WEB小説創作論 読者の心を掴む物語作りのコツ

松田裕介

すぐにでもできる小説の書き方

 こんにちは!小説を書いてみたいと思っているあなた、もしくはすでに書き始めているあなたへ。


「小説なんて才能がないと書けないでしょ?」って思っていませんか?実はそんなことないんです。確かに天才的な感性を持った人もいますが、小説って実は「技術」の部分がとても大きいんです。料理と同じで、基本的な技術を身につければ、誰でも美味しい(面白い)ものが作れるようになります。


 この記事では、難しい専門用語はできるだけ使わずに、「読者がページをめくる手が止まらない小説」を書くためのコツをお話ししていきますね。カクヨムで連載している人も、これから始める人も、きっと参考になるはずです。





【第一章】物語の「骨組み」を作ろう




 ・起承転結だけじゃ物足りない?


「起承転結」って学校で習いましたよね。でも実際に小説を書いてみると、「なんか単調だな...」って感じることありませんか?

 そこでオススメしたいのが「らせん階段」みたいな構造です。同じテーマを何度も違う角度から見せていくんです。


 例えば、主人公が「友達に裏切られる」という体験をするとしましょう。



 一回目:「え?なんで?」(驚き)

 二回目:「またかよ...」(怒り)

 三回目:「ああ、そういうことか」(理解)



 同じ「裏切り」でも、回を重ねるごとに主人公(と読者)の理解が深くなるんです。らせん階段を上るように、一段ずつ高い視点から物事を見られるようになる。これが「成長」なんですね。




 ・時系列をいじって面白くする


「昔こんなことがあったんだ...」(フラッシュバック)

「この後、とんでもないことが起こるなんて、まだ知らなかった」(フラッシュフォワード)


 こういう時系列の操作、よく見かけますよね。でも、ただカッコつけるためにやるのはダメです。




 ・フラッシュバックのコツ


 過去を振り返るのは「今」が大変な時。読者が「なんで主人公はこんなに苦しんでるの?」って疑問に思った瞬間に過去を見せると効果的です。


「え、主人公死んじゃうの?!」みたいな衝撃的な未来をちらっと見せて、「でも、どうしてそうなっちゃったの?」って読者を引っ張る餌として使います。





【第二章】魅力的なキャラクターの作り方




 ・完璧な人間は面白くない


 美人で、頭が良くて、性格も良くて、お金持ちで...そんな完璧なキャラクター、どう思います?「いいなー」とは思うけど、なんか親しみが湧きませんよね。


 人間って、欠点があるから魅力的なんです。でも、ただ欠点があればいいってわけじゃない。その欠点と長所が表裏一体になっているのがポイントです。




 例:正義感の強い主人公


 長所:困っている人を放っておけない


 欠点:その正義感が実は「自分が正しい」という思い込みから来ている




 こうすると、主人公の成長ストーリーが見えてきませんか?「本当の正義って何だろう?」という気づきに向かっていく物語が作れそうです。




 ・会話で性格を見せる技術


 キャラクターの性格って、説明するより会話で見せる方がずっと効果的です。


 でも、ただ「僕は優しいんだ」って言わせるのは素人のやること。プロは「言葉の裏」を使います。




 《表面的な会話》


「君のことが心配だよ」

「ありがとう、でも大丈夫」



 《裏の意味を含んだ会話》


「君のことが心配だよ」(本音:君を支配したい)

「ありがとう、でも大丈夫」(本音:助けて...)




 読者が「あ、この人本当はこう思ってるんじゃない?」って気づいた時の快感。これを作り出すのが会話の醍醐味です。





【第三章】感情を「体感」させる書き方




 ・「悲しい」と書いちゃダメ


「彼は悲しかった」


 これ、小説初心者がよくやってしまう書き方です。でも、読者の心に響きません。なぜなら、頭で理解するだけで、心や体で感じられないから。


 じゃあどう書くか?五感を使うんです。




 《ダメな例》


「彼は絶望した」


 《良い例》


「世界から色が抜け落ちた。音が遠くなり、足元がふらつく。胸の奥で何かが重く沈んでいく」




 どっちが絶望感を感じられましたか?後者ですよね。

 確かに《ダメな例》でもキャラクターが絶望したことは理解できます。しかしここで重要なのは、読者の体に「絶望」を『体験』させること。


 今回は分かりやすくするため少し大袈裟に表現しましたが、実際に観て、聴いたような体験を読者に届けるのがポイントです。




 ・過去・現在・未来で感情の重みが変わる


 同じ感情でも、どの時制で書くかで印象がガラッと変わります。




 過去形:「あの時は本当に辛かった」

 → もう乗り越えた感じ。客観的で落ち着いている。


 現在形:「胸が苦しい。息ができない」

 → まさに今起きている感じ。読者もドキドキする。


 未来形・仮定法:「きっと後悔することになるだろう」

 → まだ起きていない不安。読者の想像力をかき立てる。

 使い分けを意識するだけで、文章力がグッと上がりますよ。





【第四章】風景でキャラクターの心を表現する




 ・天気は心の鏡


「失恋した日に雨が降る」って、ベタだと思います?でも、なんでこんなによく使われるかというと、実際に効果があるからなんです。


 人間って、自分の感情を周りの世界に重ね合わせて見る生き物なんですね。悲しい時は曇り空も悲しく見えるし、嬉しい時は同じ曇り空でも「涼しくて気持ちいい」って感じる。


 では、ちょっと工夫してみましょう。



 普通:「雨が降っていた。彼の心も曇っていた」


 工夫:「雨粒が窓を叩く音が、やけに大きく聞こえる。まるで誰かが助けを求めているみたいに」



 直接的に「心が曇っている」と書かずに、音の表現で不安感を演出しています。




 ・部屋の様子でキャラクターを語る


 キャラクターの部屋を描写するだけで、その人の性格や心境がバレちゃいます。




 几帳面な人の部屋:「本棚の本は背の高さ順に並び、デスクの上にはペン立てとメモ帳だけ」


 混乱している人の部屋:「脱ぎ捨てた服がソファにかかり、コーヒーカップが三つ、それぞれ違うテーブルに置かれている」




 読者は部屋の様子を「見る」だけで、キャラクターのことを「理解」できちゃうんです。これって、すごく効率的な描写方法ですよね。





【第五章】テーマを重層的に織り込む技術




 一つの物語に複数のメッセージを「この小説で何が言いたいの?」って聞かれた時、答えが一つだけだともったいないです。



 例えば、恋愛小説を書いているとしても、



 表面:二人の恋の行方(恋愛がメインテーマ)

 中層:職場での男女格差(社会問題)

 深層:自分らしく生きるとは?(人生哲学)



 こうやって複数のテーマを重ねると、いろんな読者が楽しめます。恋愛だけ読みたい人も、社会問題に関心がある人も、人生について考えたい人も、それぞれ満足できるんです。




 ・象徴は「育てる」もの


 象徴って聞くと難しそうですが、要は「深い意味を持ったアイテムや出来事」のことです。


 でも、いきなり「この指輪は永遠の愛の象徴です」って説明しちゃダメ。読者に「押し付けがましい」って思われます。



 《象徴の育て方》


 序盤:何気なく登場させる

「祖母の形見の小さな鍵を、いつもポケットに入れている」


 中盤:ちょっと意味深に

「困った時、無意識にポケットの鍵を握りしめていた」


 終盤:本当の意味を明かす

「あの鍵は、自分の心を開く勇気をくれるお守りだったんだ」



 こうやって段階的に意味を深めていくと、読者は「ああ、そういうことだったのか!」って発見の喜びを感じられます。





【第六章】文体で「語り手の性格」を作る




 ・文章にも性格がある


 同じ出来事を書くにしても、どんな文体で書くかで印象がガラッと変わります。




 《冷静な語り手》


「午後三時、彼は約束の場所に現れなかった。理由は明らかではない」



 《感情的な語り手》


「三時になっても来ない!なんで?どうして?約束したじゃない!」



 《おっとりした語り手》


「あれれ、まだ来てないのかな。まあ、きっと何か用事があるのでしょうね」




 同じ「待ち合わせに遅刻された」という状況なのに、全然違う印象を受けますよね。あなたの小説の語り手は、どんな性格にしますか?




 ・リズムで読者の心拍数をコントロール


 文章には「リズム」があります。そして、そのリズムが読者の気持ちを左右するんです。



 《緊張感を出したい時》


 短い文を連続で。「扉が開いた。足音。近づいてくる。どうしよう」



 《ゆったりした気分を表現したい時》


 長めの文で。「窓の外では桜の花びらがひらひらと舞い散り、春の日差しが頬を優しく撫でていく」



 《クライマックスでの盛り上がり》


 短い文から長い文へ。「走った。転んだ。でも、諦めるわけにはいかない。この瞬間のために、今まで頑張ってきたんだから」





【第七章】読者と「共犯者」になろう




 ・全部説明しちゃダメ


 読者って、実は「自分で気づく」のが大好きなんです。作者に全部説明されちゃうと、「え、そんなの分かってるよ」ってつまらなくなっちゃう。


 だから、あえて「空白」を作るんです。




 《全部説明してしまう例》


「田中は佐藤のことが好きだったが、佐藤は気づいていなかった。田中は告白するかどうか迷っていた」



 《読者に委ねる例》


「田中は佐藤の後ろ姿を見つめていた。手に握りしめた手紙が、汗で湿っている」

 後者の方が「あ、これは恋の相談の手紙かな?」って読者が想像できて、楽しいですよね。




 ・期待を「ちょっとだけ」裏切る


 読者の予想を完全に裏切っちゃうと「詐欺だ!」って怒られます。でも、予想通りすぎても「つまんない」って言われます。


 コツは「8割予想通り、2割意外」です。



 例:読者が「きっと主人公は告白して成功する」と思っている場合


 ✗ 完全に裏切り:実は主人公は宇宙人だった

 ✗ 予想通り:告白して成功

 ✗ ちょっと裏切り:告白しようとしたら、相手の方から告白された



「あ、そう来たか!」って読者に思わせるのが理想です。





【第八章】カクヨムで勝つための現代的テクニック




 ・連載は「毎回が勝負」


 カクヨムなどのWeb小説は、従来の出版とは違って連載形式が基本ですよね。これって実は、とても難しいことなんです。



 従来の小説:最後まで読んでもらえる前提で、じっくり盛り上げられる

 Web連載:毎回読者を引きつけないと、次回を読んでもらえない



 だから、各話の最後に「引き」を作ることが重要です。




 《良い引きの例》


「その時、扉の向こうから聞こえてきた声に、彼女は凍りついた」

「手紙の最後の一行を読んだ瞬間、全てが変わった」

「『実は、君に話していないことがあるんだ』」





「続きが気になる!」って思わせることができれば勝ちです。




 ・コメントは宝の山


 Web小説の良いところは、読者の反応がリアルタイムで分かることです。



 《コメントから学べること》


 どのキャラクターが人気か

 どの場面が面白かったか

 読者が次に何を期待しているか

 分かりにくかった部分はどこか



 ただし、読者の意見に流されすぎるのは危険です。「このキャラクターの出番を増やして!」という要望があっても、物語の整合性を崩してまで応える必要はありません。

 バランスが大切なんです。




 ・スマホ時代の読みやすさ


 今の読者の多くはスマホで小説を読みます。だから、スマホ画面での読みやすさを意識する必要があります。



 《スマホ向けのコツ》


 一つの文を短めに(一画面に収まる程度)

 改行を多めに(読みやすさのため)

 難しい漢字を避ける(変換が面倒)

 会話文を多用する(テンポが良くなる)



 でも、読みやすさを重視するあまり内容が薄くなっちゃダメです。「読みやすくて面白い」が理想ですね。





【第九章】技術を統合して「自分らしい」小説を




 ・技術は「道具」であって「目的」じゃない


 ここまでいろんな技術をお話ししてきましたが、忘れちゃいけないことがあります。技術は「道具」だということです。

 包丁の使い方がうまくても、美味しい料理が作れるとは限りません。大切なのは「何を作りたいか」「誰に食べてもらいたいか」という気持ちです。


 小説も同じ。技術は大切だけど、それより大切なのは「あなたが何を伝えたいか」です。




 ・あなただけの「声」を見つける


 世の中には上手な小説家がたくさんいます。でも、あなたが目指すべきは「一番上手い小説家」じゃありません。「あなたにしか書けない小説を書く小説家」です。



 《あなたらしさを見つけるヒント》


 他の人は気にしないけど、あなたが気になることは?

 あなたが一番感動した体験は?

 あなたが一番腹が立つことは?

 あなたが一番不思議に思うことは?



 そういう「あなただけの視点」が、あなたらしい小説の種になります。




 ・失敗を恐れずに書き続ける


 最後に一番大事なことをお話しします。

 完璧な小説を最初から書ける人なんていません。プロの小説家だって、最初はひどい小説を書いていました。でも、書き続けることで上達したんです。



 《上達のコツ》


 とにかく書く(頭で考えるだけじゃダメ)

 他の人の作品を読む(技術を盗む)

 感想をもらう(客観的な視点を知る)

 失敗を分析する(なぜつまらなかったのか)

 また書く(経験を活かして)



 この繰り返しです。面倒ですが、これが上達への一番の近道なんです。





【最後に】あなたの物語を待っている読者がいる




 長い話にお付き合いいただき、ありがとうございました!

 小説を書くって、時には孤独で辛い作業かもしれません。「本当に面白いのかな?」「誰も読んでくれないんじゃないかな?」って不安になることもあるでしょう。


 でも、忘れないでください。どこかに、あなたの物語を待っている読者がいます。あなたにしか書けない物語、あなたにしか表現できない感情を、必要としている人がいるんです。


 技術も大切ですが、それ以上に大切なのは「伝えたい」という気持ちです。その気持ちがあれば、技術は後からついてきます。

 さあ、今日から(もう書いている人は明日から)、読者の心を掴む物語を書いてみませんか?


 あなたの素敵な物語に出会える日を、楽しみにしています!




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この創作論を書いた作者の『自信作』を投稿していきます。一風変わった《TS魔法少女》を題材にした内容です。


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