毎回毎回「お金足りないから代わりに払って!今度絶対返すから!」と言っては絶対に金を返さない奴が魔物に操られて人質に取られたが、せっかくなので便乗して復讐する。

夜桜モナカ

第1話

 ダンジョンの奥深くへと入り込んで、しばらくした時だった。


「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


一同「!?!?!?!?!?!?!?!」


 どこかで聞いたことのある声だ。


 そういえば、パーティの中に1人いない人がいる。


フランキン「カテラかっ!?」


 パーティのリーダー的存在、剣の使い手ソードのハロルド。

 斧の使い手アックスのフランキン。

 治癒薬師ヒーラーのマイラー。

 守師キーパーのヨアン。


 一同は一斉に走り出した。






カテラ「あっ……うう……ゴホッ! ゴホッ!」


 一同が見たのは、苦しそうに倒れ込んだ魔術師メイジ・カテラの姿だった。

 彼の四肢は、なにか細長いモノにぐるぐると巻きつかれている。


ハロルド「あれは……パペット……!」


 このダンジョンに生息していると噂される、人間を操りし異形の魔物・パペット。

 カテラはパペットに、その精神を支配され始めていた。


カテラ「ひどい……ひどいよぉ! なんでぼくを置いていったの!!」


ヨアン「カテラいたのっ!? てっきり、また怖くなって逃げ出したのかと……」


カテラ「はぁ!? ひどすぎる!!! ぼくのことをなんだと思ってるの!?」


マイラー「どうして、パペットに捕まってるの……!?」


 パペットは不意打ちで襲いかかってくるような、器用な魔物ではない。

 カテラが相当鈍感だったのか、それとも倒しにかかったのか……


カテラ「ああ、もう!! 魔物見つけたから倒そうと思ったらこれだよっ!! 全部みんなの、みんなのせいだっ! こいつがパペットだなんて知らなかったの!!!」


フランキン「昨日、宿屋でパペットの特徴を説明したはずだが……」


カテラ「そんなの聞いてないよ!」


ハロルド「えぇ………………カテラ、寝てたわけでもないのに」


カテラ「ぼくは知らない!!!」


 しかし、言い合っている間にもカテラはパペットに飲み込まれていった。


カテラ「ゴホッ! ゴホッ! マイラーちゃん、た、助けて……苦し、い、よ……」


フランキン「マイラー! 薬を……!」


マイラー「はいっ……!」


 マイラーは薬瓶を投げようとした。

 ……が、次の瞬間、その手がピタリと止まり、マイラーの顔が青ざめていった。


マイラー「ああ……ああああああ…………」


 マイラーの視線の先には、もう声を発することもない、もう身動きのひとつ取れやしない、呆然としたカテラがパペットの触手に吊り下げられた姿があった。


パペット「動くナ……人間ドモ」


 パペットが暗闇から姿を現した。ドロドロとした異形が、カテラに這い寄る。


パペット「そこカラ少しでも動いタラ、こいつを殺ス……!」


 パペットに体を奪われたカテラの瞳に光はもうない。

 まるで、動く屍のようだった。


 カテラを人質に取られた一行は、もう動くことができない。

 パペットを倒して操られた人間を解放できるマイラーの薬も、もう投げることができない。


カテラ「あ…………ア…………」


 パペットの触手に引っ張られ、地面に足をつけたカテラ。

 呆然とした瞳のまま口元から血を流していた。にもかかわらず、魔術の杖を一行に向ける。

 パペットは全員生きて帰らせる気はないようだ。

 動いたらカテラを殺される。しかし、動かなければカテラに殺される。


ハロルド(くそ、ここまでか……!)


 その時、悶々としたハロルド……


 いや、パーティ一行の脳裏に、カテラと過ごした日々の光景が蘇った——

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