第31話「緊急クエスト発生」
町中にカンカンと響く、
一人の青年が走りながら叫んだ。
「鬼の
先ほどまで活気に満ちていた城下町は、一瞬にして
人々が走り回り、
「……え? なにこれ……?」
僕が
「これは【ヒノモト城下町防衛戦】だね。この町特有のイベントで、定期的に鬼の
エイプリルフーラーさんは、周囲の混乱をまるで他人事のように
「……鬼の大将は【
(豊富なカラーバリエーションだな……)
状況を
先ほどまでの
「マオ、鬼のところに行ってみよう」
コンは僕の腕を
その瞳には強い意志が宿っている。
「そうだね……エイプリルフーラーさんはどうしますか?」
僕が
「俺はちょっと用事があるから、ここで抜けるよ。また遊ぼうな、二人とも」
そう言い残すと、エイプリルフーラーさんは
(行っちゃった……すごく自由な人だったな)
二人になった僕とコンは顔を見合わせ、深く
そして
◇
城下町を飛び出すと、目の前には広大な平原が広がっていた。
城下町の入口では
その彼らの視線の先、遠くの方から「ドドドッ」という
「マオ、あの走ってきてるのが鬼だね? 話し合えばきっと街を
コンは真っ直ぐに、
その時、頭の中に
《緊急クエスト【ヒノモト城下町防衛戦】が発生しました。参加しますか?》
アナウンスが終わると同時に、世界の時間がピタリと止まった。
僕の目の前に、半透明のウィンドウが浮かび上がる。
【参加する】【参加しない】という二つの選択肢。
(コンも乗り気だし、僕たちなら戦わないで解決できるかも……!)
僕が意を決して、【参加する】の項目を指でタップすると、止まっていた世界が再び動き出す。
「そうだねコン。もしかしたら、なにか理由があって
僕とコンは目を合わせると力強く
「待て!
「戻りなさい!」
侍たちの静止の声が飛ぶが、僕たちはそれを振り切り鬼の
◇
彼らの前まで
その数は……百人以上はいるだろうか。赤や青の肌をした様々な鬼たちが、
その中央に立つひときわ巨大な緑色の鬼が、地を揺らすような低い声で
「我は鬼の大将【
「私はコンだよ。あなた達はどうして人間たちの街を
コンは鬼の大将の前に
しかし大将はフン、と鼻を鳴らす。
「仲直りだと? ケヒャヒャヒャ! 我らはただ、人間を
(これは……人間への
僕の知る限り、モンスターにはそれぞれ
だけど目の前の鬼の言葉からは、理屈を超えた
全てを見下すその
「コン、話が通じないみたいだ。逃げよう!」
僕がコンの腕を引こうとすると、コンは首を横に振った。
「でも、このままじゃお団子屋さんが危ない……。どうしてもっていうなら、私が相手になるよ」
コンの言葉と共に、
「グルルルル!」
「殺せェ!!」
鬼の
しかしコンは動じない。
「皆ごめんね──【
彼女が両手を広げ白い光を放った瞬間──押し寄せてきた鬼の
「ケヒャッ!?」
「な、なんだとッ!?」
残った鬼たちが
巫女のコンは踊るように鬼の攻撃をいなし、
その動きはしなやかで恐ろしいほどに速い。
鬼の刃が触れることはなく、コンが動くたびに鬼が光の粒子となって消滅する。
(すごい……コンってこんなに強かったのか……!)
「クソッ! 炎よ燃え盛れ!」
「氷の檻よ、囚えよ!」
残った鬼が次は一斉に魔法を放つも──それらはコンの前で、何事もなかったかのようにかき消えていく。
「【
コンの踊るような戦闘。そして気が付いた頃には──残すは鬼の大将【
「お前……本当に人間なのか……?」
彼は目の前の少女の圧倒的な強さに、恐怖に震えながら後ずさる。
「私はただの……お団子が大好きな女の子だよ」
「──ッ! ふざけるなァ!!」
その言葉に【
その攻撃をコンが軽やかにジャンプして避ける。
──空中へと舞い上がった巫女姿のコンが、その両手から白い光を放った。
一瞬にして光が【
煙が晴れた時、そこにはもう何も残っていない。光の粒子だけがコンを包むようにキラキラと幻想的に舞っていた──。
《緊急クエスト【ヒノモト城下町防衛戦】を達成しました!》
《クエスト達成ボーナスとして、【討伐経験値】を70,000ポイント獲得しました》
《成長テーブル【
《ジョブ【通訳】のレベルが 33 から 34 に上がりました》
《ステータスポイントを 10 獲得しました。自動割振を行います》
《称号【城下町の守護者】を獲得しました》
《称号効果:【ヒノモト城下町】での友好度が上がりやすくなります。また、侍系NPCからのクエスト受注率が微量に上昇します》
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