぇからな。お前だって、本当は友達がほしいんだろ?」


 一四歳の俺は「それはそうだけど……」と煮え切らない。こいつの大変に思う気持ちは、俺だって痛いほど分かる。もう一学期も終わろうとしているこの時期にいきなり話しかけて、変な奴だと思われないかと。


 その考えは俺にも頷けたし、実際俺も同じように「今から会社の同僚と話せ」と言われても、今さら話せないと難色を示しているだろう。


 でも、そいつはいくら俺とはいえ、まったくの俺自身ではなかったから、俺はどこか他人事で言うことができていた。はっきりしない態度を見ていると、気持ちもいくらか急いてしまう。


 俺は「ほら、いいから教室戻るぞ」と踵を返して、階段を下っていった。「ちょっと待って」と言いながら、一四歳の俺もついてくる。


 教室に戻ると、豊橋は他のクラスメイトと話している最中だった。楽しげに談笑していて、一四歳の俺にとってハードルがさらに上がったことを俺は感じる。この輪に入っていくのは、俺だって難しい。


 それでも、俺は「ほら、顔を向けて、会話に参加するふりだけでもしろよ」と一四歳の俺に呼びかける。だけれど、一四歳の俺はただじっと床を見つめるきりで、動こうとしなかった。


 唇を噛んでいる様子から、会話の輪に加わる勇気を出そうとしていることは分かる。しかし、それは実際の行動となって表れてはいなかった。


 俺は静観することしかできない。ただ黙って見守っていても、一四歳の俺は顔を上げようとはしていなくて、そのうち俺は午後の授業が始まるチャイムを聴いてしまっていた。





「お前、どうして豊橋と話さなかったんだよ」


 授業を終えて放課後になるとすぐに、俺は一四歳の俺を連れて、再び屋上へと向かう階段に行った。そいつはうなだれて、「ご、ごめん……」と謝っている。その姿が、俺の神経を逆撫でした。


「いや、謝るくらいだったら、『今何してるの?』の一言でいいから、話しかけるべきだっただろ。チャンスは何回もあったのに」


「う、うん……。本当にごめん。こんな簡単なこともできないなんて、僕はやっぱりダメ人間だよね……」


「いや、そんなことは断じてないんだけどさ。でも、なんで声をかけられなかったのか、俺に教えてくれないか?」


「そ、それは話しかけたところで『なんだコイツ』って思われるだけだと思って……。ほら、僕って顔もブサイクだし、声も気持ち悪いでしょ……。豊橋くんを不快にさせちゃいけないと思ったんだ……」


「別にそんなことはないけどな。普通だよ、普通」


「で、でも、たとえもしそうだとしても『今何してるの?』とか『授業分かった?』って話しかけて、豊橋くんから返事があったとしても、その次に何を言えばいいのかが僕にはわからなくて……。僕って頭も悪いから、言葉もすぐに浮かばないし……。だから、会話を続けなきゃいけないって思うと、胸が苦しくなったんだ……」


「まあ、それは俺も似たようなもんだけどよ、でもそれは実際に話しかけてから考えればいいことじゃねぇか。先回りして悩む必要なんてないんだよ」


「で、でも会話を続けられなかったら、豊橋くんはやっぱり嫌な思いをするんじゃ……。『大した用もないのに話しかけてくんじゃねぇよ』って」


「そんなことないと思うけどな。ていうか、この話もう終わりにしようぜ。お前がウジウジ反省してるのを聞いてたらキリがねぇから」


「う、うん。ごめんなさい……」


「だから、いいよ。謝らなくて。ほら、早く部活行けよって言いたいとこなんだけど……」


 そこで言葉を区切った俺に、一四歳の俺は表情に疑問符を浮かべていた。俺は、こいつならきっと首を縦に振ってくれると期待して続ける。


「今晩はさ、とりあえずお前の家に泊めてくれねぇか?」


 俺の頼みが思いもよらなかったのだろう。一四歳の俺は目を瞬かせていた。「どうして?」と思っていることが、言葉にされなくても分かる。


「いやさ、タイムリープしてきたとはいえ、実体はあるから普通に暑さは感じるし、腹も空くし、トイレにも行きたくなるんだよな。いくら夏とはいえ、外で過ごすわけにもいかないだろ? だから、頼むよ。ていうか、俺はお前にしか見えてない以上、頼めるのはお前しかいないんだ」


「い、いやウチに来るって言っても、いくら見えてないとしても、物を動かした結果とかは見えるんでしょ……? それにご飯はどうするの……? 一人分多く作れってこと……?」


「それは、余ったパンでも何でもあげてくれればいいよ。俺もトイレのとき以外は、お前の部屋でじっとしてるから。父ちゃんと母ちゃんにも迷惑をかけないようにする。それならいいだろ?」


「う、うん。まあ、今日はね。いつまでもウチに置いておくわけにはいかないけど、でも今日くらいだったら何とかはなると思う」


「そっか! ありがとな! やっぱ、さすが俺だわ! 優しいな!」


 ひとまず夜露をしのげる場所が見つかったことに、俺はそいつの手を握ってまで喜びたくなる。俺が告げた感謝は少しも大げさではなかったものの、それでもそいつはかなり照れくさそうにしていた。もしかすると人から感謝されることに慣れていないのかもしれない。


 少し縮こまっているそいつを、俺はしげしげと眺めていた。





 一人で家に帰っても、鍵が閉まっている以上入ることはできないので、俺は一四歳の俺が部活を終えるのを待つことにした。ただ待っていても手持ち無沙汰にすぎたので、俺はそいつに許可をもらい部活の様子を見させてもらう。


 でも、日陰から見守っていても、そいつの様子は散々なものだった。持久走ではビリを走っていたし、パス練習もずれてしまっている。シュート練習もろくに決まらず、最後の紅白戦は終盤に一〇分出ただけなのに、ヘロヘロになっていた。間違いなく一四歳の俺は一番下手くそで、俺は目を覆いたくなってしまう。毎日こんな様子だったら自己肯定感が下がってしまうのも無理はないなと、改めて感じた。


 散々だった部活も終わって俺たちが家に着く頃には、空はすっかり暗くなっていた。実家は最後に俺が帰ったときと外観は何も変わっていなかったから、俺にはそこまで感慨深さはない。


 俺は、一四歳の俺に続いて玄関をくぐった。一四歳の俺が「ただいまー」と言うと、「おかえりー」という両親の声が聞こえてくる。一六年前ということもあって、声に少しだけ若さを感じたけれど、それでも両親とは顔を合わせず、そっと二階の自分の部屋を目指す。


 階段を上がってドアを開けると、目に入ってきた光景に今度は、俺ははっきりと懐かしさを感じる。畳の上には布団が敷かれ、学習机の上には何冊かの教科書や参考書が置かれている。壁にはサッカー部らしくサッカー選手のポスターが何枚か飾られていて、本棚には漫画が何十冊としまわれていた。


 部屋に入った俺は、一四歳の俺に言った通り、トイレのとき以外は一歩も部屋から出なかった。エアコンを入れると、涼しい風が顔に当たって心地いい。


 そして、俺は暇つぶしに本棚にしまわれている漫画や漫画雑誌、サッカー雑誌などをちらほら読んだ。久しぶりに読む漫画は相変わらず面白かったし、漫画雑誌はこんな漫画が載っていたんだと懐かしく感じる。サッカー雑誌に掲載されていたかつての選手名にも思いを馳せる。


 そうしていると、一階からは俺たちの話す声が聞こえてきた。俺は家では普通に喋れていた。そのことを思い出すと、俺はほんのりとした安堵に包まれた。


 一四歳の俺が自分の部屋にやってきたのは、一〇時を少し回った頃だった。手には袋入りのレーズンパンを持っていて、いい加減空腹になってきた身にはありがたい。


「それでどうなの? 三〇歳ってことは、二〇二五年から来たんだよね。その時には戻れそうなの?」


 俺がレーズンパンを食べていると、ふと一四歳の俺が訊いてきた。


「いや、全然。そもそもどうしてこうなったのかも分からねぇし、元の時代に戻る方法も全然分からない。まだもう少しお前の世話になりそうな気がしてるよ」


 そもそも戻れるかどうかすら分からないとは、俺は言わなかった。この時代に来る前、俺は自殺を試みていたから、もしかすると二〇二五年の俺は既に死んでいるのかもしれない。


 でも、それを一四歳の俺に言うことはあまりにも残酷すぎて、俺にはできなかった。


「そうなんだ。大変だね」


「ああ、大変だよ。本当にどうしてこうなったんだろうな」


「ね、ねぇ。二〇二五年ってどうなってるの? 日本はどんな感じ?」


「どうなってるって言われても……。そうだな、ほらスマートフォンってあるだろ。知ってるよな?」


「うん、テレビで見たことある」


「今はそこまで持ってる人はいないけど、でも二〇二五年にはお前が想像もしないほど普及してるよ。誰もが一人一台やそれ以上持ってて、逆に今の携帯はガラケーって呼ばれて、使ってる人はかなり珍しがられてるよ」


「そうなんだ。じゃあ、僕もスマートフォンを持ったりするの?」


「ああ。高校のときに買ってもらうよ」


「そっか。楽しみだなぁ。僕、今携帯持ってないから。ねぇ、あとは?」


「そうだな……。お前が好きなポケモンで言うと、第九世代ぐらいまで出てるかな。数も一〇〇〇種類を余裕で超えてる。ワンピースはまだ続いてるし、サッカーで言ったら今強いのはフランスだな。クラブでも代表でも。あとは日本人選手が普通に海外でプレーするようになってて、代表もかなり強くなってるよ」


「へぇ、本当に二〇二五年の未来から来たんだね」


「何だよ。信用してなかったのかよ」


「まあ、ちょっとは。でも、よかったよ。二〇二五年の未来は明るいみたいで」


「いや、あまり良いことばかりでもないぞ。消費税は一〇パーセントに上がってるし、米がかなり品薄になってる。季節も夏か冬しかないってくらいに極端だし、何より世界では戦争が頻繁に起こってるからな。ロシアがウクライナに侵攻したり、パレスチナのガザって地域をイスラエルが攻撃したり。本当毎日嫌なニュースばっかだよ。ああ、あと二〇一一年にはな……」


「い、いや、それ以上言わないで。怖くなってきちゃうから」


 そう俺の話を遮った一四歳の俺を、俺は当然だと思う。誰でも未来に塞ぎこみたくなるようなことが待っているとは知りたくない。これから日本は震災に豪雨、コロナ禍を経験すると言ったら、脅しすぎているだろう。


 俺は「そうだな」と、話をいったん引っ込めた。


「そ、それでさ、三〇歳になった僕はどうしてるの? ちゃんと仕事に就けてる?」


 半ば無理やりにでも話題を変えてきた一四歳の俺に、俺はふっと表情を緩める。学生時代の俺は自分が将来まともな職業に就けるとは、少しも想像していなかった。


「ああ、安心しろよ。契約社員とはいえ、ちゃんと事務の仕事に就けてるから」


 それは小学生でもできるような仕事で、やりがいを感じられないとは俺は言わなかった。将来に対して不安しかない一四歳の俺には、人生は意外となんとかなると知らせる方が大事だろう。


「そうなんだ。よかった。じゃあ、結婚はしてたりするの?」


「いや、それはまだしてないけど、でも安心しろ。これからお前はちゃんと女性と付き合うことになるから。そういった行為もちゃんと経験する。だから、気を落とすことなんてねぇんだよ」


 嘘だ。俺はこの年になるまで女性と付き合った経験は一度もないし、そういった行為だってしたことがない。別にどうしても彼女がほしいと焦っているわけではないが、他の一般的な同世代の男と比べると、やることをやっていない劣等感は確かに持ち合わせている。


 だから、一四歳の俺に「それっていつ頃の話?」と訊かれても、俺は明確な答えは返せなかった。「それを言ったら、この先の楽しみがなくなるだろ」とごまかすことしかできない。でも、一四歳の俺は「まあ、それもそうだね」と納得した様子で、人の嘘を見抜けない鈍感さは、今の俺ともやはり共通しているようだった。


「それじゃあさ、友達はいるの?」


「ああ、いるぜ。親友って呼べる奴も五人か六人はいる」


「それどうやって作ったの? 今の僕からしたら考えられないんだけど……」


「それはな、さっきのスマートフォンの話にも繋がるんだけど、SNSってものがこれからどんどん発達していってな。趣味の合う人を見つけやすくなってるんだ。サッカーとか、あと今の俺だと映画とか。そういった趣味の繋がりで、友達もできたんだ」


「へぇ、こんなコミュ障でどうしようもない僕でも友達ができるなんて、いい世の中になってるんだね」


「まあな」俺は平静な態度を装って返事をする。一四歳の俺に嘘をついていると悟られないためにも。


「だからさ、俺にだって友達ができたんだから、お前にも絶対友達はできるって」


「そうかな……。こんな僕でも……?」


「ああ、絶対できる。俺が保証するよ。だって、お前は俺自身なんだから。俺にできたことがお前にできないわけがない。そうだろ?」


「そ、そうだね。そう言われると、ちょっとだけどできるって思えてくるよ」


「ああ、そのためには明日こそ豊橋に話しかけることからだな。どうだ? できそうか?」


「う、うん。どうにかやってみるよ」


 表面上だけでも前向きな返事が貰えて、俺も少し胸をなでおろす。もちろんどうなるかは、明日にならないと分からない。それでも、俺は明日に向けて多少なりとも良いイメージを抱けていた。





 寝て起きてみたら二〇二五年に戻っている。そんな都合のいいことさえ俺は期待していたのだが、そんなことは起きるはずもなく、俺は二〇〇九年にやってきて二日目の朝を迎えた。


 俺はそいつとともに家を出て学校に向かう。その日はサッカー部の朝練がある日で、照りつける日差しは朝早くても少しも変わってはいなかった。


 することもないので朝練を眺めていた俺は、練習を終えた一四歳の俺についていって、昇降口をくぐった。誰にも見られていないとはいえ、校内に土足で上がるのは、やはり少しむず痒い。


 そして、俺たちが二階の教室に入ると、まだ豊橋の姿はなかった。豊橋も豊橋で、バスケットボール部の朝練に取り組んでいるらしい。自分の席についた一四歳の俺を、俺はただじっと見守る。その間も、そいつは緊張した面持ちを浮かべていた。


 豊橋が教室に入ってきたのは、一四歳の俺が席について五分も経たない頃だった。友人に軽く挨拶をしながら自分の席に向かっている。


 昨日のことを思えば、豊橋のもとにはすぐにクラスメイトがやってきて、話をしてしまうだろう。だから、チャンスは豊橋が席についてすぐのタイミングしか、一四歳の俺にはない。


 そいつもそのことが分かっていたのだろう。豊橋が腰を下ろした瞬間に「ね、ねぇ、豊橋くん」と呼びかけている。一四歳の俺にしては、勇気を振り絞った行動だ。


 でも、さすがに唐突すぎたのか、豊橋は「な、なんだよ。いきなり」と少し驚いている。その反応は声をかけたことを気まずく感じてしまうようなものだったが、それでも一四歳の俺は立て続けに勇気を出していた。


「きょ、今日も暑いよね」


「ああ、暑いな。こんなに暑いと授業とかやってらんねぇよな。早くウチの学校にもエアコン入れてほしいって思うぜ」


「分かる。東京の方じゃ、冷房が効いてるなかで授業を受けられる学校もあるみたいだし、ウチも早くそうしてほしいよね」


「ああ、そうだな」


 豊橋がそう相槌を打ったところで、会話はいったん終了してしまう。もとより天気の話はあまり広がりにくい。


 もちろん話しかけることができたという意味では、俺が言った当初の目的は達成できているだろう。


 でも、このままでは一四歳の俺が、いきなり話しかけてきた変な奴だと思われかねない。そう思われないためには、もう少し会話を続ける必要があって、それはそいつもちゃんと分かっていた。頑張って「そ、そういえば、もうすぐ夏休みだけど、豊橋くんはどうするの?」と訊いている。


「まあ、大体部活なんだけど、それでも盆の間はじいちゃんの実家に行くぜ。新潟にあるんだ」


「そうなんだ。新潟ってことは海とかにも行くの?」


「ああ。じいちゃん家は海の近くだしな。毎年近くの海水浴場に行ってるよ」


「そうなんだ。羨ましいなぁ。ほら、ここにいるとなかなか海って行けないでしょ。だから、いいなぁって思って」


「なぁ、春日井さ」


「う、うん。何?」


「今日、お前よく喋るよな。どうかしたのかよ?」


 その指摘は豊橋からすれば当然だったけれど、ただ隣で見ているだけの俺でさえ、ハッとするような心地を味わう。きっと一四歳の俺はそれ以上に、一瞬でも息が詰まるような感覚を感じているのだろう。


 口を小さく開けている様子から、内心では慌てていることを俺は察する。


「そ、それは特に理由とかはないんだけど……。でも、ごめん。急に話しかけられて迷惑だったよね……?」


「いや、別にそんなことはねぇけど。つうか、むしろ安心したよ。こんなに隣の席にいるのに話しかけてこないってことは、お前は俺のことを嫌ってるんじゃないかって思ってたから」


「いやいや、そんなことまったくないよ。むしろ僕は、前々から豊橋くんと話してみたいなって思ってたよ」


「そっか。ありがとな」そう表情を緩めている豊橋を見て、俺は心の底から安堵する。会話を通して自分の存在が受け入れられた経験は、一四歳の俺にとって大きな財産となるだろう。他人は案外冷たくないのだ。


 一四歳の俺も笑みを返そうとしているが、慣れていないからかその表情はぎこちなく、でもそれさえも俺には微笑ましく感じられた。





「はあぁ、緊張したぁ」


 昼休みになって給食を食べ終えてから、俺たちが屋上へと向かう階段に到着すると、一四歳の俺はため息交じりにこぼしていた。俺も内心で安堵の息を吐きながら、「お疲れ様。よく頑張ってくれたな」と呼びかける。その言葉に、一四歳の俺は清々しさを含んだ表情で応えていた。


「うん。本当にドキドキしたよ。豊橋くんが僕のことをどう思ってるかなんて、今まで分からなかったから」


「そうだな。でも、よかったじゃねぇか。豊橋も無事にお前のことを受け入れてくれて。俺も、あいつがあんなに良い奴だとは思わなかったよ」


「それは僕も思った。いざ話してみたら、豊橋くんは拍子抜けするほど簡単に僕のことを受け入れてくれて。こんなんだったら、もっと早く話しかけとくべきだったよ」


「そうだな。まあ、これから友達になっていくなかでは色々大変なこともあるだろうけれど、でもお前の話している様子を見てたら、それも大丈夫かなって思えたよ」


「うん。僕としても最初の一歩を踏み出せたことは、凄く大きいなって感じてる。豊橋くんも思ってたより優しかったしね」


「そうだろ。人間ってのは、一人一人は案外優しいもんなんだよ。自分から壁を作る必要なんてないんだ」


「うん。それは僕も今回のことでよく分かったよ」


「ああ。お前さ、昨日自分には生きてる価値がないって言っただろ? この先生きてても何も良いことは起こらないって。今でもそう思ってるか?」


「それは正直まだ……」


「そうだよな。一四年間生きてきて染みついた考えは、そんな簡単には変えられないよな。でも、実際に今日は一つ良いことがあったわけじゃんか。豊橋と話せたっていう」


「それはそうだけど……」


「『この先生きてても良いことなんて一つもない』っていうのは嘘なんだよ。もちろん人生は良いことばかりではできてない。お前はこれからいくつかの辛い目に遭う。他の奴らと同じようにな。でも、ちゃんと良いことだって人生には起こるんだ。俺が保証するよ」


「それは彼女ができたりとか、そういうこと……?」


「ああ、そうだ。お前はちゃんと人から認められるし、大切にされる。お前の周りの人は、お前の存在に価値を認めてくれるんだよ。だから、あんま自分に生きてる価値がないとか思うなよな。それはその人たちの思いに唾を吐きかけるってことなんだから。お前には、ちゃんと生きる価値があるんだよ。誰かに心無い言葉を言われたとしても、それは絶対に間違いない。お前は生きてていいんだよ」


 その言葉は、紛れもなく俺自身が一番言われたい言葉だった。きっと一四歳の俺もそうだろう。


 客観的に見たら、自分で自分に優しい言葉をかけているのは、なんて悲しいことなんだと映るかもしれない。でも、それがなんだというのだ。実際、今の俺は人から認められている実感を得られていない。だからこそ、自分を認められるのは自分しかいないのだ。たとえ、それが根拠のない嘘だったとしても。


「そうだよね。おかげでもしかしたら、自分も捨てたもんじゃないかもしれないって思えたよ。こうして三〇歳の僕に会えてなかったら、そうは思えていなかったかも」


「そっか。じゃあ、もしかしたら俺が、この時代にタイムリープしてきた意味もあったのかもしれないな」


 そう言った俺に、一四歳の俺は小さく頷いていた。俺はかつての俺に、少しでも前を向かせることができた。そのことが、今は少し誇らしく思える。


「そうそう。それとさ、僕からも一ついい?」


 何の気なしに話題を変えようとしている一四歳の俺に、俺も「ああ、何だよ」と頷く。でも、次にそいつが言ったことは、俺が予想していないことだった。


「もしかして、ちょっと嘘ついてる?」


 はっきりと図星を指されて、俺は一瞬狼狽えそうになってしまう。努めて落ち着いた様子で「どうしてそう思うんだよ?」と訊き返したが、その言い方はどことなく高圧的な響きを帯びる。


 それでも、一四歳の俺にたじろぐ様子は見られない。


「だってさ、友達がいるとか、昔彼女がいたとか、それって多分嘘だよね? 本当は友達も彼女もいたことないんでしょ?」


「いや、そんなことねぇよ。俺が言ったことは、全部本当だから」


「そう? でもさ、それ言うときに軽く顎に手を当ててたでしょ? それって僕が嘘をつくときにする癖だよ。もしかして気づいてなかったの?」


 一四歳の俺にそう指摘されて、俺は返事に詰まってしまう。確かに嘘をつくときに軽く顎に手を当てる癖は、俺も自覚している。


 でも、そのときは一四歳の俺に未来は明るいものだと信じてもらいたくて必死で、そんなことは意識に及んでいなかった。


「……いいや、嘘じゃねぇよ。本当だ」


「そんなごまかさなくていいって。僕もそんなに気にしてないから。たとえ友達がいなくても、彼女ができたことがなくても、僕が三〇になるまで生きてることが分かって安心したよ。正直、今のまま三〇になるのが怖くて、それまでに死ぬって考えたことも、何度もあるから」


「そうだな。俺もお前のぐらいのときには、よくそう考えてたよ」


「うん。でもさ、今はそうは思ってないんだ。たとえ嘘をついてでも僕を励ましてくれたこと、とても嬉しかったから。だから、僕もたとえどんな状況になってても、同じことが起こったら同じ言葉をかつての僕にかけてあげたい。僕がこうして、ちょっとだけだけど救われたように」


「ああ、そうだな。俺も、かつての俺に見せても恥ずかしくないような人生を歩んでいきたいと思ったよ」


「うん、お願いね。だって僕なんだから。一四歳の僕ができたことは、三〇歳の僕でもできる。そうでしょ?」


「ああ、任せとけ」


 俺は気がつけば微笑んでいた。かつての俺相手とはいえ、人前で笑ったのはいつ以来だろうか。


 一四歳の俺も、同じように微笑みを返している。もしかしたら本当に俺は、人生は捨てたものではないかもしれない。


「それじゃあさ、そろそろ教室戻っていい? そろそろ午後の授業も始まる頃だと思うし」


「ああ、そうだな」


 俺がそう答えると、一四歳の俺は踵を返して階段を下っていった。その足取りは初めて会ったときよりもずっと軽やかだ。こいつならどんなことがあっても、俺のように人生に絶望して死を選ぶことはないだろう。


 そう確信して、俺はそいつの後に続いて歩き出した。





 目を覚ますと、俺は浴室に座り込んでいた。その光景は俺が暮らしている部屋のもので、俺は感覚的に二〇二五年に帰ってこられたことを察する。


 そして、次の瞬間には、俺は左腕に冷たさを感じていた。ふと、目をそちらに向けてみる。すると、浴槽の水は透明なままだった。手首を切った傷跡も、きれいさっぱり消え去っている。


 俺の身に何が起こったのか。それを理解するまでにはさほど時間はかからなかった。


 左腕をタオルで拭いてから俺は浴室を出る。散らかった部屋が、俺がこの世にいることを如実に示している。ふと見上げると、壁掛け時計は午前〇時ちょうどを差している。


 日付が変わって六月四日。俺は三一歳の誕生日を迎えた。小さく口元を緩める。窓には、等身大の俺の姿が映っていた。



(完)

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Life is (not) beautiful? これ @Ritalin203

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