第1話
それから8年の時が過ぎた。
男の子は13歳になり、中学校に通っていた。
あの時の泣き虫が、明るくて元気な少年になっていた。
その日の給食はビビンバ。彼の大好物で舌鼓を打っていた。
そして、昼の放送で流れる音楽を聴いて回復魔法を発動させていた。授業で疲れた体を癒している。
当然、周りには気づかれていない。これは彼の秘密なのだった。
いつの日だったか、自分がこの魔法を使えることに気が付いた少年は上手く使いこなすために一生懸命に練習をした。その結果、身長が伸びなくなってしまったのだ。中学生という成長期にこれは痛いことだった。そして彼はクラスで一番背が低いのである。
「なあ太郎?」
向かい合って食事をしている同級生の猿田に声をかけられた。
「!」
これに動揺した太郎は魔法を止められてしまった。
「なに? なんかあった?」
猿田にそう答えて誤魔化していた。
すると猿田が言った。
「この学校、出たんだ」
声を潜めていた。
それは、この学校にある妖怪が出るというのだった。
「えー! 面白そうじゃん」
「バカ! 声がでかいって」
猿田は太郎の大きな声を制するように太郎の頭を抑える。
この学校にも妖怪が出るという怪談があったのかぁと、太郎は感動している。
そんなことを思っている太郎とは反対に猿田の表情は真剣だった。
話はこうだ。
放課後の音楽室で誰もいないはずなのにピアノを弾く人がいる。それを猿田は発見してしまったのだ。それは人間ではなくて図鑑で見るような妖怪だ。
初めは見間違いかと思ったが、5分たってもそこに妖怪はいるのだ。
猿田はじっとしていたが、妖怪に見つかったらしい。そしてあまりの怖さに逃げたのだった。
でもこのままでは夜も怖くて眠れない。だから太郎に頼ったようなのだった。
「太郎は動物に懐かれるから妖怪も手なずけられると思ってさ」
猿田は何か不純なことを考えているのだろう。本人は立派なカメラを構えて来るらしい。次の日の放課後に事の真相を確かめに行くことにした。
太郎は次の日が来るのを待ち遠しく思った。
妖怪ベイビー こわき すすむ @kowaki
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